勇者は膝の上
日向迅視点
オレは目が覚めると柔らかい感覚を感じる。
「ジン。無事に目を覚ましたようね」
目を開けるとそこはフォルトゥナの・・・
(膝の上!?)
オレはすぐに飛び起きる。
「ひ、膝枕!?」
「そうだけど?」
フォルトゥナはそれがどうしたと言わんばかりの表情だ。
「役得は素直に受け取っておくものだぜ、ジン」
その声の方向を見てみると灰になった木材をツンツンしているカラクの姿があった。
「結構寝ていたな、お前」
オレは辺りを見渡すと木の間から木漏れ日が見える。
「どのくらい経った」
「日は跨いだぞ」
カラクはそのことを伝えると重そうな動きで立ち上がった。
「さて、こいつの尋問タイムを再開と行くか」
そうして立ち上がったカラクが向かった先には獣人が一人縛られていた。
「どうせおれも死ぬなら吐くわけねぇだろ!」
獣人は威勢が良かった。何を尋問しているのだろうか。そう思っているとフォルトゥナが説明し出した。
「お父さんの居場所を吐かせてるの」
「アナシスも生きてるのか!」
オレは喜びを表すがフォルトゥナの表情は良くない。
「あいつらの会話の中で話してるのを聞いてね。それで今、尋問してるんだけど、自暴自棄になってるのか全然吐いてくれないの」
フォルトゥナは困ったような顔をする。
「参ったな。時間が経つほどお前らのお仲間を見つけるのは難しくなるんだが・・・もう少し拷問をきつくするか。吐け!」
爪の指がない獣人は続けて指の骨も折られる。
「ぐあっ!」
「もう一本」
「ぐっ!」
「さて、もう一本」
「ぐあ!やめろ!」
「お前は奴隷がやめろと言ってやめたか?」
「ぐは! お願いだからやめてくれ!」
淡々と作業は行われていく。
「お前が情報を吐けば、この苦痛は終わるんだぞ?」
「ぐ! おれが吐けば、どうせあの方にやられる!それなら今耐えた方がマシだ!」
「・・・ダメか」
カラクは困った顔をした。
「どうも、仕事は面倒になりそうだな」
カラクは頭を掻きむしる。
「仕事?」
「ああ、私が彼を雇ったの!」
「そうなのか!」
カラクもそれを肯定した。
「ああ、契約したのは本当だ。俺はお前らの仲間、アナシスを救出し、俺は報酬に世界樹の葉をもらう。そういう契約だ」
カラクはこちらに紙をペラペラとはためかせ示す。
「カラクさんの妹が病で世界樹の葉が必要なんだって」
フォルトゥナがカラクの事情を補足する。
「あれ? そういえばマジックバックってどうしたの? 中身を盗まれたりとかしてない?」
フォルトゥナは盗賊に捕まっていた。それなら盗賊が中身を取っていても不思議ではない。
「それは大丈夫。実を言うと漂着したときにマジックバックを無くしちゃってね。盗賊たちに捕まっていたときは持っていなかったの」
オレはそれを聞き、オレと同じく『戻れ』を使ったんだなと確信した。
「嬢ちゃん。頼めるか」
「わかった」
カラクがフォルトゥナに向かって何かを頼むとフォルトゥナはカラクの方に向かっていった。
『神聖魔法』
フォルトゥナは獣人に神聖魔法をかけると獣人の指が元に戻った。
「さて、繰り返すか」
カラクは指をコキコキと鳴らすと拷問をまた再開しようとした。オレはそれを止める。
「待って!」
「なんだ? ジン」
カラクはオレに振り返った。
「オレに情報を吐かせる方法がある」
まあ、確証はないけど。だが試してみる価値はあった。
オレは獣人の盗賊に近づいていき、異能を発動させた。
『リリース』
今回放出するのはフォルトゥナから吸収した契約だ。
「これを盗賊に向けて放つ」
そうすると魔法が発動する。
「これは?」
オレがわけがわからない感じで立っているとカラクが喋り出した。
「奴隷契約じゃねえか。ちょうどいい。多分こいつなら罪の契約も適応されるだろう。契約しておけ」
オレはカラクの言うとおりにしてみる。契約のやり方は魔法を発動すると自ずと頭に思い浮かんでいた。
「汝己の罪を自由を代償に清算する。この契りのでは三つのことを規定する。一つ、この契りは罪の清算のためのもの、過ちをなすことを禁ずる。一つ、この契約からときを経過させ、罪が清算されたときこの契約は果たされる。一つ、契約者が罪を強制し為されたとき、この契約は破棄される」
オレがその言葉を言い終わると契約が成立したのか奴隷紋が刻まれる。
「奴隷紋が刻まれたな。これでこの盗賊はお前の言いなりだ」
カラクはそう言うとオレの背中を押す。どうやら状況は一歩進んだようだった。
「早速命令を下そうぜ。仲間を助けるなら早い方がいいだろ?」
カラクの言うとおりだ。アナシスを助け出す為には行動は速い方がいい。
「では・・・命令だ。アナシス、エルフの男の居場所を吐け! そしてそこにオレたちを案内しろ」
「わかりました」
獣人はすんなりと情報を吐いた。
・・・
「盗賊の村? そんなものがあるのか?」
「その盗賊自身が言っているなら間違いは無いんだろうけど」
オレたちは盗賊の案内を頼りにし、道を進んでいく。
「まあ、ファングロアならありえるかも」
フォルトゥナがそんなことを発する。前々から思っていたがファングロアってそんなにやばい場所なのだろうか。オレは気になって聞いてみる。
「そのファングロアって何がやばいんだ?」
オレはフォルトゥナに質問するとすぐに返答してきた。
「全てね」
「そうか、全てか」
え? 全部? オレは聞き間違えたのでは無いかと錯覚する。
「おいおい、それは言い過ぎなんじゃないか? 嬢ちゃん」
カラクが反論をする。
「もっとオブラートに包んでくれよ」
・・・そうじゃない。どうやら反論じゃなくて譲歩の方だったようだ。
「カラクは反論しないんだな」
オレはカラクに苦笑いをしながら話しかける。
「そりゃあ、この国は腐ってるからな」
カラクはどこか遠い顔をしていた。
「何年前だったかな。この獣人たちの国で革命が起きてだな。いや、あれは革命名乗っちゃだめだとは思うが・・・、ともかく、王様が変わったんだがそれからは衰退の一歩、いや千歩くらい衰退したかもしれないな。王が愚か者だとこうも国が変わるのかって驚いたよ。次第に全ては腐っていき、国は廃れ、元々獣人が気ままに暮らしていたこの国は変わっちまった。今じゃ、犯罪まみれのドブカスだ」
「多くの国民が国外に流出したけど、その国民がその場所に馴染むことができずに犯罪にはしるケースも多いし、他の国からは面倒なことこの上ないね」
カラクもフォルトゥナもボロクソに言っていた。
「そもそも、お父さんを奴隷しようとするなんて国際問題どころの話じゃないからね」
フォルトゥナはプンプンだ。フォルトゥナ自身も一回奴隷にされている。だからだろうか。人一倍決意がみなぎっている気がした。
オレたちが進んでいると突然獣人が止まる。
「おっと!」
オレたちはそれに続けて止まった。そこには壮絶な光景が広がっていた。
「これが・・・盗賊の村」
そこには奴隷たちが働き、獣人が鞭を持っていた。
「おら! 働け!」
奴隷はどちらにしろ強制的に動かされている為動きは変わらない。だが、それでも動けるだろと言わんばかりに鞭を振り回していた。獣人は鞭を振りながらニタニタと笑っている。奴隷たちの看守はただ自身の快楽を満たす為に鞭を振っていたのだ。
「見てて気分がいいものじゃないな」
カラクは少し微妙な顔をしていた。フォルトゥナも口を押さえて呆然としている。
「ひどい」
フォルトゥナは自身を抱きしめて不安を表す。
(ここにアナシスが)
オレがそう思っているとオレたちの隙をついて奴隷契約をした獣人の盗賊が叫び出した。
「ここに奴隷じゃない奴がいるぞー!」
「「「っ!?」」」
まずい! そう思った瞬間にはカラクは反応していた。咄嗟に獣人の首を切る。
「ちっ! こりゃまずいな」
カラクもなんとも言えない表情だ。
「くそ、そこまでは制限してなかった! しくったな。これは」
カラクはそう言ったあと前に剣を構える。
「どうやらバレた見たいね」
フォルトゥナが言ったその言葉通り、獣人の盗賊がこちらを視認している。そして盗賊たちは奴隷に命令を下した。
「戦闘奴隷よ! 早速出番だぞ」
そう言うと奴隷たちもこちらに向く。
「ジン。どう言う原理かは知らないが嬢ちゃんにやったやつはあいつらにもできるか?」
カラクはそう質問してくる。どうやら奴隷紋を吸収したことを言っているらしい。
「ああ、できると思う」
「そうか、ならオレは盗賊たちを一掃するから奴隷を任せる。嬢ちゃんもジンのサポートだ」
「わかった」
そう言葉を交わすとカラクは盗賊の村に突撃していった。
「フォルトゥナ! いくぞ!」
オレたち二人も目的を果たすべく行動を開始した。
ダンジョンの遺物⑤
名前 変装マスク
分類:娯楽品
誰かの顔のマスク。顔の造形はランダム。高度な変装マスク。肌の質感なども精巧に再現されている。マスクをしているので相手側からは顔が大きく見える。顔がデカくならなければ美形の顔のマスク被って結婚詐欺とかに使えそうな性能をしている。




