勇者は奴隷から解放したい
日向迅視点
「ジン・・・逃げて・・・」
フォルトゥナの抵抗は虚しく強制的に体が動く。フォルトゥナはオレに向けてナイフを投げつける。
「っ!?」
「おっと危ない!」
オレに向かってくるナイフを突如目の前に現れたカラクが防ぐ。カラクはオレに向かって喋り出す。
「これがお前が言ってた連れか。状況は良くなさそうだな」
「フォルトゥナはオレが助け出す!」
「威勢がいいことだ。じゃあいいことと悪いことを教えてやろう。どっちが先に聞きたい」
オレはカラクの選択肢の前者を先に書こうとする。
「じゃあ、いいことから教えてくれ」
「ああ、いいことからだな。いいこととはズバリ奴隷ってのはな、生命維持の契約って言って命の保証の代わりに契約をするすべなんだが、それを破棄させればいい。つまりはな。半殺しだ。奴隷自身が命の危機に瀕すれば契約不成立となり破棄される」
カラクから有益な情報をもらう。カラクはさらに喋りだす。
「それと悪い話だな。悪い話は半殺しにしたら死ぬ可能性が高いことだ。 奴隷は身体の痛み関係なく肉体を強制的に動かす。動けない体でも動かされると言った方がいいか。つまりは半殺しにするまでに奴隷側の体力が尽きる可能性があるってことだ」
「じゃあどうすればいいんだ」
オレはカラクに聞くと答えが返ってくる。
「単純だ。一撃で戦闘不能にすればいい。まあ、それができたら楽なんだけどな」
カラクは苦笑いをしながら言った。
「ジン、俺は少々手加減というものが苦手でな。盗賊どもは俺が引き受けるからその子の相手はお前がしろ。いいな!」
そう言うと獣人たちに突っ込んでいった。
「さて、やるか」
「お前は!」
獣人たちは怯むと早速一人切り捨てられた。
「さあ、死にたい奴からこっちに来いよ。逃げんのは無しだからな」
カラクはそう言った後、不敵に笑った。
『シャドウバインド』
オレは目の前の仲間を見る。フォルトゥナはシャドウバインドを使いオレを拘束した。影には楔が刺さりオレは動けなくなる。
『ダークニードル』
そして拘束したオレを魔法の棘が襲いかかってくる。
『魔法吸収』
オレはシャドウバインドを取っ払うとダークニードルも魔法吸収で吸い取った。
(剣での一撃ではフォルトゥナが危ないか)
オレはそこで剣を捨てて素手での戦闘に移行した。
『身体強化』
オレはフォルトゥナに近づいていく。
『ダークニードル』
フォルトゥナの魔法はアナシスのと比べてもまだ対処できる威力だ。オレはこのまま突っ込んだ。
「くぅ!」
フォルトゥナが全力で痛みに耐えている。オレは吸収した空気を調整し、『リリース』を発動する。
『リリース』
オレはフォルトゥナが死なない程度を見極めて圧縮した風でフォルトゥナを吹き飛ばす。
(ごめん! フォルトゥナ)
オレは心の中でそう呟いた。フォルトゥナは風で盛大に飛んでいったが、無事なのだろうか。奴隷から解放するためとは言え、半殺しという条件は心が痛くなる。
『ダークニードル』
「っ!?」
オレは咄嗟に回避する。
「まだ、解放されてない!?」
オレはフォルトゥナの方を見る。
(これは? 神聖魔法で体を回復してる?)
フォルトゥナは瀕死の体を神聖魔法で回復し、元に戻していた。
(なんで! 明らかに重症を加えた筈)
だが、フォルトゥナは奴隷契約から解放されてもおかしくない傷を負ったのに解放はされていない。さらにはフォルトゥナが痛みを耐える声も聞こえなくなった。明らかに以前とは様子が変だ。
(フォルトゥナは気を失っている?)
フォルトゥナの状況を見るとそうとしか考えられなかった。しかし、フォルトゥナは以前より問題なく動いている。
「強制的に動かされているのか!」
フォルトゥナの抵抗がなくなったので動きが滑らかになっていた。今の状態の結論に辿り着いたオレは悪態を放つと奴隷契約に悪態を放つ。
「くそっ! なんで解放されないんだよ! もしかして回復できるから瀕死にカウントされなかったのか?」
その可能性が高いかもしれない。オレはフォルトゥナを迎え討とうと策を練る。そのとき他のところから声が聞こえた。
「ふ、ふざけるな。殺されるくらいなら」
叫んだのは獣人だった。数は残り一人になっている。どうやらカラクが順調に獣人たちを倒したようだ。
「女ぁ! さっきの命令は辞めだ。お前たちが一番嫌なことしてやるよ! 命令だ! 自害しろ!」
「なっ!?」
獣人と戦っていたカラクも驚いていた。
「生命維持の契約は!」
「そんなもん! 死んだ後に解除したところでなんも問題などない。お前らがおれを追い詰めるから悪いんだからな。あははは。死ねぇ!」
フォルトゥナは自分の首に向かって魔法を放とうとする。
「フォルトゥナ! くそ! そんなことさせない!」
オレはフォルトゥナに飛びついた。
「手を首からどけろ!」
オレはフォルトゥナの腕を掴んだまま離さない。自害するのを邪魔したからだろうか。オレに向かって至近距離で何発も魔法を放ってきた。
『ダークニードル』
『ダークニードル』
『ダークニードル』
『ダークニードル』
『ダークニードル』
『ダークニードル』
オレは魔法吸収をするが流石に至近距離から撃った魔法を全ては吸収し切れなかった。
「くふっ!」
オレは口から血を吐き出す。
「これくらい・・・どうってことはない! フォルトゥナ・・・止まれ!」
『ダークニードル』
『ダークニードル』
『ダークニードル』
『ダークニードル』
「がはっ!」
オレの血はさらに吹き出る。このままではジリ貧だ。フォルトゥナを瀕死にするにも回復するせいで契約が解除されない。さらには今フォルトゥナは自害しようとしている。死んでは意味ないのだ。
「ここで死なせちゃオレは死んでも死に切れねぇ!」
何か策を考えるんだ。そうしているうちにも魔法が飛んでくる。
『ダークニードル』
『ダークニードル』
『ダークニードル』
『ダークニードル』
『ダークニードル』
「ぐっ!」
だんだんと意識が遠のいていく。ダメだ。まだ意識を手放すな!
オレは奴隷契約について意識を巡らしていく。カラクが言っていたことに何か手がかりがないか。奴隷契約を紐解く手がかりが。
『ダークニードル』
『ダークニードル』
『ダークニードル』
『ダークニードル』
もう意識が・・・。オレはもう力が残っていなかった。後一発でもくらったら意識を手放すだろう。視界が揺らいでいく。もう限界だ。そのときオレはふとあることが頭に浮かんだ。死に際になって脳が本気を出したのか、思い出したそれを一か八かで実行しようとする。思い出したものはカラクの言葉だった。
「奴隷ってのはな。結構面倒なんだよ。あれは一種の魔法だ。たとえ、違法奴隷だったとしても奴隷になった奴は人生が終わったようなもんなんだよ」
カラクの言葉が思い返される。カラクは奴隷契約のことを一種の魔法と言っていた。ならば
「魔法ならば吸収できる」
オレはすぐさまフォルトゥナの首元に手を当てた。
(これを吸収したらオレはどうなるかわからないな)
奴隷契約を吸収するんだ。もしかしたら奴隷契約を引き継いでオレが奴隷になってしまうかもしれない。グレーホールがどう扱うかわからない以上これは賭けでもあった。だが、
(フォルトゥナには迷惑をかけた。これでオレが肩代わりしたところでフォルトゥナに罪滅ぼしできるなら)
『奴隷解放』
オレは異能グレーホールを発動した。オレはフォルトゥナの力が抜けて倒れていくことを確認する。
(そうか・・・成功したんだな)
オレの状態は・・・やべぇ、意識が朦朧としすぎてわからねぇや。
オレは意識を手放した。
キマの不思議な生物図鑑⑦
名前 なし
種族 臭草
読みは『くさそう』文字通り臭いそうに見えるが嗅ぐと臭くはない。ではなんでそんな名前なのか。それは料理したときにこの草を入れるととても臭くなるからだ。噛むと口いっぱいに臭さが広がり、口臭いと言われる。臭さを我慢すれば美味しい。味わい草の近縁種。




