勇者とおっさんは協力する
日向迅視点
「ここがどこかなんてどうでもいい。早くフォルトゥナと合流しないと」
「まあ、待て! 話を聞け!」
猫耳のおっさんはオレを落ち着かせようとする。
「言っただろ。ここはファングロア。シアンテールで今一番やばい地域と言ってもいい。手慣れてるやつが多いんだよ。多分次会うときは奴隷にでもなってるぞ? 諦めた方がいい」
「なら、奴隷から助け出して・・・」
「それが出来たら苦労しねえよな」
猫耳のおっさんはオレに話が通じてないとわかると呆れた様子を見せた。
「奴隷ってのはな。結構面倒なんだよ。あれは一種の魔法だ。たとえ、違法奴隷だったとしても奴隷になった奴は人生が終わったようなもんなんだよ」
「それで納得できると思うなよ!」
オレは思わず猫耳のおっさんにきつく当たってしまう。
「オレの・・・オレの所為なんだ。オレはあいつらに迷惑しかかけてない・・・」
オレは項垂れた。それを見て猫耳のおっさんは頭を掻く。
「まあ、まだ、足跡が新しいし、奴隷契約を済ましてない可能性もあるからな」
「それは本当か!」
オレは猫耳のおっさんの言葉にくいつく。
「おお! 浮き沈み激しいな。お前。まあ、可能性としては低いがあるんじゃないか?」
可能性があるならば行動するしかない。オレは無我夢中で森を走り出す。
『身体強化』
オレは身体強化をかけながら森を駆け回る。
「おい! 無闇矢鱈に探しても見つからないぞ」
「っ!?」
猫耳のおっさんがオレについて来ていた。
「それに手ぶらじゃないか。『身体強化』を使っているのをみるに前衛タイプか。お前の得物は拳なのか?」
今のオレは守護の剣もない。どうやら漂着中に紛失したらしかった。
「持ち主のところに返ってくる魔法があるはずなんだが・・・」
守護の剣には魔法が付与されていたはずだ。
「お前もしかして普通に返ってくると思ってるのか? 頭に魔法を付与した対象を思い浮かべながら戻れと言ってみろ!」
オレは猫耳のおっさんに言われた通りやってみる。
『戻れ』
オレがそう言った瞬間守護の剣が手元に現れた。
「それ守護の剣か! いいものを持ってるな」
猫耳のおっさんはオレに軽口を叩いた。
「ちょっと状態が悪くなってるな」
オレは守護の剣を見る。海水の影響か、ウィンドエンシェントドラゴンと戦った影響か、どっちもかもしれないが守護の剣の状態は悪かった。猫耳のおっさんはその剣を見ると交渉に入った。
「その剣をくれるなら俺が協力してもいい」
「残念だけど、持ち主登録があるから無理だな」
それを聞いたが猫耳のおっさんは毅然と態度を変えなかった。
「そんなことはわかってる。わかった上でだ。その魔法は正式な手順を踏めば解除もできるからな。俺は剣を集めるのが趣味なんだ。状態はあまり良くなさそうだが守護の剣は珍しいからな。補修すれば問題ない」
猫耳のおっさんはよっぽどこの剣が欲しいようだ。
「それにオレは耳がいいからな。探すなら俺を頼った方がいいぞ?」
「なら頼む!」
オレはその言葉を聞いた瞬間了承する。
「ああ、交渉成立だ。俺、カラク・グレイがお前を助けよう)
「ああ、オレは日向迅よろしく頼む」
「・・・何も反応がないか」
カラクは交渉が成立した後立ち止まった。
「少し、止まれ」
そういうとカラクは猫耳をくるくると回して音を聞いていた。
「静かにしろよ。今、音を聞き分けてるから」
そういうとカラクは目を瞑る。そして少し時間が経った後に目を開けて走り出した。
「こっちだ」
オレはカラクの後を追って走り出した。
・・・
「この先だ」
オレはカラクの指示に従って進んでいくと集団がその先にいる。
「さて、当たりがどうか・・・」
「人攫いじゃないのか?」
「オレはただ人間の声がする方に言っただけだ」
オレはそれを聞いて少し心配になるがとりあえずその先にいる集団のところへ行くことにした。オレとカラクはこっそりと集団に近づいていき、会話が聞こえる程度まで近づいた。獣人たちが集まっている。オレは耳を澄ませた。
「今日は大きな収穫だったな」
「ああ、これは上物だ」
獣人たちの笑い声が響く。
「こんなことして、ただじゃおかないから」
獣人たちの声に混じってフォルトゥナの声も聞こえた。
(フォルトゥナ!)
オレは心の中で叫ぶ。オレはフォルトゥナが生きていたことに安堵するが今は少し状況が良くなった。
「ああん! そんな口聞いてもいいのか?」
「うぐぅ!」
フォルトゥナは苦しむ。
「商品に傷が付くと良くないんだが、少し、お仕置きが必要のようだな」
「いや! やめて!」
フォルトゥナの叫び声が森に響き渡る。オレは咄嗟に飛び出した。
『ウィンドソード』
「ぐはぁ!」
オレは風で背中を押し、獣人たちに斬りかかった。
「敵だ!敵襲!」
獣人の集団は一人減って残り七人だ。
「ジン!」
「フォルトゥナ!」
フォルトゥナはジンの姿を見て喜ぶがその表情はすぐに表情が深刻な顔に戻る。
「ジン! 逃げて!」
フォルトゥナは必死そうに訴えた。盗賊の一人が呟く。
「こいつ、この女の知り合いか?」
盗賊はさっきの会話でフォルトゥナとオレが知り合いということを察したようだ。獣人たちはそのことを察するや否やニヤリと笑う。
「ならばちょうどいい。この男を殺せ!」
獣人がそういうとフォルトゥナ首筋の部分が首輪の隙間から光る。
「ジン・・・逃げて・・・私は・・・もう、・・・奴隷紋がつけられ・・・てる。ぐぁ!ジンだけでも・・・お願い!」
フォルトゥナはナイフを手にするとオレに向かって襲いかかってきた。
奴隷について
契約または自身より極端に弱い相手に無条件でつけられる。人類以外には効果がない。相手が瀕死のときなどを狙って首輪をつけることができる。首輪をつけて条件を満たすと奴隷紋が刻まれる。奴隷紋が刻まれると刻んだ相手の言いなりになる。基本的に体は勝手に動くが逆らおうとすると激痛が走る。世界中では基本的に犯罪奴隷と借金奴隷以外は違法であるが、違法奴隷が裏で横行していることが問題となっている。実力差があると契約できてしまうことから圧倒的な世界最強が奴隷の首輪を用いて世界征服を乗り出したら誰も逆らえない世界最恐の独裁者になれる。瀕死のときの奴隷契約の場合、便宜上殺さないという条件の元、成立する契約のため。死にたいと思っているものには瀕死の状態でも奴隷にすることができない。




