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マッドサイエンティスト異世界で神をやる  作者: 竹馬の友
世界でたった1人の勇者 旅立ち編

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狂信信者は集めたい

マルタ視点

 三人が旅立った少し後の話



 「待ってたわ」



 わたしは応接室で人を出迎えた。



 「どうも、今回もいいものを持ってきましたよ」



 そこには本来結界にいないはずの人族の男がいる。彼はトレド・マークケット。数少ない結界の出入りを許可されている人間だ。



 「それで、ここにきたと言うことは()()を手に入れたと言うこと?」



 わたしは自分でもわかるくらい胸が高鳴った。



 「トレド商会の人脈を辿り手に入れましたよ」



 トレドは自身のマジックバックから慎重にあるものを取り出した。それは手のひらに収まるくらいのサイズの箱に入っていた。わたしは鑑定の効果がついたモノクルを取り出すとそれを観察する。鑑定だけに頼らず、視覚でも間違いがないことを確認した。



 「本物だぁ」



 わたしは恍惚の笑みを浮かべる。わたしが欲しているものが今、目の前にあるのだ。



 「おっと、いけませんよ」



 トレドが守るようにその品を手に持つ。わたしは空腹の状態で目の前に肉をぶら下げられたような気持ちになった。



 「あー」



 わたしはつい声が漏れる。



 「創造神キマが刻まれた記念メダル。神の降臨を讃えルドルで50枚だけ作られた逸品であり、その素材は金でできている。相変わらず大きさのわりに重厚感がありますね」



 トレドはその硬貨の箱を下から覗くとそうこの品を評価した。実はわたしはこのメダルを買うのは初めてではなかった。



 「前にも買っていきましたがそんなに揃えて何をしたいんですか? 願いが叶うわけじゃあるまいし。それにルドル王から一枚もらったと言うじゃないですか。これで三枚。何か目的があるんですか?」



 トレドがメダルを集める用途について聞いてくる。



 「それは当然、一枚が保管用、もう一枚は鑑賞用、そしてもう一枚は使用用に決まってるじゃない」



 「使用用って何ですか。・・・いや、商人がこれ以上突っ込むのもよくないですね」



 わたしは三枚が揃った光景を思い浮かべた。顔の緩みが止まらなかった。



 「ああ、キマ様」



 「・・・こほん」



 わたしが恍惚の笑みを浮かべているとトレドがわざとらしく咳をした。そして本題に入る。



 「さて、気を取り直して、値段交渉といきましょうか」



 「・・・」



 わたしは無言で指を突き立てた。



 「それじゃあ足りませんね」



 「前買ったときはこの値段だったじゃない!」



 「そのときよりも価値が上がってましてね。製造型がもうすでに破棄され、もう同じものはこの世には出回らないですからね。こんな感じですか」



 トレドはさらに突き立てる指の本数を増やした。



 「し、仕方がない」



 これもキマ様を思えば安いものだ。そうして重要な取引は終了する。



 「これで取引成立ですね」



 「はわわ」



 金を支払うとわたしの手元にメダルが渡る。わたしは感嘆のため息を吐いた。



 「はぁ、いつ見ても美しい。わたしのキマ様のコレクションがまた増えたわ」



 「ゆかりがあるものなら何でもいいんですね・・・」



 トレドは呆れていた。だがわたしのコレクションは別にキマ様が描かれているものを集めているわけではない。



 「キマ様が描かれているだけではダメなのです。ちゃんとキマ様への気持ちがこもっていないと」



 ただ何も感じずキマ様を模ったものを欲しているわけではない。このメダルにだって感謝の気持ちが込められているのだ。



 (約八年前、ルドルで起こった風竜の襲撃、そしてそこで降臨なさったキマ様のひと薙ぎで竜を退ける姿。あの場にいた人々はその全てを目に焼き付けました)



 このメダルはそのときのキマ様を讃えられて作られたものだ。そこにはルドルの国の全ての想いが込められていた。



 「ああ、キマ様の御姿をまたこの目で見たい・・・」



 わたしはキマ様の姿を想像して頭が熱くなる。



 「マルタ様」



 「はい」



 トレドの言葉で我に返る。



 「それで何か欲しいものはございますか?」



 トレドは取引の終わりは毎回その言葉を口にしていた。そして不意にまた現れていったものを売ってくるのだ。



 「あっ、そうだ」



 わたしはそこで思い出す。



 「船用の対策器具はある?」



 「具体的には」



 「危険な生物を寄せ付けなかったり、天候を予測したり」



 「それならありますが」



 「じゃあ、それを教会名義で購入したいわ」



 「教会名義ですか」



 「メダルの方は私用でわたしが個人で購入しているけど、今回の魔道具に関しては教会の方で至急必要なものだから」



 わたしは自分のコレクションは経費に含まれないと愚痴を言いつつ交渉を進めていく。



 「船で使うための魔道具ですか。それならラピスの街にある商会にあると思いますが・・・」



 「すぐに魔道具があるかわかるのね」



 「はい、わたしは一度覚えたら忘れないたちでして。自分の商会の在庫は逐次チェックしているので、ラピスを旅立つ前には少なくともあるのは覚えています。需要がある魔道具ですので、トレド商会は逐次補充を心がけていますが旅立った後に無くなる可能性もあります。保証はしませんがそれでもいいなら格安でお譲りしますよ」



 トレドの返しにわたしは即決した。



 「じゃあ、早速必要だからお願い」



 「魔道具はここに?」



 「いや、ラピスの街に保管しておいて。そこで使うから」



 「わかりました」



 トレドはその言葉を聞いたのち、窓に行き窓を開いた後鳥が現れ、鳥に書物を託した。



 「これで、ラピスの街には伝達は行ったでしょう」



 「それで? 最後に、何か欲しいものはございますか?」



 トレドはわたしに要望を聞く。わたしは欲しいものを言うとトレドは念入りに聞いていった。



 ・・・



 「はあ。ここからが退屈ですよ」



 トレドは帰る前に少し愚痴を吐いた。



 「いくら護衛があるからと言っても歩きでこの森林を抜けるのは骨が折れますからね。馬車が通れる道くらいあってもいいと思うんですが」



 トレドは世界樹の周辺の話をしていた。



 「でも道なんか作ったらそこを重点的に荒くれ者に狙われるよ?」



 この周辺は人攫いが多い。ある程度の実力があるものを宣教師として送るときは人攫いを跳ね除けられるので問題はないが、真に問題なのは世界樹の街に退屈したエルフが外の世界に行こうとしたり、子供のエルフが遊び感覚で結界の外に出てしまうことが発生することだ。エルフはどうやら奴隷としての価値がものすごく高いらしい。だからエルフを狙うものが増えるのだがそのせいもあって人攫いは一発逆転を狙っているものたちが集まり危険地帯だ。人攫いはエルフを何だと思ってるのだか。



 「確かに道を作ったらそこを通ったものは格好の的ですか。人攫いを放置しないでさっさと排除した方が良くないですか?」



 トレドはそんな疑問を投げかける。だがそうとも言えない。



 「今のところはそもそも外から人が来るのも結界の影響でほとんどいないし、道を作る危険を払ってまで作るメリットがないのよね」



 「そうですか・・・」



 トレドはあからさまにしょんぼりした。だがすぐに調子を整えた。



 「残念ですが、それなら仕方がないですか・・・ではマルタ様、トレド商会をこれからもご贔屓に」



 トレドはそう言うと静かに去っていった。

キマの不思議な生物図鑑⑥



 名前 なし

 種族 レッグレッグ

 自分より大きなものを運ぶことができる鳥。小さめの鳥だが見た目に反して足発達していることからレッグレッグと名付けられた。飛行能力と危機感知能力に優れ、また刷り込みにより人間に懐くこともある。その性質からものを運ぶときによく使われている。食いしん坊であり、食べ物を運ぶのには適していない。

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