勇者は出航する
日向迅視点
オレたちはギルドを出たあと船の元へ向かう。港にはオレたちがこれから乗る船の他にも様々な船がいた。
「で? どれに乗るんだ?」
オレはキョロキョロと見渡す。船着場にはたくさんの船がある。アナシスは迷わずに突き進んでいくのでオレとフォルトゥナはあとをついていった。
「これがわたしたちが乗る船だ」
その船は木造ながらも綺麗に整備されているらしくその外観は綺麗だった。
「これが今からオレたちが乗る船か」
「最新鋭の技術が織り込まれている魔導船だ。少々コツはいるが使いこなせれば。半自動操縦も可能になる」
「へー。なんかよくわからないけどすごそうだな」
アナシスの言ってることはよくわからなかったが、なんかすごいことはわかった。オレとフォルトゥナはワクワクしながら船に乗り込んだ。
「これは・・・ピカピカだな」
船内はピカピカとしていて新品のようだ。
「これ浄化の魔法が船に付与されてるよ。こんな大規模なもの見たことない・・・」
フォルトゥナも関心を示していた。オレたちはさらに探索をする。甲板のところは帆などの装備が見られる。そして船の中に入ると部屋が分かれていて生活に必要な設備が整っていた。
「これは? 操縦席?」
オレたちは船の操縦席の方に向かうとアナシスに止められた。
「操縦席は触ると危ないぞ」
アナシスは注意をする。
「私は少し習ってるんだからいいでしょ?」
フォルトゥナはアナシスに弁論するがアナシスは愛のムチを打った。
「それでもだ。この魔導船はちょっと特殊でな。ルドル王国の技術提供で作られたものなんだが操作も少し変わっているんだよ」
アナシスはそう言うと船を動かし始めた。
『出発』
アナシスはそう言うと魔導船の操縦席に手をつけた。魔導船は動作を開始する。錨があげられ、船が動き出す。
「おっ!」
船が急に動いたことが肌身に感じられた。アナシスは動かしながらこの船について解説する。
「この船は帆と動力の二つで動かことができる魔導船なんだ。動力は最新鋭の魔導エンジンが左右の車輪を回す仕組みだな」
現在は帆を頼りに運行していた。アナシスはこれからの予定を話す。
「これからはところどころで補給をしていってアッシュ大陸を目指す」
アナシスがこれからのことを話している間、おれは窓を見た。海岸から離れているのが確認できた。オレは心配なことをさっさと潰すことにした。
「なあ、アナシス」
「なんだ?」
オレがアナシスは話を止め、こちらを向いた。オレは懸念点を話し出す。
「あの・・・それでさ。オレの不運対策は何かあるのか? なんか対策をするためのものを商会に取りにいったらしいが」
もともとラピスの町でアナシスと別れたのはその対策をするための魔道具を取りに行くからだった。アナシスは思い出したかのようにマジックバックを漁ると取り出す。
「それはな! これだ!」
アナシスはマジックに入れられた袋から魔道具を二つ取り出した。水晶のような魔道具ともう一つもどこか形容しがたい形をした魔道具だった。
「これは?」
オレはそれらがなんなのかアナシスに問いかけた。
「まずはこの水晶の魔道具だが、これは天候を予測する魔道具だ。100%ではないが頼りになる魔道具だ」
「へー、そうなんだ」
フォルトゥナはその話を聞くとその水晶を持ち上げる。
「確かになんか見える!」
水晶の中には晴れ渡った空が見える。
「この場合はこのあとも晴れる可能性が高い」
アナシスの言葉にオレたちは感心する。そしてさらに他の魔道具も説明し始めた。
「この魔道具はいわゆる虫避けと言うやつだ。まあ、虫じゃなくて生き物避けか。生き物が本能的に嫌って避けるように仕向ける効果がある」
アナシスはそれを設置して起動するとドーム上の物体が広がっていった。
「これで設置完了だ。簡単だろう?」
最新鋭の船さらに二つの魔道具、オレはその話を聞きこれ以上の対策はないかと思い妥協した。
「確かにこれなら大丈夫かも」
アナシスはさらに追加で喋り始める。
「他にもおまけで色々ともらってしまったが、どれも暇を潰すものだ。あとで見てみるといい」
オレとフォルトゥナは暇つぶしの道具と言う言葉に釣られて道具で遊び始めるのだった。
・・・
あれから数日オレたちは船に揺られていた。
「あっなんか一点を見つめてたら気持ち悪くなってきたかも」
『神聖魔法』
「あっ、ありがとう」
オレとフォルトゥナは甲板にいた。オレたちは船の上で釣竿の竿をじっと見ている。
「なんか釣れないね」
「そうだな」
オレたちは甲板の上から釣りを始めたのだが、はじめてからこれまで一匹も釣れる気配がなかった。
「こう言うのは辛抱なんだ。フォルトゥナ」
「でもさすがに釣れなさすぎじゃない?」
フォルトゥナは竿をあげる。そこには餌がついたままの針が残っていた。
「食われたわけじゃない・・・やっばりなんかおかしいよ」
フォルトゥナは文句を言う。
オレはじっと竿を見る。オレは竿を動かし餌を魚の動きに擬態させる。一定周期で力を加えてさらに不定期にさらに力が加えられる。魚がまるで海流に逆らって泳いでいるような。そんな感じに餌が動くように調整した。
「お! 引っかかった!」
オレの釣り糸がピンと張る。魔法で強化された糸は細くても獲物が引きちぎることは困難だ。
「フォルトゥナ! 当たったぞ!」
オレは喜びながらフォルトゥナにヒットを告げる。
「当たった?」
フォルトゥナもこちらに向かってきた。
「なかなかやるな」
オレはその獲物に苦戦していた。
『身体強化』
オレは身体強化で一気に引き上げを試みる。それでも一向に釣れなかった。しかし、ある時に一気に力が抜ける。
「あっ、取られた」
どうやら逃げられてしまったようだ。
「はあ」
フォルトゥナもそれにため息を吐いた。オレは糸糸を手繰り寄せた。
「あれ? 餌がついたままだ」
手繰り寄せたオレの糸の先についた針にはしっかりと餌がついたままだった。そこでフォルトゥナは予想を言う。
「たぶん海底かなんかに引っかかったんじゃない?」
「えっ?」
フォルトゥナはさらに深いため息を吐くと言う。
「やっぱりここまでくると絶対おかしいよ。ジン!なんか不運でも発動してるんでしょ!」
確かにここまでくるとおかしな戦績だった。そもそも魚がヒットした痕跡もないとは・・・。オレは考えるとあるものが頭に思い付いた。
「もしかしてさ・・・生き物避けの魔道具のせいだったりしない?」
「・・・確かに」
フォルトゥナは少しの沈黙のあと納得するとツッコミだす。
「じゃあ、私たちとれないのに無駄に釣りしてたってこと?」
「そうなるな」
その言葉を聞いた瞬間。フォルトゥナは行動に走りだす。
「あの魔道具。壊してやる」
フォルトゥナは魔道具がある方向に向けて走り出した。オレは慌てて止めに入る。
「よせ! フォルトゥナ」
このあとアナシスが入ってきて無事に騒ぎは止めることができた。
・・・
「それで? どうする?」
釣りは魔道具のせいで意味がないとわかった今他にやることがない。
「食料は次の補給までは間に合いそうだけど・・・魚食べたかったな」
フォルトゥナは残念そうに言う。
「少しの間だけ魔道具の起動止めるのは?」
フォルトゥナはそんな提案をするがアナシスに却下された。
「それをしたらこの魔道具の意味がないよ、フォルトゥナ」
「・・・」
釣りを取り上げられたオレとフォルトゥナには船上の娯楽は何も残ってなかった。
「他に何か娯楽なかったっけ」
フォルトゥナはアナシスが商会に魔道具をもらった時にサービスでもらった娯楽品たちを漁るとあるものをフォルトゥナは手に取った。
「何これ?」
その手には貝殻が握られていた。いや、正確には貝殻型の何かだ。
「ああ、それは『逆因果律のタイムカプセル』だな」
アナシスは聞きなれない言葉を発する。タイムカプセル?
「なんなんだ? それって」
オレはアナシスに聞いてみた。見たところタイムカプセル要素はどこにもなかった。
「未来から過去に送られたタイムカプセルと言われている。わたしは見たことはないが未来で録音した声を過去に届けることができるらしい。ただその未来に録音した人物の過去の人物が触らないと意味がないようだけどな」
フォルトゥナはその貝殻を見つめる。
「何も聞こえないね」
フォルトゥナがそう言うとアナシスは微笑む。
「そもそもがその用途で入れられていないからな。フォルトゥナ。このタイムカプセルは綺麗な貝殻の形をしているからよく海運のお守りとして渡されることが多いんだ。このタイムカプセルも商会が旅の無事を祈って入れてくれたんだろう」
アナシスはフォルトゥナからタイムカプセルを受け取る。アナシスが持ってもうんともすんとも反応しない。
「へー、そんな意味があるんだ」
フォルトゥナはなるほどと相槌を打ちながらそのタイムカプセルの貝殻のフォルムをじっと見ていた。
「ジンもどうだ。触ってみるか?」
オレはアナシスからその貝殻のタイムカプセルを受け取った。
ダンジョンの遺物③
名前 逆因果律のタイムカプセル
分類 アーティファクト
運命力を参考にして作られた。未来から過去に運命をねじ曲げて音声だけを届ける。いつどこに飛ぶかは指定されていなく。また、キマが運命力適合以前の年代に送ることもできない。音声を録音し終えるとワープしたかのように消える。本人が未来の自分のタイムカプセルを拾ったことがなければ自身が過去の自分に送っても過去の自分がタイムカプセルを拾うことはない。巻貝の形状の貝殻の形から海運のお守りとしても使われることがある。録音した本人の過去の自分が触ると音声が再生される。




