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マッドサイエンティスト異世界で神をやる  作者: 竹馬の友
世界でたった1人の勇者 旅立ち編

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勇者は準備中

日向迅視点

 「改めて自己紹介するか。オレの名前は日向迅。異世界生まれ異世界育ちの高校生だ。ちなみに高校生ってのは勉強するところに通う人のことな」



 オレは改めてアナシスとフォルトゥナに自己紹介をした。



 「自己紹介? 今更! まあ、いいけど・・・」



 面倒くさそうに言いつつフォルトゥナも自己紹介をする。



 「わたしはフォルトゥナ・テンペスタ。やれることとしたら少し回復ができるってところかな」



 そしてその後にアナシスも続く。



 「わたしはアナシス・テンペスタ。フォルトゥナの父だ。魔法が得意だな。これからよろしく頼む」



 「ああ、これからよろしくな」



 オレは拳を突き出し相手と拳を合わせた。



 「さて、これで自己紹介が終わったとこだし、目的地に行きたいんだが、まずは・・・何をすればいいんだ?」




 魔王に会いにいくにはアッシュ大陸という場所に行かなければならないらしいがそこにいくには船が必要らしい。だがそもそもの船の行き方でさえオレがわかるわけなかった。



 「まずはここ、ククナの街を出て港に行ってから教会所有の船で行く感じですかね」



 「へーそうなんだ」



 ということは最初に港に行くのか。



 「じゃあここから港までだな。行こうぜ」



 「その前にまだやることがある」



 アナシスはオレに向かって言う。



 「何だ?」



 「まずは装備だ。剣は貰ったが装備は貰っていないだろう。お前の頑丈さは知ってはいるがせめて少しは装備は着た方がいい」



 オレはそう言われたので世界樹の街ククナをまわることにする。



 「オレは動きの邪魔だから別に装備は・・・」



 「動きが邪魔にならないやつもある」



 アナシスはそう言うと半ば強制的にオレを連れて行く。そしてある建物の前で止まった。その建物は大きな看板がありどうやら何かを売っている店のようだ。



 「じゃあ二人とも私は色々と旅に必要なものを買ってくるから」



フォルトゥナは色々と旅に必要なものを買うために別行動にはいる。オレはアナシスと共に店の中に入った。そこには鎧やら何やら戦闘に役に立ちそうなものがおいてあった。



 「アナシス。ここって武器屋かなんかか?」



 オレはそう言うとアナシスは頷く。



 「ここは街の治安部隊が重宝している武器屋だな」



 「もっとも、ここじゃあ、結界の影響でろくに武器を使う魔物やらなんざ出ないがな。大抵は対人を想定したものだ」



 アナシスが説明しているとエルフが店の奥から出てくる。個人的にはドワーフとかが出てくる展開だからエルフなことに驚いた。



 「なんだ? お前俺の顔を見てドワーフじゃないのかってガッカリしたな?」



 そのエルフはオレの顔から見事に表情を見抜く。



 「何でそれを」



 「やっぱりな。だが、種族だけで侮られちゃ、心外だな。これでも腕は確かなつもりだ」



 そのエルフはちからこぶをぐっと突き出した。



 「それで? なんか用か?」



 そこでオレはことの経緯を説明して動きやすい防具とやらがあるか聞いてみる。すると不貞腐れたように拗ね出した。



 「ちっ、お前が求めてるの鉄の鎧じゃねえじゃん。革の防具じゃん」



 そのエルフは拗ねていた。だがここには鉄の防具以外にも革の防具もあった。



 「革の防具も売ってるけど・・・」



 「こっちは嫁の作品じゃ!バカたれ!」



 どうやらここの店は嫁と共同経営で成り立ってるらしい。アナシスはその話の内容を補足する。



 「そこの店主のお嫁さんも凄腕の人だよ」



 アナシスはそう言うと革の防具に近づき確かめる。



 「ふむ、綺麗に付与がかかっている。いい出来だ。店主、この防具をくれませんか?」



 アナシスはエルフの店主と交渉を始めるとすんなりと話が進んだ。アナシスは交渉を上手に進め、不機嫌だった店主もすっかり機嫌が良くなった。



 「そうだ! ジンが着てみないとだな」



 そうしてオレの試着が始まる。



 茶色の革が胴体を覆う。革は使えば馴染んでいくと言うが、まだ新品のような硬さがこの革にはあった。



 それからとんとん拍子に話は進んでいき必要なものを買い揃えると店を後にする。店の前にはフォルトゥナが立っていた。



 「食料と旅の必需品はマジックバックに入っているからあとは大丈夫だよ」



 マジックバックを持ったフォルトゥナが言う。マジックバックはそんなに大きくはないが歩いていると少し邪魔に思うようなサイズだった。



 「フォルトゥナ、バック持とうか?」



 「あっ! ありがとう」



 フォルトゥナのマジックバックはオレにかけられる。オレは空を見上げる。空は相変わらず世界樹の木の下のくせに明るい。だが少し色が変わっていた。



 「オレンジ色。夕方か」



 「ここから外に出てもすぐに夜になりそうだね」



 「じゃあここの宿屋に泊まるか」



 オレはそう言うとフォルトゥナは困った顔をする。



 「この街に宿屋なんてないよ」



 「えっ?」



 オレはその言葉を聞き返した。宿屋がない。案外大きそうな街だが。



 「そもそも結界でろくに外から人なんて来ないのに宿屋なんてあるわけないよ」



 宿屋がない理由は当然の理由であった。



 「じゃあ、屋敷に戻るしかないか?」



 オレは屋敷に戻る提案をするがフォルトゥナは却下した。



 「開始早々に戻るなんて恥ずかしいよ」



 どうやら戻るのは否定的のようだ。オレらを武器屋の前で困り果てているとあるエルフの女性が話しかけてくる。



 「あの・・・。お困りならうちの家来ますか」



 オレたちはその言葉に甘えることにした。





 ・・・





 「お前たちか」



 オレたちを家に泊めると言っていたエルフの女性はオレたちがさっきまでいた武器屋の主人の妻だった。主人のエルフはどこか呆れた様子だ。店主の妻のエルフはどこか不思議そうだった。そして旦那から今日のことを話すと顔に手を当て驚く。エルフは誰も美人と言うがその妻も例に漏れず美人であった。その表情は絵に入ったかのような綺麗さだ。



 「まあ! お客様だったのね」



 妻のエルフの顔がパッと明るくなる。



 「うちの主人が何か迷惑をかけてないでしょうか?」



 妻のエルフは店主とは違い愛想がよく、商売に向いている性格をしていた。アナシスが妻のエルフと対応する。この短期間見ただけでもわかるアナシスの対応力はここでも発揮されていた。



 「あらあら・・・」



 「そうそう・・・」



 二人は会話が弾んでいる。本当にアナシスは話が上手い。



 その会話に入り込めない三人はただぼーっと見つめるだけだった。



 「あのー。奥へどうぞ・・・」



 店主もこの光景を見てなんか冷静になったみたいだ。オレとフォルトゥナの二人を中に通してくれた。




 ・・・




 「まあ! 旅に出るの?」



 オレたちは武器屋の夫妻の家に泊めてもらい今はご飯を食べている。



 「ええ、そうなんです」



 そこでもアナシスが話していた。オレは食事に集中する。目の前には異世界の料理がある。オレは異世界版フォークとスプーンを手に取り食事を口にした。



 「まずはサラダから」



 オレは葉物野菜を頬張る。見た目はただ野菜をちぎって入れたようなものだ。ドレッシングもかかってない。だが・・・



 「この味は! 噛めば噛むほど旨味が口の中に広がっていく!」



 野菜の葉は新鮮そうでシャキッとしていて噛むと旨味が溢れ出てくる。オレは自分目を疑い再度ドレッシングなど何かがかかっているのではと確認するが見当たらない。



 「このサラダって・・・」



 オレはそう言うと妻のエルフは言う。



 「あら、ただ味わい草を入れただけなのにこんな反応をするなんて・・・」



 「味わい草?」



 「元いた世界にはなかったの?」



 フォルトゥナはオレに向かい疑問を投げかける。こんな野菜が元いた世界にあるかと言われたら少なくともオレが知る範囲ではなかった。



 「聞いたことないな」



 オレはそれに回答しながらサラダにかぶりついた。やはり旨味が溢れ出る。スープなどに入れて旨味が染み込むのはわかるがその野菜自体に旨味がついていることに衝撃が走っていた。



 オレはサラダがなくなると他のものをみる。目に入ったのは具沢山のスープだ。そしてオレはそのスープにあるものが浮かんでいるのを発見する。



 「これは?」



 それは葉物野菜だった。オレはそれに既視感を覚えた。反射で一口口にする。



 「こ、これは!」



 オレの既視感はやはり仕事をしていた。煮詰めたことで食感も変わっているが間違いない。これは・・・



 「味わい草・・・」



 そしてオレは脳でそれを理解した瞬間その具沢山のスープを見つめた。



 (これほどの旨味を持った味わい草だ。もちろん出汁も・・・)



 オレは湧き出る唾をごくりと飲み込む。オレはスプーンで一杯スープを掬った。まずは一口。



 「んっ」



 口の中に広がったのは優しな旨味だった。いや、この旨みは味わい草だけのものじゃない。オレはスープをまた見つめた。

 


 具沢山な具材が混ざり合って味わい草だけでは出せない複雑な旨味を形成している。オレは咄嗟にこの味を形容する。



 (まさにこれがお袋の味)



 それは最も家庭的で人が最も懐かしむ味であった。



 (オレのスープを掬う手はもう誰にも止められない)



 オレはそのことを本能的に理解していたし、これに抗おうとはしなかった。だがそこにオレでも不可能だと理論付けたスープを掬う行為を止める行いは不意に止まることになる。



 オレの前にいる主人は黒パンを持ってそれをスープにダイブしているではないか。



 オレのスプーンの手を止めさせたのは武器屋の店主であった。店主は最もこの料理を食べ慣れている人物と言っても過言ではない。そんな人物がオレが実行していない方法で食事を平らげているのだ。オレは周囲を見渡すと確かに黒パンがある。オレは黒パンを手に取った。オレはそのあと店主の行動をじっくりとみる。



 ちぎって、つけて、食べる、ちぎって、つけて、食べる、ちぎって、つけて、食べる・・・



 その繰り返しだ。オレも実践する。



 (まずはちぎる)



 ある程度かたい黒パンはオレがちぎることにより分離され小さくなる。



 (そしてつける)



 その黒パンはその宇宙の真理を体現しているようなスープにダイブする。



 (そして・・・食べる!)



 オレはその融合した幸せを口の中に放り込んだ。



 「これは!」



 口の中にはスープが染み込んだことにより少しかたかった黒パンが柔らかくそして凝縮された旨味が固形物として残るのが感じる。スープとは少し違い噛むという動作を経て滲み出る旨味は食欲をさらに刺激し、よだれの分泌を促進させた。



 「うまい!」



 オレの手はもうちぎって、つけて、食べる動作のために存在していた。いや、それ以外の行動を今のオレが許さなかった。



 「あら、そんなに気に入ってくれたの? 嬉しいわ」



 店主の妻のエルフがオレの様子を見て嬉しそうにする。だがこちらは何も言葉を返答しなかった。いや、できなかった。このスープの誘惑は喋ることも拒絶させ、ただ食べることへ誘う。



 「そんなにがっつかなくてもいいのに」



 フォルトゥナは若干オレを見て引いていた。それから少したちついにオレの皿から全て食べ物がなくなる。



 「美味しかった・・・」



 オレは美味しさの連鎖から抜け出してしまったようだ。



 「そんなに美味しそうに食べてくれると作ったこっちも嬉しいな」



 店主の奥さんはにこやかに笑っていた。



 「本当に話も聞かないくらいがっついてだね」



 フォルトゥナはオレに向かって話しかけた。



 「ああ、美味かった」



 「まさか味わい草が元いた世界に無いなんてね。マルタ様から事情は聞いていたけどジンの世界ってどんなところだったの?」



 「それは・・・」



 オレはフォルトゥナにオレが元いた世界の話をしたりと夕食を楽しんだ。




 ・・・




 「お世話になりました」



 朝になりオレたちは店前で挨拶をする。



 「こっちも楽しかったわ」



 「久々に賑やかな食事になったものだ」



 店主と妻は対応は正反対だがあたたかく見送る。



 「じゃあ、オレたちはこれで。さようなら」



 オレたち三人は街の外に行く。そして、街の外に出て森の中を進んでいた。そして結界の前まで到着する。



 「結界を越えてからはあたりを注意しておけ」



 アナシスから忠告がなされる。



 「エルフはな。容姿などから人ざらいに狙われやすい。そして人ざらいに合う多くの事例は結界を出てすぐに起きている。わたしたちの実力では人ざらいに遅れをとることはないと思うが身構えておけよ」



 オレはアナシスの忠告を聞きマルタ様からもらった守護の剣を構えるのだった。

キマの不思議な生物図鑑④



 名前 なし

 種族 味わい草

 食用可。噛めば旨味が出てくる。比較的広い地域に分布していて土地ごとに少し味が異なる。名前のとおり旨味成分が強く噛めば噛むほど旨味が出ることにちなんで名付けられた。

 

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