勇者は世界樹にいく
日向迅視点
オレがいた部屋はアナシスが放った魔法でひどいことになっていたためまた別の部屋に案内される。
「今日は災難な一日でしたね。疲れたでしょうからゆっくりと休んでいってください」
マルタ様は何か申し訳なさそうに言う。マルタ様、やはり美しい。でも・・・結婚してるんだよな。オレが入る余地などない。オレは心を奥底にしまった。
・・・
それからその日と夜が経過して、朝になる。オレは鳥が鳴く音と共に目を覚ます。剣と魔法の世界にふかふかのベッドがあるなんてな。この世界に来て初めて見たのがマルタ様たちだったが、こんな敷地がある場所に住んでいるなんて・・・もしかしたらオレが会えるような人じゃないのかもしれないな。そしてオレは自分の行いを思い出す。
(先に襲われたのはオレだけど、オレ、フォルトゥナのお父様殴り倒しちゃってるじゃん!)
えっ! もしかして打ち首か? いや、雰囲気的に打ち首はない気がする。それでも不安なものは不安だけど。
オレはベッドで勝手にビビっていると使用人っぽい人がオレを呼びに来た。
「巫女様がお呼びです」
巫女様って・・・オレを呼ぶのはマルタ様くらいか?確かにマルタ様は巫女服を着ているな。ただ今の服装はあいにくパジャマだ。オレは着替えるためにベッドから出てくる。使用人はこちらに来て、オレを正装に着替えさせようとする。
「いや、一人でも出来るって!」
だが使用人は譲ろうとしない。そんなにおされたらこちらも折れるしかない。オレは結局使用人に着替えを手伝わせた。
(こういうのは、貴族って感じがするな)
オレはそう思っていると、衣装が整っていく。
「おお!これは・・・」
まさにファンタジー貴族といったところだろうか。だが、オレの場合着せられている感じが凄かった。
「なんか・・・オレが着ると普段作業服のやつが突然スーツを着てきたときの違和感くらい違和感があるな」
使用人はその言葉に苦笑いしていた。
そのままオレはマルタ様との謁見に入る。ただいく方向はオレの予想と違かった。
「あれ、建物の外に出るのか?」
謁見の間とかって普通建物の内側にあるような気がするが。オレがいた邸宅から離れて巨大な木にだんだんと近づいていっていた。
「謁見の間とかじゃなくてあの木が目的地なのかもしれない」
「そういえばマルタ様が世界樹とか言ってたけどあの木のことか」
今オレが近づいている木はそれはそれは大きな木だった。見上げるのがしんどい。枝なんか落ちてきたら大変なことになるかもしれない。世界樹の枝葉に覆われて普通なら日陰になっているはずなのになぜかここの地帯は明るかった。それに一枚も落ち葉が落ちていなかった。この木は本当に特殊な木なのかもしれない。
オレはその木をボッーと眺めていると木の麓付近に到着する。太い木の根の隙間の先は洞窟のようになっていた。使用人はそこで止まる。
「ここから先はお一人でお進みください」
使用人は丁寧な口調で言う。
「ここから先? あの木の根の洞窟のことか?」
オレがその洞窟を指差すと無言で使用人が首を振る。どうやらあっているらしい。
「ありがとうよ。案内してくれて」
オレは使用人にお礼を言うと洞窟に向かっていった。
「・・・それにしてもデカい根っこだな」
洞窟の前にあるデカい根っこで隔てられた道は根っこでも大きい世界樹の凄さを表していた。少し進むとくだりに入る。土が削られ根っこが露出して天井となり、洞窟を作っている。オレはその洞窟に入る。中は暗く、少しジメジメとしていた。だが不思議と悪い感じはしない。オレは先に続く光を頼りに進む。そして洞窟の出口である光の先に進む。洞窟から出た瞬間、眩しさで少し目が眩んだ。
「これは・・・」
オレが洞窟の先で見た光景は先ほどの光景とは違かった。そこは花畑となっていて中央の木とマッチしてとても幻想的だった。そこでフォルトゥナとマルタ様とポリシアがいる。美少女が仲睦まじく話している光景は場所と合わさってなんとも幻想的だった。
「あっ!ヒナタさん!よかった!ちゃんと来れましたね!」
オレを見つけるとマルタ様は手を振ってこちらに来るように促した。オレは恐る恐るこの場に踏み込んだ。
「どう?この場所は」
オレに向かってマルタ様は聞いてきた。それはいうまでもない。
「最高です。マルタ様」
それを見るとマルタ様はどこか嬉しそうだった。
「ここはね。ポリシアと最初に出会った場所なんだ。ほら、ポリシアの花飾りを見て!実はね。全部この花畑の花なんだよ。この花はエレメントフラワーって言ってね。精霊に反応して咲き続ける花なんだって」
「そうなのですか」
敬語の綺麗なオレ状態で言葉を返す。
「さて、話は一旦くぎりましょうか。いつ洞窟が通らなくなるかわからないもの。雨だと洞窟が浸水して来れないから、今夜は天候が悪くなりそうだし、早めに終わらせましょう」
「ねぇマルタ。本題ってなんなの?」
ポリシアがマルタ様にたずねる。どうやら聞かされていないようだ。まあ、こちらも聞かされているわけではないけど。さらにそれに続くようにフォルトゥナも言う。
「私もなんで呼ばれたの? その話ってえっと・・・ジンと関係がある話じゃないの?」
それにマルタ様は答えた。
「残念だけどわたしもよく分かってないの。ただ世界樹がヒナタさんと話をしたいらしくて・・・だから世界樹の麓にある世界樹のコピー体のところに集まってもらったの」
どうやら全員が何も知らない状態らしい。
「樹木と会話できるのはドライアドしかいないからね。私が世界樹の翻訳をするよ」
そう言いマルタ様は耳を澄ませる仕草をした。そして少し声を低くする。
「お前さんが、ヒナタジンじゃな!」
その声はただ声を低くしたマルタ様だった。これでモノマネをしていると思っているのだろうか。
(かわいい)
だが、結婚しているんだよな。ああ、マルタ様の夫とか、前の人生でどんな徳を積んだらなれるんだ。オレがかわいい声に勝手にダメージを受けている中淡々と話が進んでいく。
「ヒナタジン。お主には重大な役割がある」
「役割?そんなのがあるのか?」
オレは神様との会話を思い出す。いや、やっぱ無いな。
「オレが神様と会話をしたときには・・・」
「神様との会話!? キマ様に送られたと聞きましたが、まさかキマ様と会話も!? 本当に?会話したのって黒いローブに白髪にちょっと黒髪が混じった髪の・・・」
マルタ様は突然案外をやめてオレに掴みかかってきた。距離が近い!マルタ様の息遣いが間近で聞こえてくる。マルタ様の息遣いが荒くなっているのを感じた。耐えろ!オレの理性!
「マルタ! そこまでにしなよ」
ポリシアはマルタ様の行動を見かねたのかマルタをオレから引き剥がす。ありがとう。ポリシア。オレはあともうすぐで三途の川を渡っていたところだよ。
マルタ様はしょんぼりしながらも世界樹の話の翻訳に戻った。
「そうですね。すみません、ヒナタさん。少しおかしくなっていたようです。では続きをいきましょう」
そこからさらに話し始める。
「お主の称号があるじゃろう。勇者とな」
「ああ。あるな」
確かに神様からは勇者という称号をもらった。それがどうしたのだろうか。マルタ様 (世界樹の翻訳)が話し始める。
「わしはな。竜脈などの魔素の世界中の巡りから魔素の記憶を読み取ることでキマ様に情報を送る役割も担っているのじゃ。それでな! キマ様の偉大なる知識 アカシック・レコードを読むことも許されているのじゃよ」
「それと何の関係が?」
それと呼び出された理由が全く伝わらない。世界樹の役割と関係があるのだろうか。世界樹はまだまだ喋る。
「ものすごく関係があるのじゃよ、それが。ところでヒナタジン、勇者とは何なのか。お主にはわかるか?」
「そりゃあ、困難を自ら切り開く勇気あるものが勇者だろ」
「・・・そうじゃな。お主が言っていることは正しいだがもう一つある」
勇者でもう一つあると言ったらあれだろうか。オレは世界樹に思いついたことを口にする。
「勇者と言ったら、ついになる魔王とか?」
この世界、剣と魔法の世界だし魔王がいても不思議ではない。オレがそれを言うと驚いたような顔をマルタ様が見せる。世界樹の感情を表現しようとしているのだろうか。かわいい。
「そう、それじゃ!お主の言った通り、この世界には魔王と呼ばれるものがおる。きっとキマ様は今起きている問題を解決する糸口としてお主をここに呼び寄せたのだろう。それにここには魔人族の娘もいる。全く、キマ様はどこまでも先を見ておられる」
マルタ様はどこか恍惚そうな笑みを浮かべていた。それにしても少し気になることがあった。
「問題って、何かあったのか?」
オレは事実ここにきてから一日だ。この世界のことを何も知らないという状況だった。その問題を世界樹は話し始める。
「そうじゃな。問題というものを説明しないとな。まずはなこの世界には様々な種族がいるのはお主が来た数日でも分かったじゃろう。この世界には様々な種族が暮らしている。その中で魔人族と魔族というのがおってのう。今ではその二つの種族は融和が進んであるのじゃが、その種族の長、魔王が世界中に向けて戦争を仕掛けたのじゃ、ここ十年以上は戦争状態じゃ、だがここ十年間の戦争はそんなに激しいものでは無かった。小競り合い程度じゃな。しかし最近になって状況が変わりつつある。魔王は本格的に世界侵略を始めたのだ。そんなときに来たのがヒナタジン、お主じゃ。勇者と魔王。両者は切っても切れない関係であろう? きっとお主がこの状況を解決してくれる糸口になるはずじゃ」
「つまりは魔王討伐ということか?」
それに世界樹は答える。
「別にそれはお主の自由じゃ!殺したければそうすればいいし、和解も自由だろう」
どうやら魔王討伐をしなくてもいいらしい。今時の勇者だな。でもそもそもオレが魔王に勝てるのか?オレは世界樹に魔王の強さを聞いてみる。
「そもそもオレが魔王に勝てるのか?」
オレが言うと世界樹は呆れたように言った。
「全く・・・勇者なのに勇気がないのう。勇者は勇気があるから勇者なのだぞ」
世界樹は完全にこちらを冷たい目で見ていた。マルタ様も冷たい目だ。こっちはこっちでいいかもしれない。マルタ様。美しい。でも、結婚しているんだよな・・・。
「お前はそこの魔人族の娘、フォルトゥナと一緒に勇者一行として旅に出て、この世界を救うのだ」
「ちょっと待って!」
世界樹の言葉にフォルトゥナも反応する。
「なんじゃ?」
「なんじゃ? じゃないでしょう! お姉ちゃん!なんで私がいくことになってるわけ!」
「それはわしが決めたことだ。この旅には魔人族の娘が必要と判断した。詳しいことは神に送る情報だからな。言えん」
「ちょっとそれだけじゃ納得できないって!」
「世界樹が言っているからそうした方がいいでしょう」
マルタ様は世界樹のモノマネから戻る。どうやら世界樹が言いたいことは済んだようだった。オレもまだまだ言いたいことがあるのだが、多くの謎を残して去っていったようだ。
「マルタ様。世界樹にまだ聞きたいことがあるんですけど」
それにマルタ様は困った顔をした。
「ヒナタさん。悪いけど世界樹はもう何もしゃべらないみたい。もともと喋ることなんて滅多に無かったし、こうなったら諦めるのが賢明ね」
「「そんな〜」」
オレとフォルトゥナの声が被る。フォルトゥナは声が被ったことでオレの方を見た。
「こいつと旅をするの?」
「・・・」
フォルトゥナは嫌そうにオレの方をみる。確かにオレもチャラにするとは言われたが気まずいのは変わりなかった。
「まあ、決まったことなんだし、早速旅の支度をしましょう。それに天気が悪くなったら洞窟が塞がっちゃうわ」
マルタ様がそう言うとオレたちは屋敷へと戻っていった。
スキルについて
スキルの大半は魔法を簡略化したもの。魔法を簡略化したものなので魔法の適正がスキルの威力に直結する。また、頑張れば魔法で再現も可能。ただし、再現には覚えたい魔法の高度な理解と適正が要求される。優れた技や技術、便利な知識技能など魔法と関係ないスキルもある。技術に関しては攻撃や防御の適正によって効能が変わるものがあったりとこちらも適正がある。大体は自力で習得するが、魔法のスクロールで習得する方法もある。キマはスキルとして使うことはできるが基本的にスキルを介さずに魔法を使っている。キマは書類を紙にこだわったりと何かとこだわりが強い男なのだ。




