狂人と魂
わたしはラファエルが部屋から出ていったあと、中断していた通販の購入を再開する。購入するのはもちろん人間の魂だ。その魂から異能と言う能力がどういうものなのかわかればいいのだが。わたしは期待の面持ちで購入をクリックした。その瞬間光に包まれる。そして黒い箱に届いた状態で魂が届いた。
「この箱は・・・魂を閉じ込める構造になっているのか」
梱包もしっかりとしていた。わたしは地上では魂の核を作ってはいないがわたし自身は『生命力』により核を作れたりするので核のある魂の扱いは容易だった。わたしは梱包を剥がすとケースに入った魂がお出ましした。
「これが例の魂か。確かに生命の情報が核に入っている」
魂が違う力によって生まれたからか生命力でできた魂とは少し違うようだが魂と呼んでも差し支えないだろう。わたしはケースから慎重になって魂を取り出すと、魂が持つ異能という力について調べ始める。
「ふむ、異能の力はどうやらこれか」
わたしは魂を探っていると力の根源のようなものを見つける。
「体内に力の因子のようなものがあるな」
わたしはそれをさらに確かめる。するとあることがわかる。
「どちらかと言うと外付けの力と言うイメージが強いな。力というのは本来自身に結びついていて、強固に癒着しているというイメージが強かったが、これはすぐに取り外せてしまいそうな危うさがある」
この異能という力はどうやら一つの能力を得る代わりにそれ以外の構造を大幅に犠牲にしているな。そのおかげで力の定着というか、どうも身体への結びつきが弱い。つまりは簡単に力を奪えてしまうということだ。この力は神には有効打にはならないな。
「この能力は星ができる過程で偶然生まれていたと聞いたが、神に星はいないし、そちらの方面の進化は伸びなかったか」
わたしはとりあえず異能という力を取り込んで創造力の糧にする。
『生命進化』
「もしかしたらのちに活用方が見出せるかも知れない」
わたしは残念がる。神の力とは神にとっての切り札だ。それに上位の神はわたしがニャルに絶対防御を解析されたように能力の理解能力が高い。その力を理解されればその力の対処法も見えてくるわけで、神の切り札となるような力を持つものを売るようなものはいなかった。ちなみにわたしの場合の切り札となる力は創造力だ。因みにこれ以前にも力を持つものを買っていたのだが、それの多くは致命的な欠点を持っていた。
「まあ、使えないと言っても創造力に取り込ませたら創造力が強くなるからそのような力を集める意味もなるのだがな」
適応したわたしはわたしの中から因子を取り出した。定着がしっかりしていないからすぐに取り出せる。
「さて、どのような能力にしてみるか」
その因子は特化型の性能を発揮できる。能力自体は十分に強いのだ。まあ、神には通用しないけど。まあ、取り外す行為自体神くらいの技量がないとできないから、地上では強いのだが、異能で新たな熾天使を作るのは流石に力に欠陥があり、弱すぎる。これまでボロクソに異能を言っていたが、これ以上とやかく言うのはやめておこう。わたしは気を取り直して魂に顔を向ける。
「この魂・・・どうするか」
わたしは魂の扱いに困っていた。これまでに力の込められたものを扱ったときは武器など道具であり、魂が送られてくることなどなかったからだ。
「これ・・・どうするか」
わたしは考える。魂とは言え、生き物だ。これまでの武器のように放置は良くないだろう。この魂の核を破壊して野に返してしまおうか。でも、それは少し勿体無い気がする。
「こんな綺麗に魂の情報が残ってるなら活用したくなるな」
この魂は綺麗に生命の情報が残っている。本来魂が核を構成しない世界にいたらしいのだがそれが信じられないくらい綺麗に生命情報が残って核を形成していた。神が珍しがるのも納得だ。確か異能が原因だったと言っていたな。さっき異能を理解するときに知ったのだがこの魂には引き寄せ、放出する力というものが宿っていた。おそらくそれが原因で生命の情報が集まって核を形成したのだろう。
「とりあえずはこの魂をこちらの地上にでも放してみよう」
わたしはやることを決めると魔法を展開する。魂の情報から身体を構成していた。わたしはこの人間が地上でも生きられるように適応を促す。リリースをしてすぐに死んでもらってはいただけない。わたしは魂の横に素体となる肉体を構成した。
「少し適応できるように改良したが、その魂の持ち主が死ぬ前と姿形は変わっていないだろう」
わたしは魂を肉体に近づけると魂は紐のようになり、するすると体の中に染み込むように入っていく。そして最後に異能の因子が残った。
「この地上では異能は存在しない。言うなれば、この世界にとっては異物であり、世界のシステムには対応していないだろう」
だが、わたしは問題がないと判断する。この人間が死んだあとに最後に持ってこれた唯一のものだ。取るのはしのびないだろう。わたしは最後の作業に入った。異能の因子はその男の体に入っていった。その直後、心臓の鼓動は再開される。
「ドクンッ」
その男は異能の因子を入れた瞬間、飛び起きる。その男は茶髪で髪質が硬そうな髪だ。体格に恵まれていていい感じに筋肉もついている。とてもワイルドそうな青年だ。
「あれ?生きてる!?」
少年は顔を触り、感触を確かめていた。そして、わたしに気づく。わたしは彼の勘違いを少し訂正する。
「いや、君は一回死んだんだよ」
「っ!?」
わたしの言葉にその男は詳しく説明を求めた。
「どういうことだ?」
「つまりは、君は死んでそれをわたしが蘇生させたということだ」
「そうか」
わたしは結構衝撃的なことを言ったのだが男は驚かなかった。
「結構驚くと思ったのだが、驚かないのだな」
「まあ、オレもあの状況から生きているわけないと思ってたからな。蘇生されたというなら納得できるがどうして蘇生させたんだ?」
その疑問からわたしは答える。
「まず前提として、わたしは神だ」
「神なのか・・・神は人間を自身を模して作ったとか誰かが言ってたけど本当にそうなのか・・・」
その男は関心していた。
「それならこれは死後の審判みたいなものか?あれ?でも死後に蘇生したら生きてるってことだよな?死後じゃない?」
男は天国か地獄にわけるために呼ばれたかと思っていそうだったがそれをわたしは否定した。
「いや、君は天国にも地獄にも行かない。わたしの世界に行ってもらう」
それに男が思いついたように言葉を発する。
「それってつまりは異世界転生ってことか?」
異世界っていう言葉はどうやら男の世界でも合ったらしい。わたしはその通りだと言うことを伝える。
「まあ、正確には異世界転移だがその認識で大体あっている。君には剣と魔法の世界に行ってもらう」
「・・・まじか。剣と魔法ってファンタジー世界じゃん!」
その男は驚いていた。わたしはその男に転移させる前に何か確認したいことがあるか告げる。
「何か確認したいことはあるか?」
「ああ!異世界の言語とかってどうなっているんだ?」
そこにもわたしは答える。
「今、わたしと話せているだろう。それと同じように地上で標準的に使われている言語は聞き取れるし、書けるようになっているはずだ」
そこのところは地上の環境に適応させるついでにやっておいたのだ。わたしはそう言ったあとまだまだ質問があるようなので答えていく。
「じゃあ、剣と魔法の世界って言ったけどよ。魔法ってオレは使えるのか?というかなんかギフトなりなんなりないのか?」
「異能の力があるだろう」
わたしは異能の力があるからと男の案を否定する。しかし、男も負けていなかった。
「いや、オレそれが原因で死んだからな」
「そうなのか」
わたしはそれを聞いて勘案する。どうやら言動に嘘は無さそうだ。確かに死んだ原因になった能力を使ってまた生きてくださいねと言われてもはいそうですかとしか言えないだろう。だからわたしはその異能を少し改良することにした。
「ではわたしが異能を少し改良してあげよう。それならいいかな?」
「まあ、大丈夫だ」
その言葉をもらうとわたしは魔法を展開する。
「引き寄せ、放出する力の解釈を拡大、さらに力の威力の上昇」
わたしは異能をいじると能力を少し変えていく。事前に異能について適応し、理解しているから改良は簡単だった。
「これでどうかな。君の能力の範囲を過大解釈して、さらに出力も強力にしておいた。これで満足したかな」
それに男は答える。
「ああ、まあ、もらえないよりは何倍もいい」
その言葉を聞くとわたしは転移の最終調整に入る。
「じゃあ、最後に・・・君は何になりたいとかあるか?」
わたしは男に聞く。男は少し考えるとまっすぐな目で答えた。
「そうだなぁ、オレってばあちゃん子だからばあちゃんに足向けてなられるような人生を送りたいな。ばあちゃんが言ってたんだ。困ってる人がいたら気が向いたら助けろってな」
わたしはその男の目を見て良い目をしていると思った。
「素直な目だ。わたしは嫌いじゃないぞ。その目は」
「えへへ。どうもありがとうよ!ばあちゃんの躾が良かっただけだ」
そしてわたしは男の回答を経て少しおまけをしようと心に決めた。
「わたしは君を少しだけ気に入ったよ。追加で加護もつけよう」
そうして加護の付与に入る。男から出る素質、それを勘案してわたしは加護を選んだ。
「では君に『勇者』の加護を授けよう」
わたしはそう言うと男に勇者の称号を授ける。さらにさらっとキマの加護も付与する。
「さて、ではこれで君ともお別れだ。君がこの世界で、今度の世界で幸せになることをわたしは祈ろう」
「ああ、ありがとうな」
そして転移前最後の言葉を交わす。
「最後に君の名前を聞こう。名前は?」
それに男は笑顔になり答えた。
「オレの名前か?そうだな。オレの名前は日向迅だ。ところで神様?あんたの名前はなんなんだ?」
迅はわたしに聞いてくる。わたしはニコリと笑うとはぐらかすように答える。
「地上にいれば嫌でも耳にするさ」
そうして初めての異世界人をこの世界に転移させた。
ダンジョンの遺物①
魔法のスクロール:スキル「飛ぶ斬撃」
分類 魔法のスクロール
スキル「飛ぶ斬撃」を習得できる。文字通り飛ぶ斬撃。魔法のスクロールの原理は使用者の潜在的な才能の一部を引き出すことで成り立っているため、才能の無いものが使うと本来の力は発揮されない。




