狂人は夜に歩く
あれから、わたしは無心で神フォンを操作していだがそんなことをしているうちに日を跨いでしまった。
「もうこんな時間か」
研究所及び、天界にも、夜はある。だがわたしは寝ることもできるが基本的には寝なくても大丈夫な体だ。だが、わたしは大丈夫でも、天使たちには休息が必要だ。
「天使たちの天界にでも遊びに行くか」
わたしは転移を発動した。
『転移』
「・・・静かだ」
転移したところは天使たちが暮らす街の通路の真ん中であった。モダンな街並みは全体的に暗く。ランプによってところどころ照らされていた。
「ここは、・・・居住区だな」
そこからわたしは直感を頼りに進んでいく。そうしたら飲食店などがちらほらと見える。天界ではわたしが発行している独自の通貨が流通している。ガブリエルなどの熾天使のもとで仕事をしているものもいれば、天使の生活の基盤となるものを支えている天使もいる。天使はそれぞれの方法で稼いでいるのだ。
「こう言うところで働いている天使を除いたらもっと人手は少ないのかもしれないな」
わたしは深く考えるとこの場を後にした。
・・・
わたしは再び自室に戻る。そして天使の街を見た後、無性に地上がどうなっているかを見たくなってきた。
「そういえばダンジョンを設置してからどうなったのだろうか」
冒険者ギルドはあるだろうか?
神器制作で地上のことについては放置気味だったのでわたしはワクワクしながら魔法を発動する。
『万里眼』
地上を探すと早速見つかる。わたしは街を見つけるとわたしがたびたびあったらいいなと思い描いていたものを発見する。
「これは・・・冒険者ギルドだ」
無事にお目当てのものを見つける。わたしは冒険者ギルドを見つけたあと、答え合わせが如く、アカシック・レコードを起動する。
「『アカシック・レコード』!・・・うむ、だんだんと冒険者ギルドは広がっているようだが、全域ではないか」
まだまだ冒険者ギルドは成長段階だ。そして、確実に成長してもいる。これからもっと大きくなるだろう。わたしは冒険者ギルドに所属している冒険者を探す。時差を考えても昼前の場所にあるダンジョンの中を万里眼でのぞく。そこにはやはり冒険者の姿があった。わたしはその光景を見る。
・・・
見てみるとどうやらボス戦の真っ最中らしい。ボスにはミノタウロスがいる。そして、ミノタウロスの前には力尽きた男が倒れていた。その男を除いて四人がそこにいる。
「ダズがやられた!くそ!」
鎧装備の筋骨隆々の男は仲間の死に悔しがっている。おそらくはこの男がメインアタッカーだ。
「お前がっ!ダズを!」
小回りがきく装備をつけた女がミノタウロスに突撃してくる。
「馬鹿!よせ!」
しかし、その言葉は激昂して耳に入らない。
「はあああああ」
軽装備の女は泣きながらミノタウロスに突撃するが、ミノタウロスは女に持っている斧を振りかざす。
その瞬間。物体が宙に飛ぶ。その物体は跳ね返るようにパーティメンバーの方に向かっていき、メインアタッカーの男の前で止まる。
「ひぃ!」
男はそれと目が合った。メインアタッカーの男は恐怖する。さっきまで生きていたはずのメンバーが死んだと言うことを強制的に叩きつけられる。
「このミノタウロス!変異個体か?」
このミノタウロスは明らかに様子が変だ。男には最悪な可能性、全滅が頭によぎる。メインアタッカーの男は残りの魔法使いの男とヒーラーの女に撤退を指示した。
「ヤーン、ケイ!撤退だ!全力で部屋から脱出しろ!やつはボス部屋からは出られないはずだ!」
その言葉に魔法使いの男は反発する。
「二人を殺されて、黙って帰れとでも言うのか?」
「そうよ!わたしたちの仲間を殺されて・・・」
「黙れ!」
ヒーラーの女も魔法使いにのって反発したがその声はメインアタッカーの男にかき消された。
「この状況を深く考えてみろ!おそらくやつは変異個体だ!今の俺らじゃ、あいつには勝てねぇ!お前ら!撤退しろ!」
その声には真剣な声色でヒーラーと魔法使いは圧倒される。二人はその言葉通りにボス部屋の出口である扉に向かった。だがミノタウロスは逃げようとしたことが伝わったのか、こちらに向かってくる。メインアタッカーの男はミノタウロスとの距離を確かめ、このままではミノタウロスに追い付かれることを察すると、ミノタウロスを止めに入る。
「すまない・・・二人とも。俺はどうやら間に合いそうにない」
そう小さく呟くとミノタウロスに向かっていく。
「ぐもぉぉぉ」
ミノタウロスは男に狙いを定める。
「これを食らえ!」
ミノタウロスは男の目の前で斧を大ぶりで構える姿勢をとる。メインアタッカーの男はそれを見逃さなかった。男は自身の大剣をふるい。ミノタウロスの腹を一閃する。
「ありゃぁ」
「バキッ!」
その攻撃はミノタウロスの攻撃にクリーンヒットした。しかし、男は見た光景に絶望する。
「はは、化け物が・・・」
男はそれに苦笑いした。
「ぐもっぉ」
大剣を受けたミノタウロスの腹は確かに傷はあるもののそれは致命傷と言えるものではなかった。また男はそれと同時に大剣が折れていた。そして、倒しきれなかった男に向かうのはミノタウロスの斧での大ぶりの一撃だった。
「ぶもももぉぉぉぉぉぉ」
それは男を真っ二つに切断する。ミノタウロスはそれと同時に雄叫びをあげた。
「リーダーァ」
魔法使いの男とヒーラーはメインアタッカーが稼いだ時間の合間にボス部屋の扉に辿り着く。そしてボス部屋を出るところでメインアタッカーの男の死を目撃した。二人は泣きながらボス部屋を出る。
「リーダー・・・おれたちの逃げる時間を稼ぐために・・・」
「みんな・・・」
二人はボス部屋の前と言う安全なスペースでお互いで泣きあう。しかし、その平穏を崩す者がいた。
「ドンッ」
「ドンドンッ」
「ドンドンドンドンドンッ」
ボス部屋から何か扉を叩く音が聞こえる。
「まさかっ!ミノタウロスが扉をこじ開けようとしてる!」
ヒーラーの女が言う。しかし、それを魔法使いの男が制した。
「ボスはボス部屋から出られないはずだ!」
しかし、その音はますます、うるさくなる。
「ドンドンドンッ」
「ドンドンドンドンドンドンドカ・・・」
扉はギギと音を立てたあと動き始めた。そして、ここにいてはいけないはずのものが解き放たれる。
「ぐもぉぉぉぉぉぉお」
「なんで・・・ボスはボス部屋から出れないはずじゃ・・・ぐっ」
ボス部屋から出て早々にミノタウロスは魔法使いの男の頭を掴む。
「メキッ、ミシッ、ミシッ」
「あっあっ」
魔法使いの男の頭から鳴ってはいけない音が聞こえてくる。その光景を見たヒーラーは腰が抜けてたてなくなった。
「バキッ、バキッ、ボキッ」
魔法使いの男は動かなくなった。そして次はヒーラーの女の番だ。
「いやっ!やめて・・・!だれか!助けて!」
その言葉は虚しく響くだけだった。そして、とうとうこのパーティは全滅した。
・・・
「・・・」
わたしは万里眼で冒険者を見ていたら全滅するところを目撃してしまった。
「まあ、ダンジョンなのだから。死ぬ危険性はあるだろう」
ただ、わたしは一つ気になることがあった。
「あのミノタウロス、通常のミノタウロスに比べて強すぎるな」
わたしから見てもそれは通常のミノタウロスの範疇を超えていた。おそらくは変異個体か何かなのだろう。出会ったパーティは不運だったと言うことだ。
「あまりに敵が強すぎても困るのだがな」
このダンジョンはもともと不遇だった魔物を活用して何か作れないかと思い作ったが、難易度が高くて来てもらえないのは作り損だ。全てのダンジョンが難しいと言うわけでもないと思うが何か勿体無い気がする。わたしはダンジョンの挑戦者について考えているとある案が思いついた。
「逆に人類を強くするというのはどうだろう」
(人類が強くなれば、たとえ敵が強くてもダンジョンに入ってくれるかもしれない。まあ、装備を何か作るとかか?)
そこでわたしは装備と聞いて、あるものを連想する。
「そうだな!装備かなにか、外付けのものを作るか」
そうと決まれば、行動は早い。わたしは連想したものを実現させるため、工房に向かっていった。
・・・
わたしは夢中になってそれらを作っていると、気がつけば、明るくなっていた。ちょうどわたしが思い描いたものも完成する。
「よし、これで最後か」
わたしは最後に出来上がった刀を見つめる。それは神器虚空ノ露と見た目が酷似していた。わたしは鑑定を使う。
名前 No.1
聖器: 刀
その刀は神器虚空ノ露のレプリカのような存在であった。
「性能は落ちているがこれでも十分に強い」
わたしはその刀を振るう。たとえ性能が落ちていても元となった神器虚空ノ露のように空間を切れることは変わらなかった。わたしはその切った先の空間に入り込む。そしてここで刀を振る。
「シュッ」
「これ以上は切れないか」
わたしは切った感覚に違和感を覚えた。
「この空間は虚空ノ露で切った時に現れる空間と違うな」
それで気になり神器虚空ノ露も取り出して切るとその空間はまるで豆腐を切るように切れた。
「これは・・・」
わたしはこれで確信する。
(神器虚空ノ露では切れすぎてわからなかったがこうして見比べると空間は層のように出来ているのか)
虚空ノ露で切った空間から次元収納にしまったものがないことから薄々勘づいていたが、そうか。これで確証に変わった。
これがわかればあとは簡単だ。わたしは魔法でその刀の性質を確かめていく。理解出来れば、魔法は驚くほどの力を発揮する。わたしは剣の性能を事細かに調べた。
「切った空間は層になっているうちの一つの空間だけか。だが概念を切る能力はその限度では据え置きになっているな。性能的には地上で使っても間違って天界に繋がるとかは無さそうだな」
そしてあることに気がつく。
「そういえば、これを使うのは人類だったな。それなら空間を切るままでは危ないか」
空間は魔法で制御しない限り、勝手に治るので穴の心配は問題はない。しかし、ある程度の速さの修復力はあるが、空間を切る速さより修復力は高くない。空間に穴が開くと開いたところは別の空間が見えているわけで開いた先の空間に敵が潜んでいるわけでもないためただ単純に視界も悪くなる。それ以外も色々と扱いにくいところがあり、勝負の最中無駄に切れすぎる刃は使う側からしても迷惑だ。実際にわたしも持て余している部分がある。現在は空間を切り裂く用途でしか神器を使っていないからな。神器の方は鞘が作れなかったりと本当に扱いづらい。わたしの場合は魔法でフォローしたりもできるがこのまま人類が使ったとして、使いこなすことが出来るだろうか。
「いや、できないな」
わたしはそう確信するとそれからさらに改良するため付与を開始した。
『付与』
この刀につけるのは空間修復の魔法だ。
「これで切った瞬間から、空間を修復することで空間を露出することはない」
わたしは付与で施し終わると考え込む。さらにわたしは発想を巡らせるとあることを思い出した。
「聖器の方は神器で切れる空間が断ち切れなかったよな」
そこがわたしの中で引っかかる。そこの空間は刃よりも強い?そんなことが頭をよぎると引っかかっていた考えが頭の中でまとまる。
「切れない空間があるならそれを参考に鞘が作れるかもしれない」
わたしはいい案が思いついたと喜び、早速実行にうつす。
「切れない空間の性質を読み解いて、鞘を作るか」
原理的には『生命進化』と似ているかもしれない。わたしは鞘をだんだんと形作っていく。そしてそれは完成した。
「さて、ここからだな」
わたしは、刀を鞘におさめられるか確かめるために鞘を刃先に近づけた。
「さて、どうだ?」
鞘は刃の先からだんだんと根本まで覆い、ついには刃を完全に無力化することに成功した。
「成功したか」
わたしは成功したとわかった途端、笑みを浮かべる。劣化ではあるがこの切れすぎる刀に意趣返しをくらわせたのだ。これは大きな一歩だ。わたしはルンルン気分で神器虚空ノ露も同じことが出来るのではないかと思いつく。そうと決まれば早速わたしは神器虚空ノ露で空間を切り裂く。そしてその空間の中に入った。
「さて、この空間を調べようか」
わたしはその空間の解析を始める。しかし、それを始めてすぐに頭を抱えることになった。
「なっ!」
わたしは空間を調べるがわたしは開始早々につまずいた。
「これはわたしの技量が足りていないのか。この空間についての情報が全然出てこない。・・・この空間は少し特殊のようだな」
この空間はわたしでも詳細には調べることが出来なかった。だが少しだけ調べることはできたのだ。ならば今後の成長次第ではわかるようになるだろう。成長と言ったら、わたしが偶然生み出した力である創造力に新たな力を取り込ませるのが早いが・・・まあ、そこは後々やろう。
「まあ、鞘がもしかしたら作れるかもしれないとわかっただけでいいとするか」
そう結論づけるとわたしは作ったものを並べはじめる。そこには刀を含め、各神器に類似した七つの聖具があった。性能は劣化しているがそれぞれ対応した神器と類似している能力がついている。劣化とはいえ、どれも強力だ。
「まあ、戦闘向きではない神器もあるからそれを元にした聖器は本来の目的の本筋と違うのだが・・・」
それでもどうせ神器を元にして作るならキリ良く全てを作りたかったのだ。聖器はわたしが元にした神器の制作した順番に沿ってNo.1、No.2No.3・・・No.7と名付けられている。わたしはそこから聖器の細かい調整にはいった。
「強すぎも良くないからな」
わたしはそれらの聖器に制限をつける。
「パワーバランスのために一つしか所有出来ないようにするか」
わたしはそう決めるとさらに条件を加える。
「過ぎた力は災いをもたらす。所有者が聖器をもう一つ持って使用したら使用者を爆発四散するようにするか」
そして、聖器にその能力を施していく。
『付与』
聖器に一斉に能力付与される。これで一旦は一区切りついた。わたしは魔法を展開する。
「よし、これでリリースしてみるか」
『リリース』
わたしは『リリース』と唱え聖器を地上に放出した。
キマが売っている商品②
名前 夢栞
分類 娯楽品
この栞を本に挟みその本を枕の下に置き眠るとその本の内容の夢を見る。乱用には注意。




