狂人は戻ってくる
久しぶりにわたしの世界に戻ってきた。
「ここがマスターの世界ですか」
わたしたちは研究所の目の前に転移していた。ミカエルは感嘆とする。わたしはふとあることを思い出した。
「ああ、そう言えば、ガブリエルたちを元に戻さないとだな、『カード:リリース』」
その言葉と共にガブリエルたちは傷もなく目の前に出現する。
「あれ?ボク・・・確か・・・」
「ガブリエル様っ!」
「うわっ!」
ハミンはガブリエルに抱きつく。その様子にガブリエルはちょっぴりと困惑した。
「ガブリエル様!生きててよかった!」
「生きててって・・・生きてるよ?ボク」
確かにガブリエルはアザトースに殺されたように見えた。それなのになぜ生きているのかというとカードの性能にある。まあ、ぶっちゃけ言えば、死んでも生き返るようにしているのだ。死んだ瞬間の直前まだ覚えるように設定している。だからガブリエルにはまだ首を掴まれたときの記憶しか残ってないのだ。
「まあ、みんな生きていて幸いだ」
そこでわたしはふと気づく。あれ?これってわたしがデスゲームに勝手に招待したみたいじゃないか?ということに。わたしは少しそのことを考えたあと、不都合な現実から目を背けることにした。そもそもわたしも結構危ない状況だったし、全員生きているのだからこれでいいだろう。そんなことを考えているとガブリエルは見慣れないものがわたしの隣にいることに気づく。ガブリエルはそれに過剰に反応した。
「ねぇ、そこのメカ女!どこの誰だか知らないけど我が君に熱い視線を向けんなよ!我が君の隣はボクで十分なんだからね」
いや、ガブリエルが隣なのはわたし的には心配なのだがそうか、ガブリエルはまだミカエルを知らないのか。そしてミカエルも反論する。
「メカ女ってなんだ。マスターを侮辱しているのか!これは防具であってわたしの体の一部ではない!」
「へぇーそうなんだ!じゃあ身の回りを世話するロボットだとてっきり思ってたけど・・・我が君の身の回りにいる必要ないよね。ほらどいてよ。ボクは曲がりなりにもメイド服を着てるからね。我が君の身の回りの世話はボクがするからさぁ」
ガブリエルって、メイドっぽいことしたことあったか?結局わたしは喧嘩が止みそうにないのでここで割って入る。
「両方ともストップだ」
その言葉にガブリエルとミカエルはストップする。とりあえずまずはミカエルの紹介に入る。
「ガブリエルたちにはまだ顔合わせが済んでいなかったな。そこの天使は新たな熾天使であるミカエルだ」
「これからよろしくおねがいします。マスター」
そしてミカエルはわたしに擦り寄る。ガブリエルはその光景に絶望した表情をする。そしてある推測がガブリエルの中で浮上する。
「熾天使・・・やっぱり!我が君、メイドがポンコツだからって機械に頼ろうと・・・」
ガブリエルは泣き出す。
「うわーん!ボク、きっとリストラされちゃうんだー。いやだよぉ〜」
わたしは泣き始めたガブリエルを慰める。しかしリストラなんて言葉どこで知ったのか。天界にリストラってあるのか?わたしが知っている限りではないはずなのだが。
「ああ、トラウマですね・・・」
「トラウマ?」
ハミンがガブリエルのこの状況をトラウマと表したがもしかして地上で何かあったのか?わたしはハミンの話を聞いてみる。
「はい、そうです。ガブリエル、地上で皿洗いとか料理とかありとあらゆる失敗をして店をよくおいだされまして・・・最後の店でもその、ガブリエル様って顔だけはいいじゃないですか。言いづらいのですが、店主はすぐにガブリエル様を理解して、ただ店の前に立ってろ、って言っていたのですがそれでもダメでして、お願いだから何もするな。って言われたらしくてそれでトラウマになっちゃったんですよね」
「おお・・・」
わたしはなんとなく察する。いやー、地上でもガブリエルのやらかしは治らなかったか・・・。わたしが遠い目をするがわたしはガブリエルをリストラするつもりなど無い。まあ、ハミンの補佐は必須だが。ともかくガブリエルにリストラはしないと伝えないとだな。わたしはガブリエルに向かって言う。
「リストラはしない。安心しろ!」
「本当?」
「本当だ!これからも期待してる」
するとガブリエルの目に光が宿る。
「ぐすっ!ありがどう〜我が君〜」
ガブリエルはわたしに抱きつく。その光景をミカエルは羨ましそうに見ていた。
「ガブリエルか。名前・・・覚えたぞ」
そうして新たな熾天使を迎えつつ新たな神様ライフが始まるのだった。




