狂人はラストゲームを始めたい2
「いたぞ!そこだ!」
扉を出てわたしたちは近くにいた審問官に見つかるがわたしが経路を切り開き走っていく。わたしたちは走りながらも情報を擦り合わせていく。
「そういえば、何で師匠は審問官の要求に含まれてないんだ?」
龍太郎が聞いてくる。わたしはそれについて答えた。
「おそらく奴らはわたしを殺したものだとでも思っているのだろう。こうも暴れたらわたしが生きているとバレるのも時間の問題だが」
(それにまだ審問官が内部の情報をよくわかってないのかもな)
わたしは自分の見解を述べた。少し走っていくと曲がり角が見える。わたしはその曲がり角の前で二人を手で止める。
「しっ!静かに」
足音が聞こえる。それにわたしの感知するところでは向かってくる奴らは審問官で間違いない。
(わたしたちの進行方向に二人か。よし!)
わたしは会敵する直前に曲がり角を飛び出し一人を制圧する。そしてもう一人の背後に周り羽交締めでしめた。
「よし!これで完了だ」
「すげー!」
龍太郎が目をキラキラさせている。しかし、そんなに時間があるわけではない。わたしは二人に切り替えるように言い、走り出した。
「ここをこう行って、この先を進んだら・・・ここだ!」
札花のいる病室だ。わたしは素早く扉を開ける。
「っ!?木間伊月さん?それと・・・札音の友達の・・・」
「龍太郎だぜ」
「霊太だ」
札花は驚いた様子でこちらを見る。
「周りの様子はわかっているの?悪い人たちがわたしたちを探しているのよ!それに伊月さん!あなた、心臓が止まっていたのよ!動ける体じゃ・・」
「それも承知の上だ。説明する時間はない。ここから逃げるぞ」
あいにくこちらは動ける体である。わたしは札花をお姫様抱っこする。
「ちょっ!」
札花が頬を赤らめるが気にしない。札花を担ぎながら扉に戻る。
「師匠すげー!」
「なんて生命力」
そばで見ていた二人はそんな言葉を発していた。包帯ぐるぐるの男が平然と女性をお姫様抱っこしたら驚かれるのは当然の反応だ。まあ、この状態で戦闘してるのも大概だが。わたしたちは脱出のためすぐ に外に出たが、外に出たらある声が聞こえた。
「名簿ではここの角が東山札花がいる場所だ。・・・いたぞ!さらに盤城龍太郎と読札霊太もいるぞ!やれ!」
どうやら見つかったようだ。ここは角奥の部屋だ。一方向の通路だけで袋小路だ。わたしはすぐに部屋に戻り窓を開ける。
「おい!師匠何してんだ!ここ3階だぞ。そんなとこから飛び降りたら死んじゃうよ」
札花、龍太郎霊太の三人はなんとなくわたしのやろうとしていることを理解したようだ。龍太郎がそれについて咎める。そして霊太はそれに頷きながら顔が青くなっていた。わたしの腕の中にいる札花も驚いている。だがわたしの体の耐久性なら問題ない。わたしは窓に足をかけた。
「今から飛び降りる」
「「「はっ????」」」
その旨を伝えると札花がジタバタと動く。
「え?わたしを抱えたまま飛び降りるんですか?ちょっと待ってください!こんな高さから飛び降りたらわたし・・・」
「飛ぶぞ!」
「ちょ!待って!いやややややややややや!」
わたしは窓から飛び降りた。だんだんと地面が近づいてくる。わたしは札花に衝撃が行かないように着地する。
「ぶくぶくぶく・・・」
飛び降りた恐怖なのか札花は気絶していた。少し刺激が強すぎたか。飛び降りたわたしたちを見て急いで龍太郎と霊太は窓の外の様子を伺った。
「二人とも生きているぞ。受け止めるから飛び降りてくれ」
わたしの様子を見て二人は信じられない様子で目を丸くする。
「なんで!どうなってるの!師匠の体!」
「いやおかしいでしょ!」
まあそんなこと言ってはいるが時間はあまりない。審問官があの部屋には迫っている。わたしは二人を急かす。
「おい、早く飛び降りないと審問官が部屋に入ってくるぞ」
そういうと戸惑う様子を見せながらも窓枠にかかった足が見えた。どうやら最初は龍太郎のようだ。
「ああ!もう、しょうがねぇ!やってやるよ」
龍太郎は両手で頬を強く叩いてから飛び降りる。
「いくぜ!師匠!キャッチミスったら一生呪ってやるからな!」
その直後龍太郎は完全に宙に浮いた。
「うおおおおおおお!」
わたしは気絶した札花の横にし、龍太郎の着地地点に合わせる。
「オーライ。オーライ」
「オ〜ライじゃねぇ〜!」
龍太郎はそうツッコむとわたしの腕の中にちょうどおさまる。
「ふう、なんとかなったか」
龍太郎は全てをやり切ったかの如く白くなる。
「やべー・・・」
どうやら気絶はしていないようだ。わたしは白くなった龍太郎を放っておいて今度は霊太のキャッチに入る。
「おーい!次は霊太だぞ」
わたしは受け止めるため身構える。それに霊太はツッコむ。
「いや、明らかにやばいでしょ!これ!」
だがそううだうだと言ってもいられない。わたしは扉が開く音を聞き取る。
「おい!もう審問官が部屋に来るぞ!ジャンプだ!ジャンプ!」
霊太は涙目になりながら足を窓枠にかけた。
「絶対落とさないでくださいよ。師匠」
霊太は宙を舞う。
「うわわわわわわわわぁ」
わたしは霊太の下に入る。
「キャッチミスったらごめんな」
「今言うな〜」
わたしは無事に霊太もキャッチした。わたしは気絶している札花を担ぎ、二人を連れて病院の敷地からの脱獄を試みる。しかし・・・
「おっと・・・追いかけっこはもう終わりだぜ」
そこには見覚えのある奴らがいた。その周りに多くの審問官を従えている。
(たしか、札花に黒い液体を渡した人物か)
そこにはコワモテの男が指をコキコキと鳴らしながら立っていた。わたしはその男を調べる。
「審問官幹部『栄光の手』宵 悪理」
「なんだ?知ってるのか!ああっ!お前、木間伊月じゃないか!なんで生きている。お前はアスタロト様が直々に殺したはず・・・」
「生きているのだから詰めが甘かったと言うことだ」
だが少々数が多いなこれ全て相手してたらキリがないぞ。
わたしはここで龍太郎と霊太二人をここから脱出させる選択をする。札花は今気絶している。二人が担ぐと逃げるのに足手纏いになってしまうだろう。わたしはそう考えた後二人へ告げる。
「龍太郎!霊太!ここからは別行動だ!二人にはこの紙を渡す。これを見て奴らのアジトを叩け!おれはこいつらを足止めする。札音とアスタロトはまだ完全には同化してない!やつの、アスタロトの計画を止めるんだ!」
その言葉に龍太郎が反応する。
「師匠!無茶だ!師匠はデッキもアスタロトによって奪われているだろ!死ににいくようなものだぞ!」
わたしはそれをなだめるかの如く言う。
「奴を、アスタロトを止められるのは同化が完全ではない今しかない。何。大丈夫さ。適当におとりを済ませたらここからわたしは札花を連れて撤退する。わたしの身体能力を見ただろう。あんなテロリストどもにわたしの脚力が負けるはずないだろう?」
そう言いながらわたしはアカシック・レコードリミテッドで審問官から読み取った情報が載った資料を二人に渡す。そこにはアジトの場所が載っていた。それに見て霊太が目を見開いた。
「師匠!どこでこれを!」
ああ、出どころを聞かれるか。アカシック・レコードリミテッドから抜き取った情報だから素直に与えたらマジックとでもいえばいいのかもしれないが、それをすると頭がおかしい人と思われるだろう。わたしは考えているとある設定を思い出す。
(そういえば二人には今休暇中にこの街に来ているって言っていたな)
そこでわたしは画期的なごまかし案が思いつく。
「お前らには休暇中と言っていたがそれは嘘だ。本当は危険な組織である審問官の調査をしていたのさ」
(まあ嘘だけど)
辻褄が合えば問題なかろう。その声に二人は感嘆の声を上げる。
「まさか、ここまで予測して・・・」
「すげぇ。師匠ってエージェントじゃんそれ!」
そしてわたしはあるものを渡す。と言うか、今から渡すものをこっそり今作った。
『創造』 (めちゃくちゃエフェクトを小さくして)
「二人ともこれを持ってけ!」
「このカード・・・」
「わたしの運命力のおかげかな。盗まれずに済んだカードがあったんだよ。これは君たちに大きく貢献するはずだ。持っていけ!」
二人はわたしの作ったカードを握りしめて返事をした。
「「はい、師匠」」
そしてわたしは言う。
「二人とも、行け!」
そうして龍太郎と霊太は審問官のアジトへ走って行った。それを審問官が追いかけようとするがわたしは道を塞ぐ。
「ここは誰も通さない」
そこに審問官幹部 宵悪理がわたしの方に進む。
「おお?なんだ?ファイティングポーズか?国内王者が無様だな。それでもカードプレイヤーか?」
宵悪理はまた一歩、歩みよる。だがわたしは今回殴りで人を止めるわけではない。わたしは宵に向かって言葉を放つ。
「宵悪理。バトルしろ」
宵はその言葉が信じられなかったのか笑い出した。
「デッキを失ったカードプレイヤーがおれとバトルだと?まだ自分が強いと錯覚してんのか。強いわけねえだろ」
その言葉を聞いたとき、わたしは懐に手を入れた。その瞬間懐に入れた手の中にカードが生成される。
『創造』
もうラストスパートだ。魔力は惜しまない。わたしは創造に大量の魔力を使う。よし!できたな!そしてわたしは懐からデッキを取り出した。
「カードはここにある」
その光景に宵は驚愕する。
「さっきもカードを出していたが、お前の体は二重構造にでもなっているのか?」
「さあな」
わたしはしらばっくれる。わたしとしてもここはあまり追求されたくない場所だ。わたしは会話を修正する。
「わたしが勝ったらおとなしくお前らは警察のお世話になってもらうぞ」
わたしがそう言うと宵はにやけながら言う。
「おれはいいかもしれないがここにいる審問官全員を倒すまでここで待っているほど、温和な性格してないぜ」
「ならお前は勝負を受けるのだな」
「ああ」
案外いい落とし所じゃないのではないか。宵悪理とバトルすることでこの世界の道理を守りつつ、ルール違反にもならなそうな塩梅はこんなものだろうか。
「そうか、なら問題ない。宵悪理!わたしとお前でバトルだ。まあ、他の人には少々眠っていてもらうがな」
わたしはさらに魔力を使っていく。
「制限緩和『神のオーラ』」
今まで完全にシャットアウトしていた神のオーラを解き放つ。すると神のオーラにより審問官たちはバタバタと倒れていった。
(一応病院の中の審問官もやったけど無差別に放ったせいでここら無関係の人も倒れちゃったな。まあ、この騒ぎは外に気づかれてるだろうし、審問官が起きる前に病院の外側から警察も到着するだろう)
この光景を見て宵は動揺する。
(なんだこれは!?もしかして、これは運命力の具現化か?いや、でも運命力が実体として現れるなど伝説上の話だぞ!?しかもあいつは、このことを予感しているかのようだった。ありえない。もしかして、未だ誰も成し遂げていない運命力の操作を可能にしているのか?)
「ば、化け物!」
宵はすでに身体中から体液が溢れていた。宵から見たら木間伊月はもう得体の知れない何かに見えた。だが宵はもう一度考える。
(待てよ?でもこいつはアスタロト様に一度負けている!もしかしてこの威圧感はただのブラフなのか?それにやつのデッキはアスタロト様によって奪われている。やつの持っているデッキはやつの主力でもないデッキだ。今のやつなら行ける。おれが殺せる)
本当はこの威圧感は運命力でもなく魔素の魔力なのだが魔素なんて知るはずもなくこの勘違いは修正されることもなかった。
「お、おれが殺せば、大金星だ!生きていた木間伊月の処理に東山札花の殺害もこなせるんだからな!」
そう言ってフィールドが展開される。
「構えろぉ木間伊月ぃ!」
「わたしはもう準備は出来ている」
そうしてわたしの新しいデッキでのバトルが始まった。
カード図鑑⑨
クリーチャーカード
名前 契約に縛られた公爵令嬢
種族 魔族
攻撃 100
防御 7000
召喚コスト 2
このクリーチャー防御が可能なら防御する。このクリーチャーは攻撃できない。このクリーチャーがバトルにより破壊されたとき、バトルしたクリーチャーを破壊する。
首輪は付いているが見えているところには傷はない。衣装も公爵令嬢さながらの衣装だ。しかし、服と素肌の境目からは青あざが垣間見え、隠れた箇所の傷を想起させる。このカードのイラストはステージの上にある台に立った公爵令嬢が写っている。そして小太りのおじさんがステージの上で公爵令嬢が紹介されているようなそぶりをしている。それをたくさんの客が見物していた。鉄の首輪をしてさながらその令嬢を商品として売っているかのようだ。ここでこのクリーチャーの元となったカードを見てみよう。
クリーチャーカード
名前 慈悲深き公爵令嬢
種族 魔族
攻撃 100
防御 7000
召喚コスト 2
このクリーチャー防御が可能なら防御する。このクリーチャーは攻撃できない。このクリーチャーの防御力をターンに一度だけ次の自分のターンまで半分にしても良い。このクリーチャーが自身の効果により防御力が減ったとき、山札から一枚をストックに置く。
このクリーチャーはプレイヤーの中で人気なクリーチャーであり、複数のイラストでカードが収録されている。一番最初に出てきたカードは見返り美人のような構図でドレス姿の公爵令嬢のイラストである。ここまで聞くと慈悲深きの前置きがよくわからないが、絵違いカードのイラストを見るとよくわかる。その中でも特に奴隷の手を取るイラストがある。そこには奴隷の手を取る公爵令嬢の姿と、何事かと駆けつけた奴隷商人が写っている。奴隷と公爵令嬢の間を仕切っていた鉄格子は壊れていて、公爵令嬢が壊したことが伺える。その時イラストに写っていた奴隷商人は契約に縛られた公爵令嬢のカードのイラストの奴隷商人と同一人物だと見受けられている。ちなみに手を取った奴隷はクリーチャーカード戦闘冥土のイラストになっているメイドの顔と一致している。他にも町娘の格好に扮して街を歩く絵など様々な絵とそれから垣間見える魅力からグレートオールドワンズのカードの人気カードになったのだ。そんな人気カードである慈悲深き公爵令嬢だが契約に縛られた公爵令嬢のカードのイラストでの服の下のあざは一体何があったのか?なぜあの奴隷商人がステージで大勢の人に公爵令嬢を紹介しているのか?誰にも真相はわからない。




