狂人は舞台で踊る
光に包まれた後、わたしは違う場所に居た。周囲の環境を見るとわたしが異世界に来たときから馴染みのあるものが無かった。
「魔素が漂ってないな」
周りを見る限り、自分の中に溜め込んだ魔素しかこの場には無かった。するとその言葉に返事が返ってきた。
「そうだネ。だってここは君のいた世界の外側だもん」
わたしはその方向に振り返る。するとそこには紫の髪に銀色のメッシュが入った胡散臭そうな男がいた。黒いスーツとシルクハットを被っているその男はここがさっきまでいた異世界の外側だと言う。わたしは周囲の魔素の有無からここの状況をあながち間違いではないと判断する。
「確かにあの世界の外だとすると納得はできるな」
大気の魔素を操れないとなると使える魔素が限られるか。少し魔素を節約しないといけないな。わたしは魔素を極限まで減らす省エネモードに切り替える。
「それにしても、もしかしたら来てくれないんじゃないかって冷や冷やしたヨ。せっかくの主役がいないんじゃ意味がないんだからネ」
「それはどういう意味なんだ」
わたしは聞き返す。
「あれ?おっかしいナ?招待状に書いてあったはずだけど」
わたしはその言葉を聞いてここに来た経緯を思い出す。あれのことか。わたしは招待状とやらを見る。
神々
おお、新しい神生まれてるじゃん!歓迎会やるヨー
参加 YES ・ NO (故障中なので反応しません)
断りの連絡がない場合、参加とみなします。
見ると、とてもひどい内容が書いてあった。強制参加じゃないか。そもそもわたしが手紙を見る間もなくここに飛ばされたし、断らせる気ないだろ。わたしはそこに立っている胡散臭い男をジト目で見る。
「いやー、そんな目でオレを見ないでヨ。ほら、仲良く仲良く。そもそも、オレらは君を歓迎するために来たんだヨ。そんなに警戒しないでほしいな」
わたしは胡散臭い男を見る。とりあえずは様子を見てみようか。手紙に神々と書いてあったが、神々が敵対するというと厄介なことになるかもしれない。わたしは男の話を聞くことにした。
「わかってくれた?じゃあ自己紹介といこうか。オレの名前はニャルラトホテプ。ニャルって呼んでもいいよ。よろしく、キマ」
わたしはニャルに挨拶すると、ニャルの少し後に続き、部屋を後にする。そして、歓迎パーティへと案内された。
・・・
「あっ!ちなみに服装とかは自由だから!そもそも人型じゃない神とかいるシ」
ニャルが色々と話をしているうちに大きな扉の前に着いた。わたしは扉の中に入る。
「さて!主役の入場だネ。急がないと。遅くなったからもうパーティははじまってるヨ」
「ここがパーティ会場か」
扉の先には広い空間がありどこかの王宮を思わせるような雰囲気があった。そしてどこからともなく食べ物の匂いが漂う。そして色々な神々の視線が集まっていた。
「結構豪華だな。誰かがこれ全てを準備したのか」
「そうだヨ。今回は、オレの上司みたいな神が準備したんだ。何より君が今神をしてる星はオレが面倒くさくなって放棄した世界だからネ」
さらっとトンデモ発言をした。
「ニャルが放棄したのか?」
「そうだヨ。まったく、RPGみたいな世界を作りたいって思ったのに、蓋を開ければ、魔素が世界を削る欠陥品だったからね。おかげで生命生まれないし・・・。とんだ、欠陥商品をつかまされたよ。でも君はそれすらも乗り換え、生命の創造を成し遂げた。しかも、たったの数千年で文明を築き上げた。君は生命の創造に関しては他の神にも類を見ないレベルで高いみたいだネ。あっ、別にオレはもう捨てた星だし、色々と気にしなくていいからネ」
ニャルはわたしを評価しているようだ。そんなことをしていると神々が集まってくる。その中で筋骨隆々な男がすごい勢いで近くにきた。その男は肩を掴んだあと、顔を寄せてきた。そして唾のかかる距離で言う。
「おう、お前。竜に興味あるか?」
筋骨隆々な男はそんなことを言ってきた。わたしは彼に返答する。
「ええ、何ならわたしはドラゴンを創造したこともあるが」
「マジでか!」
男はその話に食いつく。
「ああ、すまない。わしは、竜王と呼ばれているものでな!つい興奮してしまったわ!わしのことは難陀とでも呼んでくれていい」
わたしと難陀が話すとニャルが割って入ってくる。
「竜っていいよネ。普段はリソースが重すぎて使えないけど。世界に雑に放つだけで世界を混乱させてくれるから」
ニャルがいきなり突拍子のないことをいう。
「ニャルラトホテプ、お主わしら竜を馬鹿にしておるな!許さんぞ!粉砕して二度と復活出来んようにしてやる!」
「まあ、冗談だヨ。冗談!」
そのあと少しいざこざが起こったが、自業自得なので放っておこう。
・・・
そうして、あれから神々と話していると突然会話が止まる。周囲を見ると視線は一人の神の方向に向いていた。そこには一人の少女がいた。赤いドレスを着て青みがかった髪を束ねた少女は獲物を見定めるような目で見てきた。彼女は舌なめずりをしたあと言葉を発する。
「今回は我の招待に集まってくれて礼をする。我の名はアザトース。外なる神を統べるものにして万物の王。今回は他でもない新たなる神の誕生を祝う式典である。我が管轄にて生まれ、ついには神と呼んでもいい存在となっている。わずか数千年で非常に素晴らしい素質である。だが、それだけでは少々経験が不足していると思った」
神々がざわつく。どうやら想定外のことのようだ。わたしは身構える。
「なので我は考えた。これよりキマの神最終認定の儀を我アザトースの名をもって、開始を宣言する」
そう言うと、わたしの下に穴が空きわたしは落ちていった。




