狂信信者は布教したい3
「ここがルドル王国の王都かー」
ルドル王国は風竜の住むという山脈の東に位置していてその山脈から流れる大きな河川とそれによりできた豊かな土壌が魅力の国みたいだ。わたしは出発したあとメメントの船場から船に乗り、ルドルに広がるなだらかな河川を登っていると、内陸にあるルドル王国の王都サンユーロが姿を現した。
「見事ですね」
そのように言ったのは今回の旅に同行したエルフの一人アナシスだ。アナシスは今回来た中ではわたしをのぞいたらついてきた中で一番高い位についている。彼は交渉が得意なのですごく活躍してくれるだろう。
「確かにそうだね」
わたしは改めて王都サンユーロの街並みを見る。ルドルはこの河川による土の影響で農業も盛んに行われている。これだけ大きい河川だ。港は交易船で溢れ、王都の港にはこれでもかというほどの船が止まっている。この国はヒューマンの国だが、獣人やその他の種族も絶え間なく行き交っている。そして極め付けは港の背後に見える立派な城。その荘厳な雰囲気のお城はこの国が栄えていることを如実に表している。
わたしは船を降りたあと王城への馬車が用意されていたのでそれに乗る。そうしてわたしたちは王都に向かって行った。
王城についたあとは王様との謁見があった。
「よくぞ、ここ、ルドル王国へ来てくれた」
国王のジョン・ルドルと挨拶を交わす。
ここではアナシスくんが頑張ってくれた。話の中でわたしは街に興味を抱く。わたしは会談が終わると部屋に通される。
「・・・街か」
わたしは話の中で街について話しているのを見て街に行きたくなっていた。
(本当は抜け出すのは良くないことなんだけどね)
わたしはそう思いながら部屋から出て行った。
・・・
一方その頃ルドル王国王都サンユーロ地下では、何やら怪しい実験をしていた。
「ふふふふ、ははははははは!これでサンユーロは終わりだ」
茶色のローブを羽織った男が高々と笑っていた。そのとき複数の仲間がこちらへやってきた。男の笑顔は仲間の一言で崩れ去る。
「師匠、被験者が脱獄しました!」
茶色のローブを着た師匠と呼ばれた男は笑顔が消え、笑い声もやむ。教室で急に誰も喋らなくなったときの静けさのように静かになった。師匠と呼ばれた男はその静かさを破った。
「ああ、なんで計画が思い通りに進まないんだ。くそ、くそ!計画は順調な筈なのに、あああああああああああああああ」
師匠と呼ばれる男は男は目の前の机の足を殴ったあと、癇癪を起こし、魔法で仲間の一人を殺した。そしてその男は命令を下す。
「なんとしてでも捕まえろ!あの被験者が今回の作戦の肝だからな」
その師匠と呼ばれた男の仲間は被験者を探すため王都サンユーロに散らばって行った。まさに今何者かの策略が水面下で進行しているのだった。
・・・
出るとき門番に止められたが、 わたしは強い制止を押し切り街を観光していた。街並みは世界樹の近くとは全然違う風貌があるらしい。わたしは少し歩くと建設中の建物が目に入った。わたしが少しの間見ていると建設をしている人が話しかけてきた。
「おう、嬢ちゃんなんか気になることでもあったかい」
「あ、すいません。ただわたしは建設中の建物があったので目が入っただけで」
「建設中の建物が珍しいとな。身なりからしてもさては貴族のお嬢様かなんかか?まあ、初めての人が見たら興味深いのかもしれねぇが」
建設作業をしている人は建物について教えてくれた。
「ここら一体の建物は少々出来方が特殊でな。魔力の力で強度を補強してるんだよ。ここら辺は地震が多い地域でな石の建築が壊れないように補強したんだよ。だが面倒ごともあってな?ここは風竜の棲家から遠いわけじゃないだろ?だから魔力で限界まで強化して魔素が大量に含んでいる家をぽんぽん建てたらここが竜に襲われるかもしれないからな。だからちょうどいいあんばいに強化を調整したのがいまの建物ってわけだ。だからここら辺の大工は強化をよく使うから身体強化魔法がうまいんだぞ」
どうやら作り方が特殊らしい。わたしはそのあと雑談をしてから他のところにいく。
「じゃあな。嬢ちゃん!だが貴族様が一人で歩いているのは危険だからな。すぐに従者でもなんでもいいから連れてきた方がいいぞ」
それは出来ない。なぜならば、わたしは観光するために半ば強制的に脱走してきたようなものだから。
ちなみにマルタは現在王都中を捜索されている。
「わたしは強いから大丈夫。じゃあね、話に付き合ってくれてありがとう」
わたしは移動する。しかし、そこである人物に呼び止められた。
「見つけましたよ。マルタ様!」
「げっ、アナシス!」
わたしの行手にはアナシスがいた。アナシスに捕まったら王宮に連行されるだろう。まだ何もしてない。捕まるのはごめんだ。わたしは反対方向に逃げ、裏路地に入る。
「あ、待て!」
アナシスは今回強く追いかけてくる。そうしているとわたしは裏路地の曲がり角で人とぶつかってしまった。
「いてて」
目の前を見ると少女が転んでいた。髪は黒髪でボサボサだ。それに汚い。そして首には鉄の首輪がされていて鎖は途中で千切れている。そして身体中傷だらけであった。そして極め付けは・・・
「角・・・魔族?」
魔族は排他的な種族だ。まさかここで出会うなんて、でも状況を見るとまともな状況じゃない。それに・・・
「震えてる」
明らかに怯えていた。
「これでもうかけっこは終わりです。マルタ様って、あれ?」
アナシスが追いついてきたが今はそれどころではない。わたしは少女を安心させようとする。
「大丈夫。よしよし怖くないよ。お姉さんが来たからもう大丈夫」
わたしは少女を落ち着かせる。そうしていると茶色のローブの集団がこちらに向かってきた。おそらくこの少女に関係があるのだろう。少女はそのローブを着た集団たちを見るとわたしの後ろに隠れる。少女の震えがます。わたしはローブの集団に対して警戒を強めた。わたしは少女を少しでも安心させるためにやさしくもしっかりと握り返す。茶色のローブの集団はわたしに交渉を持ちかけてきた。
「その少女をこちら渡せ。その子の保護者はわたしたちでね」
わたしはさらに少女の手をぎゅっと握りしめる。わたしの手に少女の震えが自ずと伝わってくる。大丈夫。安心して。わたしはローブの集団から少女を庇うようにして言う。
「とても保護者には見えませんが」
「反抗期なんだ」
わたしはその言葉を拒絶する。こんなに怖がっているのに・・・。それに少女の姿や様子は今までいたところが劣悪な環境だと言うことを言葉に言わずとも示していた。
「この子は渡しません。怖がっているのに、渡すなんてことはしない!」
その言葉を聞いた瞬間ローブの集団はローブに隠していた獲物を取り出した。
「ならば力づくでも奪うとしましょう」
交渉が決裂した茶色ローブ五人がわたしたちに襲いかかってきた。




