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3.悪役令嬢は聖女として迎えられる

召喚されたアリシアは現状が理解出来ないまま王の間に案内された。アリシアが知っている建物と違い、王と言われている人も知らない人物であった。


「すまぬな。お主からしたら何が起きているのか解らないであろう。私はラッドフィールド帝国国王ビスマルクであるがお主の名を教えて頂けぬか?」


「えっ!私はアリシア・・・」


ここでアリシアは気付く。

『アリシア』『聖女』『ラッドフィールド』このワードは『本当の聖女は隣にいる幼馴染みでした』の小説と同じであった。


あの小説では召喚されたアリシアは聖女として歓迎される。そんななか誰にでも優しく接する王子ロードスの事を好きになり事ある毎にロードスに近寄っていった。そんなアリシアは聖女の仕事を一切せずにいた。いや、アリシアの能力は求められるものではなかったため聖女の仕事が出来なかったのだ。

そんなある日、とある事件の発生により王子の乳母の娘である幼馴染みのシンシアが聖女の力に目覚め事件を解決する。これによりアリシアはシンシアが聖女であることを知って幾度もシンシアを害しようとしたが、全てシンシアを慕うもの達によって失敗する事になる。

そして運命の時が来る。スタンピードによってアリシアは魔物に喰われシンシアが聖女の力でスタンピードを鎮圧する事で本当の聖女がシンシアだと解り、最後はシンシアとロードスの結婚式で話が終わる。


確かにこの小説の悪女もアリシアと書かれていた。

だからといって同一人物だと誰が思う。


(えっ!?)


(ちょっと待って!?)


アリシアはあることに気付く。

こっちのアリシアは『魔物に喰われる』と言う結末であった。前の世界は『離島で強制労働』であったため断罪レベルは明らかに此方の方が段違いであった。


「アリシアよ?」


(しまった!)


アリシアは幾度も国王陛下から問い掛けられている事に気付いた。

頭の中の整理に集中し過ぎて国王の問い掛けに気付かなかったのである。

何回問い掛けられたか解らない。まさか召喚されて早々に不敬罪でバッドエンドなんて冗談ではないとアリシアは国王陛下に謝罪の言葉を述べた。


「構わぬ。突然に呼び出されて混乱するのは仕方がない事だ。どうであろう、少し落ち着いたようなら話の続きをしたいのだが?」


国王陛下が人格者で助かった。確か小説の世界でも悪者として描かれていたのはアリシアしかいなかった。


「はい。もう大丈夫です」


「実はこのラッドフィールド国の遥か北にはこの国を作られた始祖殿の結界によって恐ろしい魔物から守られて来ていた。だが最近になって結界にヒビが入ったのか魔物が強くなり発見される件数も増えつつある。始祖殿の予言では時期に結界が壊れると言われているため関係があると見ていてな。その始祖殿の言葉に『結界は聖女によって守られる』と伝えられている。更に『聖女は召喚されし者と共に現れる』とも伝えられて来た。よって我が責任によって此度召喚の儀式を行うこととなり現れたのはお主であった。突然に呼び出されたお主には申し訳ないが我が国の民を苦しみから救いだしてくれぬだろうか?」


『はい。』


と言いたいがアリシアにはそんな能力はない。アリシアの能力は『見返り』が必要なのだから。だから、期待されてしまってはとアリシアとしては困るのであった。


「申し訳ございません。私個人としてもお助けしたい気持ちはあるのですが、何せそのような力がございません。期待はずれの返事を致しまして申し訳ないのですが、こればかりは無理かと思います」


「それについては心配することはない。この世界では必ず1つ特殊な力を授かっている。そして、召喚されたお主もこちらの世界にきた時に特殊な力を授かっているはずだ。召喚で訪れた者の力は非常に強力だと言われている。暫く特殊能力の調査を行ってから再度返事を頂けないだろうか?」


「解りました。ですが、私は聖女と言われるような事をしてきた事もございませんので期待されても困ります。それと先程の始祖様のお言葉の『聖女は召喚されし者と共に現れる』と言うお言葉ですが此は私が聖女ではなく、私のその能力と言う者が聖女となる者を見付け出すのかと思います。なるべくお答え出来るよう努めて行きたいと思いますがご理解を頂きたいと思います」


「解った。アリシア殿の推察も検証していこう。今日は疲れているであろうから部屋を用意してある。そこに簡単な食事も用意するので本日は休まれるとよい」


「お心遣いありがとうございます」


アリシアは第一王子の婚約者として鍛えられた渾身のカテーシーを行いその場を後にした。

アリシアは侍女に部屋まで案内されるとアリシア自身の公爵家の部屋よりも大きい部屋でソファーに座る。

アリシアは扉の方を見つめていた。

部屋を案内した侍女は不思議に思う。


「どうしましたか?」


「そろそろね」


侍女は余計に不思議に思った。

だが、次の瞬間に侍女は理解と共にアリシアに対し恐怖を感じていた。

アリシアが見つめるドアの方からノックされ男性の声で入室の許可を求められたからであった。

彼女からしたら私が予知したように思えたと思う。だが、アリシアとしてはただ小説の内容の通りだったでけであった。私は複数の侍女同室のもとで入室の許可をした。部屋に入って来たのは小説に書かれていた通りロードス王子であった。


「私はラッドフィールド国第一王子ロードスと申します。此度は突然の召喚による非礼を王家の者として謝罪せずには入られず突然の訪問をお許し下さい」


「いえ、気にしないで下さい」


「そのように言って頂きありがとうございます。突然にこの国に来ることになってしまい、色々と勝手が違い困惑されているでしょうから私の方で誠心誠意サポートをしていきたいと思います」


「あっ、いえ、本当に気にしないで下さい」


「えっ・・・」


「えーと、私が元いた世界と差程変わらないですので大丈夫です。其に身分あるお方が常に側におられますと心落ち着かず休まることが出来ません。もし、私の事を心配して下さるのなら専属の侍女を着けて頂けるだけで大丈夫です」


「それは・・・」


「それに私が本当に聖女とは思えません。ですが、得られた力でどのように皆様のお助けとなれるか解りませんが出来る限り国に貢献していきたいと思っております」


「・・・解りました。私の方で護衛騎士2名と専属侍女1名をお選び致しましょう」


「ありがとうございます。申し訳ございませんが、本日は色々あり頭の中も整理したいため、そろそろ休みたいのですが・・・」


私は『早く帰れ』と言う言葉を究極にやんわりとロードス殿下に告げる。


「これは申し訳ない。私としたことが失礼得たしました。それでは続きは明日にしたいと思います」


ロードスはお辞儀をすると退出した。


(うん!?)


(いま、『続きは明日』って言った?明日も来るって事?

確かに小説でも翌日もロードス殿下と一緒と書かれていたいたけど返事が違っても小説と同じ流れになるのね。と言う事はもしかしたら彼女とも会うことになるのかも)


私のロードス殿下の印象は天性のすけこましであった。あのような容姿で甘い言葉を掛けられれば誰だって勘違いする令嬢が出ても仕方がない。小説の中でもアリシア以外の女性がロードス殿下に好意を抱いていることが書かれていた。私だって小説の話を知っていなかったら惚れていたかもしれない。


アリシアは自室で食事を済ませると湯浴みの用意もして下さっていた。本当に何て良い国だと思うアリシアは誰かに叱責される心配をすることなく眠れる幸せを感じながら眠りについた。

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