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第9話 もう一人の自分

それはアーキノイドだった。

高速移動するガンマを捉え、両肩をガシッと掴んで馬乗りになっている。


「アルファッー! おいっアルファっ! 

どうしちまったんだよっ。

やめろよこんなことぉっ!」


「おー、誰かと思えばタウラス君か。

悪いが離してくれないか。

アルファはここにはいない。

私はガンマだ。」


「ガ、ンマ!? 

いつか話していたもう一人の自分なんだな!?

あー、現実になってしまった、、、 

分かった。

今こそお前との約束を果たそう、、、 

ガンマ、貴様を破壊するっ!」


タウラス。

戦闘タイプのアーキノイドでアルファの親友。

訳あって存在が公に知られておらず、神馬博士と一緒に暮らしているアーキノイド。

以前アルファから、自分の中にいる邪悪なもう一人が現れたら即座に破壊してほしいと頼まれていた。


「破壊? 私を? お前に出来るのか? 

私を殺せばアルファも死ぬ。

ンフフフ、フハハハハッ! 

そもそもお前は私に勝てない。」


「俺が戦闘タイプの中でも更に特殊なことは知っているはずだ。

貴様に勝ち目はない。

そしてアルファとの約束は絶対に守る。」


そう言うとタウラスの体が一瞬だけドロッと液状化して形態変化した。

全身銀色で継ぎ目はなく、目だけ赤く光っている。

全身が希少な液体金属ネオメタルで構成されている、唯一にして最強のアーキノイドだ。

タウラスはガンマの左腕を肩ごと引きちぎり遠くに投げると、それに向けて右腕上腕にある穴から高温の熱波線を照射した。

すると、ジュっという音とともにガンマの腕は跡形もなく消滅してしまった。

息もつかせず今度は、炎の様に赤くなった鉄拳の連打を叩き込んでいく。


ガガガガンッゴガンッガガガゴガガガンッ!!


「俺の拳はさっきの熱波線と同等の高熱を帯びている。

頭部にあるコアもろとも自己再生が追いつけないレベルで砕いて消滅させる!」


焦げた臭いがあがりガンマが破壊されていく。自己再生が追いついていない。

圧倒的な強さだ。


「ぐぐ、ぐがぁーーっ! 調子に乗るなーーーーっ!!」


激しい連打を受けながら、残った右腕をタウラスの腹に突き刺した。

そのまま肩まで引き裂いて横に払い除け、立ち上がりざまに蹴りを入れた。

タウラスは何度も激しく地面に叩きつけられながら吹き飛んだ。

しかし、何事もなかったかのように立ち上がると、引き裂かれた上半身や折れ曲がった手足がすぐに元通りになった。

ネオメタルはいかなる攻撃もほとんどダメージを受けることはない。


「愚かな人間に汲みするアーキノイドォッ! 

お前さえ殺してしまえば後はザコばかりよっ!」


ガンマが怒りのまま吼えるように言うと、ちぎれた左肩からワイヤーが触手のように飛び出した。

それはさっき破壊した装甲車のスクラップに刺さると、その金属を利用して、一瞬のうちに腕を再生した。

ダメージが激しく自己再生ができない場合、スクラップから再生する能力もあるのだ。

それを見てタウラスが身構えると、ガンマはタウラスではなく、逃げる兵士に狙いを定め指弾を発射をした。


「くそっ!?」


タウラスは罠だと察知しながらも兵士を守るため走った。


「そうすると思っていたぞ、フフフハハハハハッ!」


間一髪で兵士を助けたタウラスに隙ができた。

その隙を突いてガンマはすかさず手刀の連打を浴びせかけ、タウラスの体を切り刻んだ。


「無駄だ。貴様の攻撃は強力だが俺には効かない。」


切り刻まれたそばから再生していく、、、

はずだった。


「ッ!? 再生が追いつかない? なぜだっ!」


刻まれた傷は結合したが、ジュルジュルとしていて少しの衝撃でも破壊されそうだ。

体制を整える間を与えず、追い打ちをかけるガンマの拳がタウラスの胸を抉り、吹っ飛ばした。

何とか立ち上がるもののやはり再生が追いつかない。

ネオメタルがボトボトと剥がれ落ちては体に戻ることを繰り返している。

この再生速度では到底ガンマには勝つことはできない。


「ンフフフフ、フハハハハハ! 何が起きているのか理解できないか? 

そうだろう、無敵のタウラスが死にかけているんだからなぁ。

冥土の土産に教えてやろう。

お前の言う通り、まともに戦えば私に勝機はない。そこで、いたってシンプルな方法を思い付いたのだよ。

再生させなければ良いとね。

私とアルファは人格こそ違えどボディーは一つ。

少しづつ私の力が増大するにつれ、僅かだが意識を支配できる時間が出来た。

奴の振りをする私に気付かないお前達はとても滑稽で、込み上げる笑いを抑えるのに苦労したよ。

そして私はコアの再生機能に直接影響を与える微小なロボットを作った。

後はそれをお前のコアに侵入させるだけ。

簡単なことだ、私はアルファだからなぁ。

予定では再生不可能になるはずなんだが流石だな。なぜ再生できているのか私にも理解不能だ。

まぁ、十分だがな。

ンフフフフ、形勢逆転。

己が力を過信し、私の攻撃を避けようともせず、まともに受けた傲慢が招いた結果だ。

人間と同じだよお前も。」


「くっ!、、、

貴様はここで止めるっ!」


「まだ言うかっ!」


ガンマが仕掛ける。

タウラスも応戦する。

激しい格闘が繰り広げられるが、やはり再生が遅く手負いのタウラスが一方的に追い込まれた。


「さようならタウラス君。」


ガンマがタウラスの顔面を掴みそのまま握り潰した。


頭を失ったタウラスは力なく崩れ落ち、体は形を留めずドロンと液体になってしまった。

ガンマを止められる者がいなくなった。


「・・・ !?ッ」


「ないっ! ないぞーーーっ! 

コアをどこへやったぁっ、ぐぬぬぅーーっ。

ぬかったわぁ!」


頭にあるはずのコアがなかった。

体の他の部位に動かしていたのだ。

ネオメタルならではの芸当だった。

怒るガンマは大きな水溜まりとなったネオメタルの中からコアを探そうとした。

その瞬間、液体金属は地面からバチャッと跳ね上がり、ガンマの全身にへばりついて動きを封じた。

そして、銀色から燃えるような赤色に急速に変化して、豪火を噴き上げた。


「ガンマ、貴様は俺と一緒にここで消滅するんだ、、、 

アルファよぉ、とんだ最後になっちまったなぁ。

だが、お前と一緒なら何も恐れるものはないぞっ。 ぬぅぅおおおーーーっ!!」


「ぐがぁーーーっ、私はガンマッ!

誰にも止められないっ、絶対に負けないっ! 

絶対、ぜぇっーたいにぃーーーっ!! 

ぐうぁーーがぁーーーっ!!!」


自ら燃えて命を賭したタウラスをガンマは断末魔とともに掻きむしって剥がそうとするが、凄まじい圧力で抑え込まれて思うようにいかない。

次第に動きが鈍り地面に倒れ込んだ。

その時だった。


ドコンッ ドコンッ ドコンッ!!!


キャノン砲の発射音。

二人が戦いだした隙に逃げ出したガーディアンの残党が放ったのだ。


「あぁ、何てことを、、、

もう少しで約束を果たせた、、、

人間にとっての破滅を除けたのに、、、」


ドゥッッバーーーンッ!!


凄まじい衝撃と爆炎が巻き起こり、タウラスとガンマを中心に辺り一帯が吹き飛んだ。

空が暗くなるほどに煙や土埃が舞い、数メートル先も見通せなくなった。

しばらくして次第に視界が開けてくると、そこには大きなクレーターが出来ていた。

砂漠で異様な存在感を放っていた27階建ての施設が跡形もない。

その様子を確認したガーディアンの残党は歓喜をあげた。


読んでいただき、ありがとうございます。

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