第8話 どっちだ!
本日、更にもう1話きました!!!
ガンマに激突したものはなんだっ!?
乞うご期待!!
「どうしたアルファ?」
グバッ!
突然アルファは神馬博士の首を掴み持ち上げた。
ニヤリと薄ら笑いを浮かべるその表情はアルファのものではなかった。
「ガハッ、 ア、、、アルファ、どうした?」
「ンフフフフフフ、、、 アルファ!?
いないなぁ。
知っているぞぉ、その計画。
実行させるとでも思っていたのか?
お前も人間の普遍な利己主義を杞憂していたではないか。
だからこそ私が生まれ、力を手に入れたのだ。
フハハハハッ!
自分の意志で動くのはやはり小気味良いなぁ。」
彼だ!
彼が現れたのだった。
彼は神馬博士に話すのではなく、内にいるアルファと話しているようだ。
「神馬博士、私はあなたの事をよーく知っているが、、、
初めまして、と言ったほうが良いだろうな。
しかし素晴らしい日だよ。
先程の会議では、愚かな人間が滅ぶべき理由を改めて確認できた。
お陰で忌々しいアルファの力を超えることができた。
そして私を消そうとしていた有能な技術者も、今この場で死ぬのだからな。
フハハハハハッ。」
「お、お前は、、、 何なんだ?」
「ンフフフフフ、んー、そうだなぁ、お前達はさっき悪だと言っていたな。
それが傲慢だとなぜ気付けない?
人間の立場からしか、個の立場からしか思考できない。
それが人間だ。
私は悪でも正義でもない。
人間もアーキノイドも超越した存在。
『ガンマ』だ。」
「ガ、ンマ!? アルファっ! 聞こえるかっ! 負けるな、アルファッ!」
「フハハハ、虚しいなぁ、あの世でこれからの顛末を傍観するんだな、さようなら、神馬はか、、、せ、、、」
・・・!?
急に挙動がぎこちなくガクガクと体がブレだすと、絞め上げていた神馬博士をパッと離した。
アルファとガンマが争っているのだ。
「んー、、、わ、、悪あがきはやめにしな、、いかぁアルファ?
まだお、、、 お前、に、、、 に、私を跳ねのけるち、から、、、」
「かか、解、、、急げ! 今すぐさっきのオペを実行するんだ! や、つの、脳波はガ、ンマ波、、、 き、危険、だ、、、」
「グッ、グガァーッ! 面倒な、、や、つめ。グァーーー!」
彼等は頭を抱えて両膝を落とした。
・・・・・・
動きがピタリと止まった。どっちだ?
「アルファ・・・ なのか!?」
「逃げ、ろ、、、」
「・・・!? アルファ! アルファだな!」
その時だった、メインラボ全体が青白く光った。
「・・・ッ!? こ、これは電磁バリアの一種か!?」
そして扉が勢いよく開いたかと思うと武装した十数人の兵士がなだれ込んできた。
ガーディアンだ。
その後からゲンスも入ってきて薄ら笑いを浮かべている。
「おやおや、喧嘩でもしたのかな?
暴走するAIとイカレた技術者の反乱を食い止めた。世界の平和ボケした連中にはそう伝えておくよ。」
「明け渡しは明日と言っていたじゃないか?
・・・ クッ、お前達にこの技術は渡さないっ!」
「ムヒヒヒ、とことん話の通じない奴だな君は。
君の許可などいらないんだよ。
じゃ、皆さん始末を頼むよ!
このフロアは電磁バリアを張ったから、大事な機器類が破損することはない。
盛大にやってもらって結構。」
ここに来た兵士の大掛かりな装備から、対アーキノイド用の訓練を受けた部隊だと分かる。
アルファのボディーは戦闘タイプでこそないが、現時点最高峰のテクノロジーが詰まっており、知能は他者が及ぶレベルではない。
実質地球上では敵うものはほとんどいない。
ガーディアンはここで目障りなアルファを潰して、もっと扱いやすいアーキノイドだけにしようとしているのだ。
「アルファッ! しっかりしろっ!! 逃げるぞっ!」
「ムヒヒヒ、どこに逃げると言うんだ。」
ドヒュンッ!
青白い閃光がアルファに当たり膜のように包みこんだ。
「ターゲットをストラクチャで捕獲! 」
兵士の一人が電磁捕獲ビームを放ったのだ。
一度捕まってしまうと内側からは脱出不能、更にストラクチャの中では電気的な活動が一切絶たれる。アーキノイドを確実に殺すための武器だ。
アルファはゴロンと床に倒れた。
博士がアルファに駆け寄ろうとする。
「撃てっ!」
ズガガガガガガッ!!
次の瞬間、アルファは分厚い装甲車も貫通する銃弾の集中砲火を浴びた。
博士は咄嗟にデスクの裏に隠れた。
ズガガガガッ!
「やめっ!」
あっという間にアルファは鉄くずとなってしまった。
・・・が、不自然に頭だけが傷一つなく残っている。
「あららら、頭が残ってますよ、ちゃんと狙って粉々のスクラップにしてもらわないとっ!」
ゲンスが苛ついた様子で言った。
兵士が銃を構える。
ブゥン・・・
突然アルファを覆っていたストラクチャが消失した。
「うわっ! ストラクチャが切れたっ!
誰だ切ったのは!?
は、早くストラクチャをっ!!」
間髪入れずストラクチャが放たれた。
しかし今度はアルファに当たるとヴワンッと音を立てて霧散してしまった。
もう一発・・・
ヴワン!
「ッ!? なぜだっ!? 早くっ! 早く拘束しろっ!!」
カタカタカタカタ・・・
アルファの頭とバラバラになった鉄くずが小刻みに震えだした。
次の瞬間まるで逆再生のようにボディーが形作られていく。
自己再生だ。
「うわぁーーーっ! 戻る戻るっ! う、打てっ! 打て打てっ! 絶対に再生させるなーっ!」
ズガッ! ズガガガガガッ!!
再び集中砲火が始まった。
再生しだしたアルファがまた破壊されていく。
・・・いや、再生速度のほうが速い!
破壊されたそばから再生していく。
アルファが一歩踏み出す。
「ダメですっ! 破壊できません。退却命令をっ! ストラクチャで捕獲できないと全滅しますっ!」
「うわあーーーっ! 退却っ退却っ! 私を守って逃げろっ!」
ゲンスの何とも身勝手な命令には誰も従わず、兵士達は我先にと逃げ出そうとした。
しかし、扉が閉まって開かない。
何とか開けようと扉に群がる者、アルファに発砲する者、他の出口を探す者、戦意喪失した兵士達は混乱を極めている。
「ンフフフフフ、フハハハハハッ!
愚かで弱く醜いなぁ、これが対アーキノイド部隊!? 逃げる!?
私の腹の中にいるのに!?
笑いが止まらんなぁ、フフフフ、ハハハハハッ!」
ガンマだ!
ここに居る人間の悪意がガンマの力を増幅させアルファを抑え込ませたのだ。
ニヤリとしながら嘲笑していたガンマだが、徐々に表情をこわばらせ冷徹な目つきになり、ゆっくりと兵士達を見回した。
次の瞬間、ガンマが兵士達の視界から消えた。
ガンマの動きは普通の人間が到底反射できる速度ではなかった。
いかに訓練された兵士でも生身の人間になす術はない。
ズバッ! ドガドガガッドスッ!
一瞬の出来事だった。
兵士達が逃げ惑い叫んでいた騒乱が一転、無音となり動かぬ骸だらけになってしまった。
ゲンスだけが恐怖にぶるぶる震えながら立ちすくんでいる。
「あーぁ、みんな死んでしまったなぁ。
ボディーに備わっている電磁パルスで捕獲ビームは無効化した。
その位は当たり前としておくべきだったなぁ。
並みの屑アーキノイドと一緒にしてもらっては困る。
お前、、、 悪意に満ちている。
私には人間の悪意が分かる、手に取るように分かるんだ。
しかしそれは嫌いではない。」
「き、嫌いじゃない?
私も嫌いじゃないですアルファさん。
命令されて渋々ここに来ただけなんです、ハイ。
何でもしますから命だけは助けてくださいっ!
あっ、あなたと博士にはここをもちろん継続してもらって、これまで以上に支援金を拠出します。」
そう言って両手を上に挙げた。
目は泳ぎ冷や汗がだらだらと垂れている。
「いー話だねぇ。でもお前、今何考えてる?
時間稼ぎ?
私にはお前の仲間が大勢殺されにここへ向かって来ている音が聞こえているぞ。」
ゲンスの震えが一層激しくなった。
「フハハハハハッ。
いくら来ても無駄なんだがなぁ。
神馬博士、もう少し待ってくれ、今からこのビルにいる愚か者どもを一掃して、それからゆっくり君を殺すことにしよう。」
上階から大人数の騒々しい足音がしたかと思うと、扉が爆破され吹き飛んだ。
「このクソアーキノイドめっ!!
外は包囲されてるんだ。
緊急事態は既に伝達済みだよ。
何人か殺して図に乗るな!!
じゃあな!」
そう言うとなだれ込んできた兵士の方へ向かって駆けだしたが、ガンマの手刀が脳天に落ちる方が早かった。
ズガガガガガガガッ!!
再びガンマに向けて集中砲火が始まる。
しかし破壊より再生が大きく上回るガンマは気にも留めずそのまま大勢の兵士に突っ込んでいった。
ガンマの攻撃は体当たりをするだけのシンプルなものだが、そのスピードは時速で言えば二百キロを優に超え、壁や天井を縦横無尽に弾け飛ぶ。
飛んでくる金属の塊に兵士達は反応すら出来ないまま一瞬のうちに粉砕されていく。
メインラボがある地下11階から地上階までの各階には無数のフロアがあり、ガーディアンが一般スタッフを連行した後に占拠していたが、ほとんど抵抗できないまま一瞬のうちに全滅。
ガンマは地上階に到達して外に姿を現した。
返り血でどす黒い赤色に染まったその姿は、存在するのであれば間違いなく悪魔の様相だろう。
ゲンスの言っていたとおり、このビル全体をガーディアンが包囲していた。
正面のエントランス付近にアーキノイドを無力化し捕獲するコンテナがおかれ、500メートルほど先には山でも吹き飛ばせそうなほど大きな銃砲が鎮座しておりガンマに向けられている。
「そこのアーキノイド。おとなしく投降しろっ! さもなくばこのキャノン砲で建物ごとお前を吹き飛ばす! 脅しではないぞ。
10秒だ。10秒のうちにそこのコンテナに入れ! 10・・・ 9・・・」
キャノン砲は3門、指揮官らしき人物がその横から拡声器で警告してカウントを始めた。
「フフ、フハハハハハハハッ! 面白い。
10秒もいらないぞ。
お前ら人間ごときが何千、何万集まろうが、どんな武器を持ってこようが私は止められない。
ここに来てしまったことを後悔して死んでいけっ!!」
そう言いながらガンマは大群に突っ込む。
狭い建物の中より更に速い。
瞬く間に兵士達がなぎ倒されていく。
ガンマの言うとおり、どれだけ人数が増えても結果は見えているようだった。
ズガガッ、ズガガガガガッ!
銃撃も効かない上に混乱の中で放たれる弾丸は仲間の兵士に突き刺さる。
周囲は修羅場と化し、もはや全滅を待つのみとなった。
ヒュッ!
その時ビルから何かが飛び出した!
ズダダーーーンッ!!
その『何か』はガンマに激突して諸共激しく吹き飛んだ。
読んでいただき、ありがとうございます。
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