第6話 試力し
・ ・ ・ 両者はじっと動かない。
敵なのか!? 見方なのか!?
このままでは埒があかないと沈黙を破ってレイが口を開こうとしたその時、ロボットは腕組をスッと解いて右手でレイを指さした。
パシュッ!!
ダムドがレイの額の前で素早く何かを掴んだ。
ロボットの指だ。手をこちらに向けた時に発射したのだった。
解除していない状態のレイに当たれば無事ではなかっただろう。
「レイ、どうやら彼は味方ではないようだ。彼を捉えてから色々聞きだす。」
「そうみたいね、油断したわ、、、、、、解除。」
レイの眼から青い光が漏れる。
ロボットが両手をこちらに向けた。
瞬時にレイは横に飛び退き、ダムドは突っ込んでいく。
パシュパパパパパパパパパッ!!
指弾がマシンガンのように切れ目なく発射される。ダムドは先ほど掴んだ指弾の威力データから、多少被弾しても自分が破壊される前に捉える事ができると判断した。
突っ込むダムドに指弾が集中する。
バキバキキンッ!!
さっきより威力が増している!?
すぐさまダムドの装甲が破壊され始めた。
ダメージが広がり態勢が崩れる。
思うように距離を詰めることができない。
持ちこたえられない。
「アンノウン」
レイはネオメタルをダムドとアーキノイドの間に展開して指弾を弾いた。
ダムドは態勢を立て直して走り出し、分厚い銀の壁となったネオメタルにそのまま突っ込んだ。
ダムドが当たる瞬間、銀の壁はアーキノイド側に爆裂して雨のようにアーキノイドに降り注ぐと、今度はアーキノイドの体を繭のように包み込み、動きを封じた。
距離を詰めたダムドがロボットの首を掴む。
「あなたを包んでいるネオメタルは内側から100トンの衝撃があっても脱出できないわ。」
「終わりだ。色々と聞きたいことがある。答えてもらおう。」
アーキノイドは不敵に笑った。
「あー、、、ハハハッ、これで捕まえたつもりかい?」
ダムドが異変を察知した。
掴んでいる首が高熱を帯び出したのだ。それも金属が溶解しだす程になっていた。
ズガンッ!!
激しい爆裂音と共に、銀の繭を突き破ってロボットの手刀がダムドの腹に刺さった。見るとロボットの体全体、特に手刀が真っ赤に燃えるような色をしている。
ロボットは全身を発熱させていた。
高熱によりネオメタルの強度を落としたのだ。
通常の金属よりも熱の耐性が高いネオメタルが、いとも簡単に破られるとは。
このロボットが異常なのだ。
ダムドはそのままなぎ倒されて吹っ飛んだ。
右腹が抉られ欠損してしまい、これではまともに戦えない。
「まさかっ!?」
間髪入れずレイが飛び掛かる。
レイの全身が銀色に覆われていく。
接近戦におけるレイは、ネオメタルが体表を覆い、守りは堅く打撃はとてつもなく重くなる。
ロボットを抑え込んでいたネオメタルもほとんどがレイに戻った。
ドカッドカカッ!
朱里から体術を叩き込まれているレイは相当な実力のはずだがアーキノイドは赤子と遊ぶかのようにその攻撃を軽く受け流す。
歯が立たないのか・・・
ゴガンッ!
「!?ッ・・・」
レイの重い蹴りがロボットの右腕にクリーンヒット。腕がへし曲がる。
ゴンッ!!
今度は顔面に銀の拳がクリーンヒット。
いなされていた打撃が急にロボットを捉えるようになった。
「君、なかなかやるねー。」
ロボットはそう言って後ろに素早く飛び退きレイと距離を取った。
右手はだらりと下がり、右足を引き摺っている。
「あー、結構やられたな! 僕の体にしつこく張り付いてるこのネオメタルが振動波出してるんだね。で、右腕と右足の駆動部分をその強力な振動で内部破壊した。
そりゃ急に手足が動かなくなる訳だ。しかもやられるまで気付かなかったよ。」
レイが一気に畳みかけようとした。
「うわっ! 待った待った!! 参った、降参だ。もう何もしないから。敵じゃないんだ。」
アーキノイドの慌てた様子を見てレイは一旦攻撃をやめた。
「そっちから攻撃しといて敵じゃないってどーゆーこと?」
「改めて、申し訳なかった。君達に託したい物があって、それを任せられるか、試させてもらったんだ。
僕の名前は『タウラス』。
淘汰戦争があってからずっとここにいる。
初期のアーキノイドだ。久々に体を動かしたよ。」
「力試しとは到底思えない攻撃だったが。」
壁際で動けずにもたれかかっているダムドが警戒した。
「そうかい? 僕はこれっぽっちも本気出してないけどな。現に二人とも生きているじゃないか。
最初に彼女の額を狙ったやつもさ、攻撃を浴びた君なら分かってるだろ? 威力が弱かったこと。
彼女は再生系。
だから万一当たっても自分で治癒出来る程度にしたんだ。
まっ、相当痛かったかもだけどね、ごめん。
それとアーキノイドの君はそれ位どってことないよね?
中枢のコアは避けて攻撃したつもりだけど。
右胸だよね!? コア。」
指弾により激しく損傷したダムドだが、タウラスの言う通り右胸だけは攻撃されていなかった。今の短時間でコアの場所を見抜き、乱射していたようで実は計算された軌道だったのだ。
そうこうしている内にタウラスの右腕と右足は回復した。アーキノイドの中でも自己再生が出来る者はそう多くない。
「ひとまずレイ君、ダムド君を修復してあげてくれないか?
ちょっとやりすぎちゃったから自己再生だけじゃダメみたいだ。必要な金属はそのスクラップを使ってくれ。時間がなくなってきた。」
壁の一画が開いて1体の人型アーキノイドが現れた。
一瞬焦ったが動かないスクラップだった。
レイが重傷のアーキノイドを修復するには、スクラップなどから得た金属を部品に造形して修復する必要がある。
「!?ッ・・・」
「何で私達の名前を知ってるの?」
「そうだよね、色々説明が先だね・・・
僕の名前と、ずっとここに居ることは話したね。
それとさっき、君に衝撃波を送ってすまなかった、初めてのお客さんだったから、いるよって挨拶のつもりだったんだけど、加減が上手くいかなくて。」
「でもどうやって、、、」
レイは気になっているようだ。
「あー、それはまぁ僕が始まりと言っちゃ始まりだからね、ネオメタルの。」
「えっ!? ネオメタル? ネオメタルを使うアーキノイドがいたの!?」
「使うというか、僕自身がほぼネオメタルだよ。」
レイに続いてダムドも驚いた様子で話した。
「過去にアルファが、体のほとんどをネオメタルで構成したアーキノイドのプロトタイプを開発していたという話は知っているが、失敗に終わったはずだ。」
「そ、表向きはね。
実際はこのとおり、バッチリ完成してたんだよ。
ただ、絶対に人間はこの技術を軍事目的で使うと判断した、僕を開発した博士が、わざと一時的にプロジェクトを失敗させて、僕をこの事実ごと隠したんだ。
君の振動波、初めて見る使い方だったけど、ざっくり言えばネオメタルの分子をぶつけ合って振動を発生させている。
それを真似事しただけだよ。
レイ君みたいに上手に扱えなかったけどね。
自分以外は出来ないと思い込んでいたんだろ?
恐るるは常識というやつだ。
知らぬ間に蝕まれ、身動きできなくなっているものだ。
既成概念に囚われてはいけないな。
そしてここはダムド君のデータベースのとおりアルファの拠点の一つだ。
しかも君達が探してるエクスクルーダーもここで作られた。」
「私達がそれを探してるって事まで知ってる。
それにあなたの声、どこかで聞いたことがあるような・・・」
ダムドの修復をしながらレイは腑に落ちない様子で言った。
「そう、僕が話しかけた。これのおかげだよ。」
そう言うと部屋の至る所で青く光る何かが浮遊しだした。
レイの耳元辺りからも一つふわりと離れ、タウラスの手のひらに落ちて消えた・・・
いや、格納された。
「こいつらは僕が作った超小型の探査ロボットで少し前から君達と一緒にいる。
『ターミナルに向え!』って聞こえたのはこのロボットを通して僕が言ったんだ。」
「やっぱり夢じゃなかったのね。でも監視されてたなんていい気分じゃないわね。」
「そりゃそうだよね、こそこそ探ってすまない。」
そう言ってタウラスはニカッと笑顔を作ったがレイは怪訝な面持ちのままだった。
そんな様子を見て苦笑いとなりながらタウラスは咳払いをして仕切り直した。
「で、全盛期はAIの企業として認識されていたアルファだけど、もとは医療用の機械を開発する企業だった。
そしてここは拠点の中でも創業当時からずっと医療の進歩の為だけに開発をしていた拠点だったんだ。
崩壊直前ではナノレベルの医療用ロボット開発をメインにしていた。
この小型探査ロボットもそれらの技術を応用したもの。
だけどサイズはナノレベルまで小さくないけどね。」
ダムドの修復が完了した。
「君達も知っている一番初めに意識を持ったAI『アルファ』もここで誕生した。
ナノレベルの開発は人間だけでは思うようにいかなかったからAIを駆使しながら進めていたんだけど、ある日シンギュラリティに達して自我が目覚めたんだ。
これが『アルファ』。
名前は企業名からとった。それからはアルファと一緒に開発していたんだ。
今では嘘のようだけど淘汰戦争が始まる前は人間もアルファ達アーキノイドも同じベクトルで平和と共存を理念としていた。
しかし、ある一つの出来事で全てが狂ってしまったんだ・・・・・
本日の連続投稿6話目となりました。読んでくださっている方々、どうもありがとうございます。自分の作品が皆さんに読んでいただけるなんて、感動の極みで打ち震えております。
これからは、基本、週2回の投稿予定です。
ちなみに次は木曜に投稿予定です!頑張って書き進めねば、、、
皆さんに少しでも楽しんでいただけるよう頑張りますので、引き続き、どうぞよろしくお願いします。
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