第5話 侵入者
「アンノウン」
レイが呟く。
ゥ”---ン ………
微かに頭の中で鳴っているような、共鳴するような音がする。
ネオメタルが発する振動波がビル内部の壁や床を震わせながら這っているのだ。
ダムドの映し出す映像を頼りにアンノウンを操る。
レイの頬を汗が滑る。
地下4階………
5階……… 6階……… 7階………
………8階。
到達した。
「着いたっ! ダムド、着いたわ、もう一つ下だったらアウトだったかも。
後は制御チップを………………
ッ!?………」
「どうした? レイ」
「ううん………
何でもない、フロアで何か動いた気がしたけど………
気のせいみたい。
チップがどこにあるか教えて」
「了解した。
このユニットのほぼ中央にある1センチ四方の平たい部品だ」
ダムドはユニットとその中にある制御チップを拡大投影して示した。
レイは頷き、目を閉じた。
ゥ”---ン ………
アンノウンの振動波が小さな制御チップの一点に集まっていく。
パキッ!
「やったわ!」
二人の計画どおりであればこれでワームホールは発動しないはずだ。
「リミット………」
レイの目から光が消えた。
アウェイカーをリミットしたのだ。
リミッターを解除した状態は意識の鮮明化と集中力が高まり続ける。
能力は比例して強力になっていくが体への負担も強く、一定の時間が過ぎるとリミット出来なくなってオーバーシュートしてしまう。
その為必要な事態でなければ基本は解除しない。
その直後だった。
バンッ!
レイの両手が床から激しく弾かれた。
「わっ!」と驚いた拍子に尻餅をつく。
「どうしたっ!?
レイ、大丈夫か?」
「痛ったーい…
信じられない。フロアから振動波が跳ね返されてきた。
やっぱり誰かがいるんだわ。
しかも、アンノウンと同じように振動波をぶつけてくるなんて。
私と同じネオメタルを使うの!?」
「そうか、何者かが居ることは間違いなさそうだな。
ここで何をしているのだろうか………
制御チップの破壊を阻止しようとすれば出来たずだ、何故やらなかった………
我々を誘い込もうとしているのか………
ちなみに私の知る限りネオメタルは君ともう一人の人間しかデバイス化に成功していない。
かつて淘汰戦争でガンマを追い詰めた15人の強改造者の一人『ナレッジ』だ。
しかし彼は現在消息不明だ。
もし彼だとしたら君がフロアにアンノウンを伝播させた時に生体反応があって気付くはずだ。
だとするとおそらくアーキノイドである可能性が高い」
「生体反応はなかったわ。
敵か味方か分からないけど、絶対に何か知ってるはず。
突き止めましょっ!」
「私がダメだと言っても君が行く事は変わらないだろうね。一緒に来た時点で覚悟していたよ。
このフロアには侵入者を排除するワームホールのユニット、それに重要施設の中に何十年も居た何者かがいる。
今回は私も期待が勝っているのが正直なところだ」
「じゃ、決まりね!」
そう言ってレイは扉を開けようとした。
「待つんだ、私が開けよう。
チップを破壊したからワームホールは作動しないと思うが念のためだ。
他にもトラップがあるかもしれないしな」
ダムドがゆっくりと扉に手を伸ばす。
ワームホールは………
発動しなかった。
そのままトラップもなくすんなり扉を開けることが出来た。
「目的の最下層までは生体反応もなかったし、何かが動く気配もなかったわ。
この非常階段で一気に行けそうね」
「よし、それでは私が先に行こう」
ダムドが肩に内蔵されているライトで暗闇を照らしながら、二人は最下層へと降りていった。
途中一つ一つのフロアは、地下とは思えないほど巨大な空間で、アーキノイドをライン作業で製造する工場になっていた。色々なロボットを大量生産していたのだろう。
打って変わって目的の地下11階はボタンが付いたパネルやパソコンなどがあり他と比べて小さなフロアだった。
この施設の心臓部だ。
整然と機器が並ぶそのフロアに到着した二人に緊張が走った。
中央に人!?
がいて腕を組んでこちらをジッと見ている。
強改造者であるレイとアーキノイドのダムドには普通の人間には聴こえないような周波数の音も聴こえる。
二人はその者から漏れる微かな機械音を察知して相手がアーキノイドだと認識した。
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