第40話 激闘
「エクスプロージョン」
爆壊が呟くと周囲の空気がゴォーッと音を立てて爆壊に集まりだした。背中の肩甲骨辺りに1センチ幅の細長い切れ込みができると、そこに吸い込まれていく。
爆壊の起こす爆発の正体は、超小型の高性能水素爆弾なのだ。
大気中の水分を集め、そこから水素を作ると、瞬時に爆弾が体内に作製される。
それを見えない程の速さで手足などから発射する。
そして任意のタイミングで爆発させる。
これがカラクリだ。
今度は爆壊の両前腕がパカッと開き、そこから何かが大量に飛び出してきた。
超小型爆弾だ。
それは、サンドボックスをビッシリと覆い尽くすと赤色の点滅を始めた。
逃げられないよう相手を抑え込みながら最大爆発力で爆破する。
自分も確実に吹き飛ぶ事必至の大技だが、これを放つ張本人の爆壊は、どうやって自分の身を守るのだろう。
そして新佐のサンドボックスは耐えられるのだろうか。
「さぁ、これが俺の最大爆発力の技だ。俺以外は全て木っ端微塵になる。なかなか見込みのある使い手だったが相手が悪かったな」
そう言うと爆壊の背中がバカっと開き、中から分厚い鋼鉄のプレートが何枚も出てきた。
それは、一枚一枚が石膏で体をかたどったようになっていて、爆壊の体にオートシェイプ(磁力や分子レベルの結合・反発などを利用して自動的に造形すること)で張り付いた。
爆壊は頭から足の爪先まで分厚い鋼鉄に覆われ、鉄でできた岩山のような見た目となった。
「味わえっ!」
爆壊が力を入れた瞬間、大量の超小型爆弾は一斉に赤く点灯し、二人を中心に大爆発を起こした。
途轍もない爆風や熱波が吹き荒れる。
地面には大きなクレーターがドコンッとでき、辺りは爆煙に包まれた。
爆壊の言う通り、全てが木っ端微塵になる破壊力だ。
………爆煙が晴れてくる。
薄っすらと見えてきた影は一つだった。
そこに残っているのは………
爆壊だ!
先程の分厚い鋼鉄のプレートは全て吹き飛び、体全体に欠損や火傷がある。
強力ゆえにやはり諸刃の剣なのだ。
そして、新佐のサンドボックスは………
影も形もなくなっていた。
二人とも同程度の爆発を喰らったかのように見えたが、実際は一つ一つの爆弾が、新佐が中心になるよう整されていたのだ。
「あー…キツイ……… この技を出させるとはたいしたやつだったよ。アームドの新佐だっけ? 覚えておくか」
………ッ!? 気配がする………
爆壊が半ば呆れ顔で言った。
「って、どうやって助かった?」
振り向くと新佐が無傷で立っていた。
「今のはヤバい技だった。自慢のサンドボックスが跡形もないとはね。
………地面の中だよ。サンドボックスに閉じこもったと見せかけて、下に穴を開けて逃げたんだ。
これはもうだめな雰囲気プンプンだったからね」
「そうか、さっきの受身の中での反撃といい、今回の脱出といい、センス抜群なやつだな貴様。
だが戦況が変わったわけではない。
玄もそんなに長くは保てないから、もう終わりにさせてもらうぞっ!」
そう言って爆壊は新佐に突進してきた。
背中からまた鋼鉄のプレートがいくつか飛び出し、両手足にオートシェイプした。
一気に間合いを詰めた爆壊の分厚くなった拳が新佐に振り下ろされたが、すんでのところでマグネットデバイスの反発を発動させてかわす事ができた。
拳はそのまま地面に突き刺さり、それと同時に爆発も起こった。
「ボムアタック。
打撃と同時に爆発を起こす。
覚えておけよ。
一撃でも受ければ致命傷だ」
「おーおー、おっかねぇ。
渾身のパンチもダメージがないし、動きも封じることができない。その上、殴られたら致命傷って、どうしたらいーのよ俺は」
「諦めが肝心よ」
爆壊の猛攻が始まった。




