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第39話 あり得ない硬さ

 そう言って爆壊は呟いた。


(げん)


 爆壊の顔にスッと線が現れると、それは紋様を描く様に動きながら首を伝い体に浮かび上がった。


 爆壊は片手を新佐に向けた。

 その動きは先程までとは打って変わって滑らかになっていた。

 砂鉄が取り除かれたわけではない。

 砂鉄に蝕まれていてもなお動けているのだ。


 爆発が来る。


 避けられない。


 新佐は咄嗟に砂をすくい上げて爆壊に投げつけた。その砂は砂鉄の礫(つぶて)となり、新佐に向けられた爆壊の手に当たった。


 その瞬間、新佐の遥か後ろで大爆発が起こり爆風と熱波が辺りに波及した。

 破壊力が桁違いになっている。

 礫を当てたことで、僅かだが軌道をズラして回避したのだ。


 その隙に新佐は起き上がり、爆壊と距離をとった。

 胴の傷はなんとか塞がりはしたものの、ダメージは大きい。


「やっと玄のお出ましか…… それじゃあ俺ももっと気合い入れていかないとな」


「気合いを入れるのが少し遅かったようだな」


 爆壊がそう言うと、バンッという爆発音と共に足元の地面が割れ、視界から爆壊が消えた。

 砂鉄の効果があってもなお格段に速くなっている。


 新佐がその情報を認識するよりも早く、爆壊は新佐の背後に回り、背中に手を当てた。


 至近距離、しかも玄状態のあの破壊力で爆破されたら塵も残らない。


 新佐が背後を取られたことに気付き、爆壊が勝ちを確信したその瞬間………


 新佐が物凄い勢いでぶっ飛んだ!

 爆壊の爆発ではない。

 反発する様に爆壊も同じ勢いで逆方向にぶっ飛んでゴロゴロ転がった。


 起き上がった爆壊は新佐を睨みながら状況を把握しようとしている。


「何が起こったのか分からないって顔だな。

 磁力の反発だよ。俺は戦いの初手は砂鉄を使う。

 そうすると、ほとんどの相手は俺が砂鉄使いだと思いこむのさ。

 けど、俺は砂鉄使いだなんて一言も言ってないぜ。俺のデバイスはマグネット。

 磁力を操る力だ。

 アーキノイドみたいな金属野郎はもちろん。デバイス化した改造者にとっても俺の力は厄介なのさ。

 気をつけろよ、反発もあれば、引力もある。

 知ったところでどうにもならないけどな」


 そして、新佐が地面に右手を付くと大量の砂鉄がその腕に吸い上げられた。

 特大のメタルインパクト(鉄の衝撃)を放つつもりだ。

 次の瞬間、新佐は助走も踏み込みすらもなく、今度は爆壊に向けてぶっ飛ぶ。

 それは走るというよりも急激に引き寄せられるような不自然な動きだった。


 それと全く同時に爆壊も、突進してくる新佐に引き寄せられるように、体勢をガクンッと崩しながら同じ勢いでぶっ飛んだ。

 これが新佐の言う引力だ。

 爆壊は自分の意志とは無関係に強力に引き寄せられている。


 思い通りに突進する新佐。

 不意に操られるように引き寄せられる爆壊。


 爆速で引き寄せられる二人の間合いが重なった時、新佐の特大メタルインパクトが追突の加速度も伴い、爆壊のデバイス化された硬い腹に突き刺さった。


 そのまま振り抜く。


 爆壊は吹っ飛んだが、すぐさま引力によって新佐に引き寄せられた。

 今度は新佐は動かないまま、戻ってきた爆壊をさらにメタルインパクトで迎え撃つ。

 爆壊はゴム紐が付いたボールのように反発と引力で行ったり来たりを繰り返し、その度に殴られ続けた。


 しかし、またもや新佐を悩ませたのは爆壊の硬さだった。

 特大メタルインパクトで連打を浴びせてはいるものの、ダメージを与えている手応えがないのだ。

 重戦車のように硬い装甲のデバイスに新佐は驚きを隠せなかった。

その上、玄状態での圧倒的な自己再生の前に多少のダメージはないに等しい。


「クソッ! 何なんだよこの硬さ。あり得ねえだろーがっ」


 ボコボコにやられながら爆壊が自分の能力ついてかなり話しづらそうに話しだした。


「お前が自分の能力を…グフッ… 教えてくれたから俺も一つ…ブハッ…… 忠告してやるぞ。

 端的に言って俺は…ウグッ… 硬い。

 なぜって!?

 そりゃ自分の爆弾で自爆しないためなんだが……ガハッ…… まぁ()()()()()()()


「爆弾!? やっぱりな。この手品みたいな爆発はボンバーマンが爆弾投げてたってことなんだな」


 そして爆壊は防御することを不意にやめると、引力のタイミングに合わせて爆発をおこした。

 二つの推進力が合わさり、想定を遥かに超えたスピードでタックルを仕掛けてくる爆壊を新佐は避けきれず、まともに喰らってしまった。


「クッ、まずい、奴が自由になっちまった」


 新佐が吹っ飛びながら体勢を整えて、爆壊の位置を確認しようとした時、背中が硬い壁のようなものにドンッと当たって止まった。

 目の前に爆壊の姿はなかった。


 死を意識させる気配が新佐を捉える。


 振り返るまでもなく後ろの壁は爆壊であることが分かった。


 硬い防御や攻撃力に特化し、もともと速さはない上に、砂鉄で動きを封じられているにも関わらずこのスピード。

 オーバーシュートの先にある玄は伊達ではなかった。


 この状況から脱出出来ないと判断した新佐は、爆壊の爆破に耐えたサンドボックスを最大限の力で作って、咄嗟に身を守った。


「また鉄の塊に閉じこもったか。いい判断だ。だがどっちが()()かな?」


 そして爆壊はサンドボックスをガッチリと掴んだ。








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