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第33話 ハッタリ

 その時、ゴゴゴゴッ! という地響きがしたかと思うと二人の足元から赤い二本の手が現れ氷雨の両足を掴んだ。


 氷雨を直接掴んでいるその手は凍ることはなくジュッと氷が溶ける音がした。


 手の主は新手のアーキノイドだった。

 そのアーキノイドは氷雨の足を掴んで持ち上げながら地面を割って勢いよく飛び出し、陽もろとも叩きつけた。


 地面が大きく陥没する。


 陽も激しく叩きつけられたがその弾みで氷雨の凍結から脱出することが出来た。


 全身が赤く染まったアーキノイド。

 近くにいると火傷をする程の高熱を帯びているため赤く変色していたのだ。


「これでお前の子守りは二度目だな。」


 アーキノイドから発せられたその声は貫地だった。


 二体のアーキノイドを同時に操っているのだ。

 アーキノイドは間髪入れずに倒れている氷雨に(あな)の開いた手の平を振りかぶった。


 ワームホールだ。


 ガオンッ!


 氷雨がいた場所は深く抉られた。


「やったか!?」


 しかしその瞬間、アーキノイドの腹からトロールアームが突き出た。


 氷雨は倒れていた体勢から驚異的な速さでワームホールを回避し、アーキノイドの後ろへ回り込んだのだ。

 アーキノイドは高熱を帯びていたにもかかわらず一瞬で凍りつき、氷雨が手を

 抜くと粉々に砕け散った。


「やはりワームホールは見切られているか。

 陽、次は二人で行くぞ。問答無用だ」


「くっ……… 分かってるっ」


「それと、これを受け取れ。

 小型電磁パルスだ。

 奴の動きを止めたら頭部にそれを押し当てる。

 そうすれば自動的に発動してガンマチップのみを破壊できる。

 詳細は俺達が生き残れたら話してやるが、奴を殺せば俺達はガンマと対峙することすら出来なくなる。分かったな」


「ああ!? どういうことだ?」


 貫地は陽の質問に答えず、次の瞬間氷雨と距離を詰めた。

 この戦いで貫地がメインボディーとして操るのは対強改造者用として造られた、このアーキノイドだ。

 無論、その能力は強改造者と同等、もしくは上回っている。

 更に人間は前方しか視認できないが、このアーキノイドは全方位を視認することができる仕様となっている。


 ガオンッ!

 ガオンッ!ガオンッ!


 両手にあるワームホールを連発する。

 そしてワームホール攻撃の切れ間には腹の中央に装備された電磁砲がブオンッという音を発し放たれる。

 いくら貫地が速いとはいえ、玄を使っている氷雨は貫地の想定を遥かに超えていた。

 下手な攻撃ではカウンターを取られ一瞬でやられてしまうだろう。


 そのため、半径3メートルは抉り取る程の攻撃範囲を誇るワームホールで、氷雨が避ける動作を大きくさせることで反撃しづらくさせ、瞬間スピードが速い電磁砲でその隙を狙い撃つ。


 大きな実力差がある相手にも有効な戦い方だ。


 貫地の思惑通り動作の大きくなった氷雨に電磁砲が当たる。

 しかし、氷の鎧の前ではバヂンッ! という音をたててことごとく消滅してしまい、ダメージには至らない。

 氷雨は攻撃を避け距離をとると、その一瞬の隙に氷で無数の何かを生成して両手で振り放った。


 鋭利な小型ブーメランだ。


 空に放たれた無数のブーメランはシュパパパンッと風を切りながらユーターンすると、貫地一点に全方位から降り注ぐ。


 避けることは出来ないと判断した貫地はワームホールと背中に装備された多連射追尾ミサイルで迎え撃つ。


 ガオンッ! ガオンッ!

 ガオンッ!


 ミサイルも一斉に放たれる。


 バシュッ! バシュッバシュッ!


 氷雨はブーメランを放ち続ける。


 シュパパパパンッ!


 防ぎきれない。

 いくつものブーメランが貫地のボディーをかすめだした。


 ズカカッ!


 三発のブーメランが命中してしまった。


 一つは腹に刺さり電磁砲を破壊。

 もう二つは両手のワームホール(こう)を破壊した。

 それを機に貫地は全身にブーメランを浴びてしまい足をすくわれて倒れてしまった。


「コアの微弱電気を特定したぞ。やはり頭だよな。吹っ飛ばしてやるよっ!」


 氷雨が貫地にとどめを刺そうと踏み込んだ時、陽が深く呼吸して集中力を高めた。


 すると、氷雨の背後から電磁バリアの円盤が猛スピードで飛んできた。

 初めにいとも簡単に避けられてしまった円盤だ。

 何処かに潜伏させていたのだ。


「無駄なこと。トロールアームっ!」


 ビキキッと音をたてて更に巨大化させた右のトロールアームで円盤を振り抜く。

 トロールアームは激しく砕かれるがそれを上回る速さで生成し円盤を消滅させた。


 強い………


 予想外の反撃すらかわされ万事休すかと思われたその時。


 円盤が消滅した衝撃による爆煙を突き抜けて、もう一つの円盤が現間髪入れずに現れた。

 初めに放っていた二つのうちのもう一つだ。

 しかし氷雨の反応は驚異的で左のトロールアームが振り抜かれる。

 また防がれてしまう。

 その時、陽が握っていた拳をバッと開いた。

 円盤のスピードがクンッと緩み氷雨のトロールアームは空を切った。

 そして、楕円形だった円盤は大きい布のように広がり氷雨を包みこんだ。

 氷雨の動きが止まった。


「ぐおお、これはっ!?」


「やっとでかい隙が出来たな。

 命がけでこの時を狙ってたのさ。

 それはストラクチャ。だが、そこらのストラクチャじぁないぜ。

 バリア系の俺が捕捉、攻撃用に強化したものだ。

 それに包まれたお前は相当な圧力と熱と衝撃に襲われているはずだ。

 相手が死ぬか俺が解除しない限りそれは離れない。アーキノイドであればボディーが耐えられず一瞬で粉々に圧縮される。

 しかし流石としか言いようがないよ。

 これをくらっても押し潰されず、更に動けるとはな」


 氷雨は振り払おうとするが全く抜け出せない。

 ストラクチャの中ではフロストヴェールの鎧を全開にして凌いでいるようだ。


「くそったれがぁ!」


 氷雨は怒り心頭して陽に突進した。

 ストラクチャの圧力と熱と衝撃の中にもかかわらず、まだ陽や貫地と同じ速さを保っている。


「くそっ、これでやっと五分かよ。だが勝ち目が見えてきたぞ」


 氷雨の拳が陽の顔面にまともに入ったが吹き飛ぶことはなかった。

 電磁バリアで覆われた陽は凍結の効果も受けない。


 陽は食らいざまに体を回転させ反撃の裏拳を氷雨の顔面に叩き込んだ。

 これまで一撃として当たらなかった攻撃がきまった。


 いけるっ!


 態勢を立て直した貫地も加わり激しい肉弾戦になった。

 陽達が徐々に氷雨を押していく。


「貫地、言っとくが、ストラクチャがずっと続くってのはハッタリだ。

 もってあと一分だ。

 この間にケリをつけないと俺達は負ける」


「時限付きか。了解した」


 − − − ストラクチャ発動から二十秒経過 − − −


 ストラクチャの中では圧力と熱と衝撃がフロストヴェールの生成を徐々に上回りだし、氷雨の全身から青い血が噴き出してきた。


「ぬぅおおおーっ!」


 お互い多くの打撃を喰らうが遂に氷雨の動きが鈍りだした。


 − − − ストラクチャ発動から五十秒経過 − − −


 あと9秒………

 8…

 7…


「くそっ、駄目だ。強すぎる、致命傷を与えられない。おおおおおーーーーっ!」


 3…

 2…

 1………


 氷雨を抑え込んでいたストラクチャが無情にもフッと消えてしまった。


読んでいただきありがとうございます。


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