第3話 ターミナル探索
コロニーの外は見渡す限りの砂地。かつての町は廃墟となり、人間がいた記憶をかろうじて留めている。
大気は高濃度の放射能に汚染され、地球上どこにも人間が住める場所はなくなってしまった。
淘汰戦争で人間達が核兵器をそこら中に落とした結果だ。
「ダムド、今日は『ターミナル』に行くわよ!」
そう言いながら砂地を疾走するダムドに跨っているのはレイだ。
通常、人間がコロニーの外へ出ることはない。というよりも、出ることが出来ない。
放射能汚染の問題もあるが、コロニーは、物質を破壊する高出力レーザーの壁で仕切られているのだ。それを作り出している地上と上空400キロの二地点にある高出力レーザー発生装置は、たとえいくつかを破壊することが出来ても無数にある予備装置が即座に起動、更にアーキノイドにすぐ検知されるため破壊は実質不可能だ。
そこで、朱里のような改造屋達は通り抜けたい壁を低出力レーザーに一時的にすり替えて行き来している。
しかし、出力を下げ過ぎると検知されてしまう為、バレないぎりぎりの出力までしか調整できず、通過するには結構な衝撃に耐えなければならない。
ちなみにデバイス化した者達は放射性物質を拒絶する仕様も組み込んでいるため防護服などは不要だ。
時折、上空を飛行タイプのアーキノイドが旋回しているがレイ達に気づく様子はない。
ダムドがステルスモードになっているからだ。
このモードは、周囲から見えないだけでなく相手のサーチにもかからない。
更にダムドが搭載している磁器反発装置は磁場の反発を利用して音もなく浮いて滑走することが可能だ。
少し前にレイとダムドがいつものようにコロニーの外を探索していると、何かの研究施設と思われる廃墟をアーキノイドが砂地の中から発掘していたところに出くわした。
淘汰戦争終結から今まで、アーキノイドがエクスクルーダーを見つけるべく地上をくまなく探し回ってきた為、新しい廃墟が見つかること自体が稀だ。
すぐに調査するかと思われたがアーキノイドは撤収してしまい、なぜか今もまだ手付かずでいる。
レイは探索の終わりを期待して、その場所に、終点という意味を持つ『ターミナル』と名付けた。
そして今日は、その廃墟に行こうと言っているのだ。
しかし、レイの提案にダムドは反論した。
「レイ、そのオーダーは拒否する。ターミナルは見つかったばかりだ。近いうちに調査が入る可能性が高く、いつ奴らが現れるか推測できない。
危険すぎる。
スマにはレイを危険に晒すなと言われている。」
「だからいいんじゃない!
奴らがまだ荒らしてない新しい廃墟なんて今までなかったわ、これからもきっとない、、、
何でもたついてるか知らないけど今がチャンスなの。
さっき話したでしょ、夢で誰かが言ってたのっ! ターミナルへ行けって。」
「私はそういった話は信じない。ターミナルへの期待が大きいあまり夢に出たのだろう。チャンスだとしてもレイを危険に晒すこと、、、」
レイはダムドの言葉を遮って続けた。
「ダムドが行かないなら私一人で行くからいーわ。離れたところで待っててね。」
「それはダメだ、一人で行かせる訳にはいかない。」
「そうなの? じゃあ一緒に行くしかないわね。」
レイはニコニコしながらそう言った。お決まりのパターンだ。
「はぁ、、、レイ、君はいつもそうだ、、、分かった、一緒に行こう。
しかし、危険と判断したら何を差し置いても君の安全を確保する。
その時は私の指示に従ってほしい。」
「いいわ、その時は守ってね、頼りにしてるわよダムド!」
そう言いうとダムドのヘッドに投げキッスをしてアクセルを捻った。
― ― ― ターミナルに到着した。
案の定、アーキノイドの気配はない。砂が掘られて直径500メートル程の巨大なクレーターになっている。その広さから以前ここには大きな建物があったと思われるが淘汰戦争で上階のほとんどが吹き飛んだようだ。
クレーターの中央付近、砂から姿を覗かせているフロアは何階なのか不明だが階下への階段がある。
レイ達はクレーターの淵から様子を窺った。
「大きい、、、やっぱりアーキノイドもいなそう、何でかしら。あそこに見えてる階段から入れそうね。」
「そのようだな・・・・・・
敷地面積 42,000平方メートル。
地上27階、地下11階。
企業名 『α(アルファ).com』。
2028年に創業した世界規模のAI開発リーダー企業。
特に医療分野での功績が大きい。今見えているフロアは地下3階。その非常用階段だ。」
ダムドはヘッドに備わったスキャナーで廃墟のフロアをスキャンして、崩壊前の立体映像を映し出しながらレイに説明した。
いくつかの建材があれば、それらの材質や形状、型番、年数などからほとんどの建造物を特定することができる。
「えっ!! アルファって、あのアルファ!? AI暴走の発端となったあの会社!?」
「その通りだ。更にこの廃墟は、世界各地にあるアルファの施設の中でも最重要拠点とされていた場所で高度な技術試行が繰り返されていた。」
「ホントっ!? 今度こそ何かしら情報が手に入りそうね。」
「そうかも知れない。何故ここが今までアーキノイドに調査されなかった、、、いや発見されなかったかは分からないが彼らより先に侵入できるアドバンテージはあるだろう。」
「よーし、アーキノイドに気づかれる前に行きましょ!」
二人は垂直に近い角度のクレーターを一気に滑り降り階段に向かった。
階段の中はかろうじて光が差しており下に防火扉らしきものが見える。
「ここからは私も人型にフォームチェンジして歩いて行こう。」
そう言うと、前輪がある前半分が後輪部分から切り離され、180センチ程の人型にフォームチェンジした。
素早く変形するその様子はロボット映画の変形シーンそのものだ。
残った後輪部分はその場ですごい勢いで回転してあっという間に砂の中に潜ってしまった。
「お待たせした。さあ、行こう。」
読んでいただき、ありがとうございます。
後3話、本日中に投稿しますので。是非読んでいただけると嬉しいです!
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