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第23話 ヒーロースマ

ピンチにスマが助けに来てくれました!

無事に救出できるのか!?

そしてスマの実力はいかに!?

「レイー、大丈夫かよ、クッソーッ、誰にやられた? ってアイツだよなこのクソヤローッ! 

 ダムドッ! レイの手当をっ。

 完璧にな! より可愛くな! 

 ぉあーー、アイツ許さねぇー。

 朱里さんは死にゃしないっすね。

 ダイスはどーするよあれ。捕まっちゃってて結構ヤバめだな、クソったれ!」


 到着するなり、クソッ、クソッと騒がしく皆の安否を確認した。

 特にレイが倒れているのを見て怒りを抑えようともしない。


 ダムドは『オーケー、スマ』と言って、言われた通りレイの手当のために箱型に変形し、その中にレイを格納した。

 見た目はただの直方体だが最先端の設備が整っている。ひとまずこれで安心だ。


 一緒に来たもう1台のバイクは、元は人間の強改造者で亀男(かめお)と呼ばれている。


 強改造のオペレーションの中でも意識を機械に転送する『トランスファー』と呼ばれる特殊なものがあり、オペレーションの対象は既に強改造者となった者だ。


 このオペレーションを受けた者はアーキノイドでも人間でもなく、オペ名そのままにトランスファーと呼ばれている。

 トランスファーは驚異的な強さと引き換えに肉体を失う。

 更にほとんど成功せずオペ中に死んでしまうため望んでトランスファーになろうとするものは少なく個体数は少ない。

 朱里の昔ながらの仲間の一人だ。


「スマ、状況は見ての通りだ、レイを連れて逃げろ。少しは回復したから俺が足止めする。

 ダイスも何とかアイツから取り返す」


 それを聞いた亀男は不満そうに言った。


「朱里よー、そりゃないぜ。お前はそこで休んでろよ。お前らをやったヤツは痛い目見せねーとな」


 亀男も血の気が多い男だ……… 血はないが。

 朱里は何とかたちあがり、グリムリーパーに向かおうとする亀男を行かせまいと正面に立ちハンドルを握って押し返す。


「いやいや、だめだ! 今の俺達じゃ束になっても敵わない。奴の能力の対策考えねーとダメだ。

 俺も回復途中なんだから余計な力使わせんなって!」


「俺はトランスファーだぞ、舐めてもらっちゃ困るな。一発入れるだけだって! 一発!! 

 ドルンッ! ドルルルンッ!!」


「一発も二発もねんだよ、分かんねーやつだな。

 言うこと聞いて帰れって言ってんの!!」


 緊張感なく言い争っているうちに、スマが険しい表情でグリムリーパーに歩み寄っていく。


「朱里さん、大丈夫だよ。ちょっと挨拶してくるわ」


「おおおー、お前もやっぱり期待通りな奴だよな。だーからダメだって! 

 あー、どいつもこいつもなんでこう馬鹿なんだよ。馬鹿ばっか! じゃぁ、おいっダムド! 頼むからそのままレイを連れて帰ってくれ、頼む! 

 お前だけは違うよな? この中で一番合理的で利口なはずだ!」


「すまない朱里。私はスマとともにいる。」


 ダムドは答えた。

 ダムドは基本スマの言うことしか聞かない。


「分かった、分かった、朱里、離せよハンドル。

 じゃ、俺はここでいつでも逃げられる準備してるよ。

 俺らも何も考えずに来たわけじゃないから。

 まぁスマを見てなって」




 スマはグリムリーパーの真正面で胸を張って立ち止まった。『コ、コイツでかい……ぅおーーー、威圧感も半端ねー。しかしよぉ………』


「俺は堂寺(ドウジ) 須磨(スマ)(すま)。

 女にも容赦ねえクソッタレはお前か! 

 俺はそういう奴は絶対に許さない!! 

 覚悟してのことだよな? 

 それと、吊るしてる奴も離してくれねーかな。

 とにかくだ、よろしくな!」


 とキリッと言い放ったかと思うと左手を差し出して握手を求めた。


 朱里は呆気にとられてポカンとしてしまった。


「あら………? 

 う、うわぁーーー、全く意味不明だ。『まぁ見てろ』って、お前、あれじゃやっぱりバカ丸出しじゃんかよ。

 握手ってどうゆうこと? え? 普通しないだろ。握手したらなんか起こりますよって、しっかり伝わっちゃってるよあれ」


「………………」


 亀男もこの切り出しには黙ってしまった。

 もう少しまともに会話できると、当たり前に期待してしまっていたのだ。


「いかにも私がそのクソッタレだ。

 少しは戦い慣れているように見受けられるが、頭も鍛えなければ充分に能力は発揮できないぞ」


 スマは安い挑発にすぐさまのって、プチーンと音が聞こえそうな程に怒った。


「お、おおおおーーーーっ! 

 い、言いやがったーーっ。 よく言われるが、初対面でいきなり言わないだろ普通、クソッ! 

 そんなこと言って怖いんだろ! 

 さーさー、握手してみろよっ!」


「ハッハッハ、面白い、握手をすればいいんだな。お前にも相当なリスクがあることは承知の上ということか」


 グリムリーパーはスマの見え透いた罠に敢えてかかるため左手でスマの握手に応じた。『おわー、対峙しているだけでも圧が凄まじいのに、手を掴まれると絶望感しかなくなるなこれ。しっかりしろスマッ!!』尋常ではない圧力に飲み込まれまいと自分を奮い立たせた。


「で? 何かするんじゃなかったのか? 

 先に私からプレゼントをやろうか」


 グリムリーパーの指が食い込んで血が滲んできた。スマの手がミシミシと音を立てる。

『痛えーっ、なんて握力だ! 

 あらっ!? なんか今一瞬めまいがした!? 気のせいか?とにかくこのままじゃ、手が潰されるっ!』


「へへっ! ただの握力自慢かよ、大した事ねーなー。これでも喰らいやがれっ!」


 グッと腕を引っ張りながら空いている右手でグリムリーパーの白い仮面を指さした。


 瞬間、スマの前腕の裾から細かい部品がわらわら飛び出してオートシェイプ(磁力や分子レベルの結合・反発などを利用して自動的に造形すること)したかと思うと、発射口が広がった見慣れない形状のピストルがスマの手の中に現れた。


「まさかこれはっ」


「今さら何か分かっても遅いんだよ、じゃあな」


 スマはトリガーを引いた。


 ガオンッ!!


 大きな音とともにグリムリーパーの右胸と右肩辺りが一瞬で抉られ消失した。

 ダイスはドサリと地面に落ちて解放されたが、グリムリーパーのちぎれた右手はなおも首を掴んでいた。


「チッ! この至近距離でも避けられんのかよ、頭すっ飛ばそうとしたのによ、クソっ! 」


 グリムリーパーはトリガーが引かれた瞬間に体をずらして致命傷を避けていた。


「おおぁっ…… まさかワームホールを改造した武器だったとはな。

 正面からでは勝てないと承知した上での策か、さすがにまともに受けたら私とて消し飛んでいた。

 遊びはここまでにしよう…… むぅんっ!」


 グリムリーパーの抉られた右半身の傷口がボコボコと膨れあがり細胞分裂して再生していく。

 ダイスを掴んでいた右腕も合体してしまった。


 あそこまで体が大破したにもかかわらず、一瞬で復活するとは、自己再生が半端ない。


 今度はグリムリーパーが腕をを引っ張る。

 スマの体は軽々と宙を舞い、そのまま弧を描いて地面に叩きつけられそうになった。


「スタンプ!!」


 スマが声をあげると、ガッチリ握られていた手が離れ、間一髪のところで逃れることができた。


「なんと!?」


「あと一歩だったな、俺のデバイス『スタンプ』だよ。覚えときな。手の骨折れてボロボロだろ」


 スマのデバイスはギア(道具)系の『スタンプ』。これにパワー系のデュアルだ。

 体表のほとんどが超高速で弾ける1センチから5センチ大のスタンパーというデバイスで覆われている。

 弾ければ至近距離では破壊できないものはない程に強力な衝撃だ。


 握手していた手の平に備わっているスタンパーを一気に発動させたため、グリムリーパーの手を破壊しつつ脱出できたのだった。


「最近のデバイスはバラエティーに富んでいるな。接近戦に優れれた能力。

 だが、これだけではやはり勝てないぞ」


「やっぱアウェイカーごと頭吹っ飛ばすとか、もっと再生不能なくらいに破壊しないと駄目みたいだな。

 ワームホールガンがスカっちまったからとりあえず勝ち目なさそうだね。

 俺は痛い目見るのはゴメンだからさ、バイバイッ!」


 そう言いながらスマは倒れているダイスをひょいと抱えたかと思うと朱里たちの方へ猛ダッシュした。


「利口な選択だが、逃げられると思うのか?」


 グリムリーパーは手でピストルの形を作りスマに向けた。

 突き刺すような殺気を感じたスマは考えるより早く直感で横に飛びのいた。


飛衝(ひしょう)


 バンッ!!

 という音と共に大砲が当たったかのような激しい衝撃波がスマにさく裂した。

 飛びのいていなければ体がバラバラになりそうな程の威力だった。


「がはっ!」


 スマはダイスもろとも弾け飛んで転がった。


「おおっ、ダイス大丈夫か? 

 痛てー、鼓膜が片方いったし頭も割れるかと思った。

 予想以上にやばいやつだこれ、耳栓なんて全然意味なかったー。

 まともに食らったら一発KOだっ。

 おおおー、でもまだいける!」


 耳や鼻から出血し、かろうじて避けたはずの一発で満身創痍になってしまったが、スマはすぐ体制を立て直してダイスを抱えて再び走り出した。


「ダムドッ!!」


 スマが叫ぶと同時にダムドは激しく砂埃を舞い上げてスマに突進してきた。

『来るっ!』

 またあの殺気が迫る。


 スマは咄嗟にダイスを上空高く投げてくるりと振り返り、体の前面全体にある無数のスタンパーを全てグリムリーパーと自分の対角線上に全て放った。

 スタンパーは弾丸のように飛ばすことも出来る。


「ショットッ!」


 ドババドバンッ!!


 予想通り、放たれたスタンパーは見えない衝撃波とぶつかって弾け飛び、スマにはビリビリと揺れる空気の振動だけが届いた。


「へへっ、どーよっ! 

 お前が音波使いなのは知ってんだ。

 ちゃんと音波対策を勉強してきたからな!」


 そう、グリムリーパーはベータ波を得意とし、デバイスはエレメント系の『ソニック』。

 音波を操る。

 今までの一連の衝撃波は音波だったのだ。


 音波は密度の高い金属に吸収されやすく、また物体に当たると反射して分散する。

 この性質をスマは利用したのだった。


 ダッシュしながら振り返ってスタンパーを飛ばしたため仰向けで浮いてしまっている状態となってしまったスマは、落ちてきたダイスをそのままキャッチすると、自分も地面に落ちるスレスレで背中のスタンパーを弾けさせた。


 その反動で跳ね上がりながら空中で体制を整え、突進してくるダムドの位置を確認する。


 ダムドはスマ達が落下するタイミングを計って更に加速していく。


 ダンッ!


「着地ぃーーー!」


  箱型のダムドの上に見事着地した。


「来るぞ、来るぞっ、また音波やばいぞっ、音波っ! 全速前進、逃げろーー!! 

 亀男も朱里さん乗せて急げ!」


 様子を見ていた朱里もスマがダイスを奪還してこちらに向かってくるのを確認すると、亀男に跨って走り出しスマ達と合流した。

 グリムリーパーはそれ以上攻撃してこなかった。


「………ガンマ様

 ……邪魔が入り神馬ダイスの捕獲、失敗しました……

 ワームホール………」


 ワームホールが現れグリムリーパーはその中へ消えていった。


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