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第22話 ダイスの初戦

遂に第一話と繋がります!

皆さんももう第一話の冒頭なんてお忘れかもですね。ここまで長かった、、、

引き続き楽しんでいただけると嬉しいです!

「ここは……… どこだ!? どうなってるんだ!? 夢?」


 少し先に人がいる。

 こちらに何か言っているように見えるが、その人物も、その声も何だかぼやけてよく分からない。

『おーいっ!』と呼ぼうとしたが今度は声が出ない。


 一体どうしてしまったのか、ダイスの理解が追いつく間もなく、頭上から何か白いものが物凄い速さで向かってきている。

 ダイスはそれを無意識に凝視する。


 落下の速さは? 距離は? どこから? 軌道は? 他にも様々な情報を一つも見落とすまいと、瞬きひとつせずに集中していた。


 今のこの不思議な状況は問題ではなくなっていた。


 そう、ただひたすら集中していた。


 時間の感覚すらない………


 その白い何かは物凄い速さであるにもかかわらず、永遠に見つめ続けられそうで、あるいは一瞬でしかないとも感じる。


 その感覚に入り込んだ瞬間、頭の中で『カチッ』と音がして、元の薄暗い鋼鉄の中に戻っていた。


 実際、それはほんの僅かな時間だった。


 急に殴るのをやめ、プツンと糸が切れたようにその場にへたり込んでしまったダイスを見てリカノンは慌てて言った。


「おっと…… どうした急に。

 大丈夫か? ダイス。

 今なんか、こう、胸の辺りから広がるように一瞬ギラギラってなったみたいだけど、何? 何?」


 心配をよそにダイスはすぐさま立ち上がった。

 しかし、現実とも夢とも言えない永遠のような狭間から目を覚ましたダイスには大きな変化が起こっていた。

 両腕はメタリックな黒にズズッと染まりだし、眼から淡く赤色の光が漏れていた。

『解除』

 できたのだ。


「大丈夫、行くよ、リカノン」


 先ほどまで取り乱していたとは思えぬ落ち着いた声色、そして全く隙のない気配を纏っている。

 ダイスは構え、壁に軽く一撃加えると、壁はゴンッと音を立てて大きくへこんだ。


「おぅっぷ!

 …… お…お…気にするな……… 大丈夫、ぶち破れ!! 

 ちょっと気失いそうだけど大丈夫、でもなるべく小さくな、なっ!」


 リカノンが苦しそうに言った。

 悪いと思いながらもう一撃、今度はしっかり構えてから、少し強く拳を繰り出した。


 ゴバンッ!!


 大きな鈍い音とともに、まるで紙が破れるように壁が破裂した。


「リカノン、ごめん。約束通り今度話をしような! 俺は行くよ!」


 リカノンから返事がない。

 気を失ってしまったようだ。

 心配だったがとにかく朱里さんとレイを助けに行かなければ。


 ダイスが外に飛び出すと、全てがスローに感じた。『またあのスマと一緒に解除した時と同じ、時間が止まっているような感覚だ。』既に1体のアーキノイドが長剣を振り下ろしかけている。

 他の2体はリカノンが破壊された音に反応してこちらに体を向けようとしている。


 朱里さんの心拍数が異様に高い。

 デバイスを再生モードに全振りして、無理な急再生をしているのだ。


 レイは呼吸が浅い、すぐに手当てしないと。

 潜在能力が解放されダイスの感覚は研ぎ澄まされていた。


 今の事態を把握した上で何をすべきか最善の解を導き出すのに、今のダイスに時間は必要ではなかった。


 アーキノイド達は先ほどの状態からほとんど変わっていない。『これがリミッター解除の力なんだ。』


 ダイスは地面を力強く踏み込んだ。


 ― ― ― 刹那、十数メートルの距離をダイスは瞬きのうちに詰めた。


 ダイスは瞬く間に3体のアーキノイドを倒した。


 スマやレイと手合わせはしていたが、命をかけたアーキノイドとの実戦は初めてだ。


 無駄のない体捌き。


 身に覚えはないが相当な体術が叩き込まれているのが自分でも分かった。

『早く二人を手当てしなければ』


 ― ― ― その時、


 一瞬空間が歪んだかと思うほど張り詰めた気配が辺りを席巻した。


「ッ!? 何かがいる!!」


 圧倒的な威圧感を放つその主は、少し離れたところでこの戦いの様子をずっと見ていた。


 白いマントに身を包み深いフードを被っている。


「………人!? アーキノイド!?」


 次の瞬間、視界から『謎のフード』が消えたかと思うと、逃げ出したアーキノイドの横に突如現れ、その肩にそっと手をかけていた。


 すると、猛烈に走っていたアーキノイドの動きがピタリと止まり、そのまま惰性で勢いよく前のめりに転がった。


「………いつの間に!? 目を離していなかったはずなのに……… 動きが全く見えなかった!」


『謎のフード』は、ゆっくりとダイスの方に向き直った。

 フードの奥からでも見入られているのが刺さるように伝わってくる。


「………うぅっ!?」


 途端に体が重くなる。

 砂の中に埋められているようだ。

 毛穴という毛穴から一気に汗が噴き出る。


 リミッター解除している今の状態でなければ意識は乱れ体は硬直していただろう。


 おそらく、こいつがリカノンの言っていたグリムリーパーだ。


 ダイスはこの得体の知れない圧に飲み込まれ、体が動かなくなる前に飛び掛かった。


「うぉぉぉーーー!!」


 朱里の振り絞るような声がした。


「ダメだ、ダイス! 手を出すなっ! レイを連れて逃げろっ!」


『大丈夫、今の俺ならいける!』ダイスは忠告を無視して突っ込んでいった。


 ダイスのデバイスは体の細胞を一時的に鋼化させるアイロニック。

 系列は変異系。

 更にパワー系を掛け合わせており、このように二つの特性を持つ場合はデュアルと呼ばれ、朱里やレイの様に一つの特性のみだとシングルと言う。


 突っ込んでくるダイスに対しグリムリーパーはゆらりと立ったまま動こうとしない。


 ダイスは腕をアイロニックで鋼化させ、走る勢いとともに右の拳をグリムリーパーのフードの中に突き刺した。


 ゴガンッ!


 いとも簡単にクリーンヒットした。

『重い! それに弾かれる様な感覚は何だ!?』まるで飛んでくる鉄球を殴っているようだった。

 しかし、そのままなんとか振り抜くことができた。鋼化していなければ自分の腕が粉砕されていただろう。


 グリムリーパーはぶっ飛んだ。

 水面に投げた石が何度も跳ねるように、地面に激しく叩きつけられながらぶっ飛んだ。


「やったか!?」


 期待したのも束の間、グリムリーパーは何事もなかったかのようにムクリと起き上がった。


 フードが外れ顔が顕になったが、白い仮面を付けていてる。

 仮面には今のパンチでヒビが入ったようだ。

 顎に手をやり左右に傾げて首の調子を気にしている。


「うむ、なかなか良いパンチだ。

 体を鋼化、初めて見舞えるデバイスだ。

 だが、いきなり突っ込むのは勇気とは呼ばない。

 今の時代、相手のデバイス次第ではお前は即死だ」


「………ヒビだけ!? 効いてないのか?」


「『効いていない』ではなく、私に()()()()()()、が正解だ。

 仮面は破損したがな。

 もう一度試してみるか?」


 ダイスは本能で勝てないと直感した。


 しかし、諦めるわけにはいかない。『渾身の一撃だったはずが、ダメージを与えられないなんて……… 動けるのは俺だけ。絶対に何とかする!』

 ダイスはさっきより更に速いスピードで、また真正面から突っ込んだ。


 手の届くところまで間合いを詰め、片膝が付くほど低い姿勢でアッパーカットを放つ。


 狙ったのはグリムリーパーではなかった。

 拳は足元の地面を大きく抉り、舞い上がった大量の土埃をグリムリーパーに浴びせて視界を遮った。

 そして、横の懐に飛び込みサイドから頭を狙った。


 構えもせず視界も奪われているはずのグリムリーパーだが、まるで動きを予知しているかのごとく、攻撃を柳がなびくかのようにかわし、ダイスの首の後ろに軽く手刀を入れた。


(いち)


 そして、そう呟く。

『うっ、、、手刀!? 痛くも何ともないぞ』

 一瞬、目眩がして視界がぼやけた気がする。

 首の後ろが少し切られたようだが、少し前のめりに体制を崩しただけでダメージはない。


 間を開けずに足を鋼化させ、後ろに回り込みつつ足元に蹴りを放った。

 グリムリーパーは身軽なバク宙でかわし、空中で体を捻って振り向きざま、ダイスの横っ面に軽く蹴りを入れた。


()


 と呟やく。

『なんて身のこなしなんだ、当たらない………』少し横によろめいたが、すぐさま体制を整え、正面から鋼化させた拳を放った。


 グリムリーパーは左の(てのひら)を拳に向けた。『(てのひら)で受け止める気か!? そのまま押し切ってやる!!』拳が当たる寸前、グリムリーパーは掌を少し上方にクイッと角度を付けた。


掌破(しょうは)


 パンッ!!

 と破裂音がしたかと思うとダイスの拳は激しく上に弾かれた。

 (てのひら)から衝撃波が放たれたのだ。


 そしてその右腕は、鋼にもかかわらず内部から爆発したかのように原型を留めずボロボロになり、もはや自己再生できる範囲ではなかった。


「ぐあ“ぁ“っ!」


 弾かれた衝撃で上半身がのけ反ったダイスのみぞおちめがけて、グリムリーパーは強烈な肘打ちを入れた。

 そして、悶絶して倒れ込みそうになるダイスの喉元を素早く掴んでそのまま持ち上げた。


(さん)


 ダイスは残った左手でグリムリーパーの腕を掴み、何とか耐えている。


「分かるか? 私はお前を既に三度殺した。

 勝てないと理解した時点で戦わずに仲間を助けることに注力すべきだったな。

 無謀は何も得られない。

 誰の希望も救えはしない。

 どれほどの力量か計ってみたがこれまでだ」


『そうかもしれない、リミッター解除の力でうぬ惚れた…… 相手の力量を見損なった………

 朱里さんの忠告も無視した。

 グリムリーパーと距離があった時なら、レイだけでも、いや、朱里さんも助けられたかもしれないのに』


「うぅぅ……がぁ!!」 


 歯が立たないと分かっていながら、なおも右の拳を繰り出した。


 グリムリーパーは一瞬驚いた表情をした。


 それもそのはず、さっき粉砕して使い物にならなくなったはずの右腕がもう自己再生していたのだ。


 その再生速度は並ではなかった。

 しかし、だからと言って戦況が変わるわけではない。


 繰り出された拳をいなすと、ダイスの喉を掴むグリムリーパーの指が首に食い込んだ。


心壊(しんかい)


 ………ドクンッ!?


 体の中で衝撃が起こった。

 体を内部破壊する技だ。


「がはっ!」


 ダイスは吐血して、目から漏れていた淡い光が消えてしまった。


 これは強制リミットされたことを意味する。

 ダメージを負い、対抗し得る力を失ったダイスはなすすべをなくしてしまった。

『体の中で衝撃が………ダメだ……やられる………………朱里さん、レイ、ごめん………』


「やっと大人しくなったようだな。

 全てはお前の判断の甘さが招いた結果だ。

 ……… お前に聞く。

 エクスクルーダーはどこにある?」 


「………し…知るかっ……… 知っていても… 教えない………」


「そうか。ならば死ね。

 骸のお前から記憶を奪うまで。

 さらばだ………」


 グリムリーパーは掌をダイスの胸に当てた。

 衝撃波が来る。

 もはやこれまでと思われた。


 −−−その時


 ズドドドドドドッ!!! ドルンッ! ドルルンッ!!


「おあーーっ!待った待ったーー!! 

 朱里さん、レーイッ、ううぉおーーー解除ぉおーーーあーーー!!」


 スマだ。

 ダムドに跨って猛烈な勢いで突っ走ってきた。

 もう一台無人のバイクも一緒だ。


 スマはただならぬ状況を察し、リミッターを解除して臨戦態勢だ。

 ベータ波を得意とするスマの目からオレンジの光が放たれていた。

『スマっ! 助けに来てくれたんだ』


強改造者のデバイスは、ダイスやスマ達のような今の時代の、いわゆる新世代はほとんどがデュアルです。初期世代はシングル。そもそも初期世代は、デバイスをデュアルにする考えがなく、特化型オンリーの考え方だったです。


読んでいただきありがとうございます。


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1話を読み返してなるほどこうつながるのねと読み返しました。
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