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第15話 救出

 −−−−−−−−


「今のは!?」


 かなり離れたはずだが拠点の方角から眩い光と激しい爆発音が響いた。


「小規模な核融合爆発だ。

 小規模と言っても中心から数キロは何も残らないだろう………

 おそらくタウラスが………」


「………立ち止まってはいけないのね」


 二人はそれ以上話さなかった。


 目指す場所まであと少しというところで、追ってきたアーキノイドの群れに追いつかれてしまった。


 走り続けながらダムドに搭載されている無数の機関砲で応戦するも、レイ達を襲う猛攻はバリアを激しく消耗させ危険な状態だ。


「後少しなのにっ! 

 これだけ数が多いと全部は無理かもしれないけど、『デッドネット』を試してみるわ。

 ダムド、体を抑えてて」


 そう言ってレイはダムドの上で仰向けになると、両腕を上に伸ばして手のひらを空に向ける。


「これで一網打尽よっ!」


 ババンッという音と共にネオメタルの玉がアーキノイド達の上空に打ち上げられると、それは破裂して大きなネットになり落下した。


 半径一キロ程にいたアーキノイド達は、飛行タイプも含めこのデッドネットにかかり、大きな塊となって地面に落ちた。


「クローズッ!」


 レイは両手をグッと握った。

 それに合わせてデッドネットはギュッと縮み上がり、包みこまれた大量のアーキノイド達はギチギチにひしめきあった。


 デッドネットは細い網目の外見とは裏腹に物凄い力で締め上げる。

 この時点で破壊されたアーキノイドも多かった。


「からのー……… アンノウンッ!」


 レイの手のひらから一筋のネオメタルが糸のように発射されデッドネットに繋がるとアンノウンの強力な振動波が伝播していく。


 すると、生き残ったアーキノイド達はあっという間に分解されてスクラップの塊になった。


「やったっ!」


「見事だ、レイ。

 デッドネットとアンノウンの合わせ技か。

 しかし、ゆっくりしてはいられないようだ。

 さらなる新手が迫ってきている。

 急ごう」


 二人は走り出した。

 やっとのことでたどり着いた場所は地の果てかと思うほどの断崖絶壁で、その先は絶海が広がり水平線が遥か遠くに見える。

 これ以上は進めない。

 タウラスから貰った発信機もここを指し示している。


「行き止まり………

 ここでいいのかしら!?」


「うむ、発信機もこの崖の下を指し示している。

 間違いないだろう。

 タウラスの話によれば、この発信機に反応してダイスを保存しているポッドが海中から現れるはずだが………」


 レイと人型に変形したダムドが崖を見下ろしていると、発信機が一瞬パッと発光して、同時に電磁バリアも解けてしまった。

 壊れたかと思いレイは発信機を振ってみたが何の反応もない。


「あれ? 

 このタイミングで壊れちゃったのかしら」


「いや、そうではないようだ。

 今の発光はおそらくポッドへのアクション。

 海底の方から何かが猛スピードで向かってくる音がする。

 レイ、崖から少し離れよう」


「ホントだ、振動もしてきたわね」


 二人が崖から少し距離をとった瞬間、直径二メートル程の球体ポッドが海から飛び上がってきて、レイ達がさっきまでいた場所にズドンと落ちた。


 ポッドの表面は長年海中にあったために変色し、フジツボだらけだった。


「わぁっ! 危なかったわね。

 それにしてもボロボロの外見だけど中は大丈夫なのかしら? 

 人が……… ダイスって子が入ってるんでしょ。

 い、生きてるわよね………」


「発信機に反応してここまで浮上したことから、内部の生命維持装置も機能していているだろう。

 タウラスもダイスの意識が戻ったと言っていたから生きているはずだ」


「そ、そうよね。

 じゃ、開けてみましょう」


 レイとダムドがポッドに近づくと、プシューッと音を発しながら自動的に扉が開いた。

 二人は恐る恐る中を覗き込んだ。


「きゃーっ、ミミ、ミイラッ! 

 死んでるーっ!!」


 ポッドの中には骨と皮だけの白いガウンを着たミイラが沢山の管に繋がれて座席に横たわっていた。

 首にはブローチの付いたネックレスを付けている。


「レイ、慌てることはない。

 彼は生きている。

 このミイラ化は、最低限のエネルギー消費で長期保存を行ったからだ」


「でも、これじゃあ生きてるって………」


 ゴウンッ! ゴゴゴゴゴッ………


「何なの今度は、もうっ!」


 エンジンのような音がすると、ポッドの内壁がチカチカ光りだして装置が動き出した。

 繋がっている大小の管が揺れ、何かをミイラに送り込んでいるようだった。

 時折、バシンッと電気ショックのような小さな衝撃も起こる。


 一分もしないうちにミイラは、細身だがしっかりした体格の少年の姿になり、管が一斉に外れた。


「おー、50年前の技術でここまでやるとは驚きだ」


「ホント凄いわね、すっかり普通の人間に戻ったわ。

 後は意識がちゃんとあればいいんだけど………

 ダイスっ! 聞こえる? ダイスっ!」


 ピクリとも動かない。

 やはり意識は戻っていなかったのだろうか。


「ダイスっ! 起きてっ、ダイスっ! 

 タウラスからあなたを任されてきたわ」


 と、その時、指が少し動いた気がした。

『タウラス』に反応したのか?


「動いたわ、そうよ、タウラスが導いてくれた。

 ダイスっ! ダイスっ!」


 僅かだか薄っすら目が開いた。


「やった! ダイスっ、聞こえる? 

 私達タウラスから頼まれてあなたを助けに来たの。取り敢えず一緒に行きましょう………

 って歩けないか………」


「………………」


「ここまでは予定通りといったところだな。

 自己紹介は後にして、とにかくすぐにここから離れよう」


「それじゃ、ポッドから出すわよ」


 その時、虚ろなダイスの視線が、先程から自分達の背後に向けられていることに気付いた。

 更にダイスの指が後ろを指差す様に動いた。


 レイ達はダイスばかりに気を取られて、追ってきているアーキノイド達の事をすっかり忘れていた。

 嫌な予感と共に振り返る。


「………あら、」


「まずいな………」


 デッドネットで破壊した二倍はいるであろうアーキノイド達が陸と空を埋めていた。


「逃げ道がないわ、迎え撃つしかないわね」


「いや、我々二人だけなら何とかなるだろうが、ダイスを守りながらでは勝ち目はない」


「じゃ、みんなで飛び降りる? 

 それこそダイスは死んでしまうわ。

 やるしかないのよ、行くよっ! 

 解除っ!!」


 レイはレアメタルを体全体に纏い、さながら銀色のタウラスの様だ。

 治癒タイプのレイが接近戦を迫られた際の姿だ。


 ダムドも両手に持った極太のバイクチェーンをヌンチャクの様に操り立ち向かう。


 しかし、やはりダイスを死守しながらでは防戦一方となり、このままでは時間の問題と思われた。


 サンドラのアーキノイドは高電圧を帯びた剣を振るう。

 まともに触れないように弾きながら戦っていたが、疲労してきたレイは、避けきれなかった一刀を手で掴んでしまった。


 瞬間、電撃がレイを襲う。


「きゃっ!」


 レイの動きが止まる。


「レイっ!!」


 ダムドがレイを攻撃しているアーキノイドを粉砕するも、その隙をついて他のアーキノイドがダイスに切りかかった。


「しまったっ!」


 ダムドがチェーンで薙ぎ払おうとするが届かない。

 やられるっ。


 その時ダイスの首にかけられていたブローチがパカリと開いた。

 ダイスに斬りかかっていたアーキノイドが、まるで風に煽られたかのようにふわっと舞い上がって吹き飛んだ。


 一陣の風が吹いた。


「……… ッ!?

 ハァハァ………どうしたの? 

 アーキノイド達が止まったわ。

 大きな風が吹いたようだけど………

 ハァハァ……」


 ここにいる全てのアーキノイドが活動を停止した。飛行タイプのアーキノイドも次々と墜落した。


 辺りは打って変わって静まり返り、崖の下で打ちつける荒波の音だけが聞こえる。


「助かった………

 最終兵器が発動した時も風が吹いたという。

 そしてタウラスは『エクスクルーダーをあげる』と言っていた。

 まさかさっきの風がそうだったのか!?」


「えっ、でも何も見えなかったわ。

 風…が吹いたら急にアーキノイド達が動かなくなって…、

 あっ、その前…ダイスのブローチが突然開いたけど、

 ………中から何か出たのかしら?」


「うむ、そうかもしれない。

 とにかく今はダイスを連れて戻ろう」


「うん、でもこの一件はアーキノイド達を通してガンマにも共有されてしまったわ。

 これで私達も素性がバレちゃったわね」


「そうだな、しかしエクスクルーダーを探していた理由はガンマを倒すこと。

 ずっと隠れながらは戦えない。

 時間の問題ではあったんだ。

 少し急なタイミングだったが仕方ない」


「そうね、帰って作戦会議ね。

 今日のこと話したらパパ相当怒るわね」


 ずっと緊張していたレイの表情がやっと緩んだ。

 ダムドは二人を乗せて走り出した。


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― 新着の感想 ―
拝読いたしました。 第一に志の高いSF大作だと思います。スケール・設定情報量・構想意図すべてが重厚。 AIと人類の戦争という題材は王道ながら、単なるバトルや反乱譚に終わらず、「テクノロジーと心」「…
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