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第14話 クローバーの栞

 ― ― ― ― ― ― ― ― ―


 目を開けると、爽やかに晴れた朝だった。

 僕はダイスの一歳の誕生日に生まれ(造られ)たんだ。


『初めまして、ダイス。

 今日からあなたの世話係になったタウラスですよ。あなたと僕の誕生日は同じ日。

 毎年素晴らしい日になりますように! 

 仲良くしてくださいね可愛いボウヤ』


『たーーしゅ、たーーしゅ………』


『ん!? 違うよ! 

 タ、ウ、ラ、ス………

 タウラスですよ!』


『たーーーしゅ!』


『ハッハッハ、『ターシュ』でも覚えてくれたみたいだから良かったじゃないかタウラス』


『神馬博士、からかわないでくださいよ、

 僕はタウラス………

 はぁ、 まぁボウヤがそう呼びたいなら、それでもいいか………

 オッケー、生まれて早速だけど改名です! 

 僕は今日からターシュ!

 よろしくね、可愛いボウヤ』


『キャッキャッ! たーしゅ! たーしゅ!』


『それっ! 高いたかーい! 

 ターシュか、意外とかっこ良いかもですね、アッハッハッハ!』


 −−−−−−−−


『さぁ! 捕まえられるもんなら捕まえてみろ、ダイス。

 成長したと言ってもまだまだ三歳児。

 君はハイパー超絶スピードのこの僕に触れることすらできないぞ! 

 ハッハッハッ!

 それ逃げろっ、シュババババーッ!』


『タッチッ!』


『ッ!? ぬああーー! いつの間に! 

 恐れ入りましたーー、流石は我が愛しのボウヤ』


 −−−−−−−−


『学校でケンカした!? 

 僕と一緒に練習した体術で!? 

 ダイス、二度と攻撃の為にそれを使ってはいけないよ。

 二度とね。

 何かあっても防御だけに使うこと。

 君の体術は攻撃に転ずれば危険な凶器になる。

 くれぐれも忘れないように。

 分かってくれるね』


『えっ? 僕のことを壊れたスクラップだって言われたから怒ったって? 

 ………………そうだったのか…

 僕を想ってくれてのことだったんだね、

 ありがとう優しいボウヤ。

 ありがとう』


 −−−−−−−−


『ない、ない、やっぱりなーいっ。

 僕の大事にしてた栞がーー、ないー。

 あーーー』


『ターシュ、毎日ないないって静かにしてくれよ、もうっ。

 夜な夜な本なんて読んでるからなくすんだよ。

 ダウンロードしちゃえばいいのにさ』



『ダイス、君は何て情緒ないことをっ!

 本は読むもの! 

 ダウンロードなんてもっての外だよ。

 一言一句を丁寧に紐解いて想像の海原を航海する。無限の可能性が広がるひとときだよ。

 ダイス君にはまだ早いかなー。

 ハハハハッ!』


『うわっ! 表現の仕方が胡散臭いんだよね。

 なんかムカつく』


『君なんかここんとこ近くの公園ばかり行って、もうそんな年じゃないだろ』


『はいはい、これね、あげるよ。

 なくした栞は諦めてこれで大人しくなって』


『おっ、何だこれ!? 

 し、栞っ。

 四葉のクローバーが入ってる………

 こ、こんな………』


『何? こんなもんいらないって!? 

 諦めが肝心ってタウラスも言って………』


『おあーーーーーっ! 

 ありがとうっ、ありがとーーーっ! 

 もしかして公園へはこれを探しに!? 

 なんて心のこもったプレゼント………あー、僕は幸せ者だ。

 涙は出ないけど出るなら止まらないだろうよ。

 ダイス、大好きだよー!』


『ちょっ、おい、離れろって、痛い痛い。

 まったくいつも大げさなんだよ。

 今日からまたその、何だっけ?

 想像の海原だっけ? 

 行けるでしょ、良かったね』


『何だ何だ?

 今日は朝から騒々しいな。ん? 

 タウラスも貰ったのか。

 良かったな』


『あれ?『貰ったのか?』って? 

 神馬博士も貰ったんですか!?』


『あー、私もアルファも他のスタッフも貰ったよ』


『なな、な、なんとっ! 僕だけじゃなかったの………』


『誰もターシュだけにあげたとは言ってないし。

 そんなショック受けなくてもいいじゃんよ。

 でも四葉はターシュだけだよ。

 一つしか見つからなかったんだ。

 だからそれは特別製だよっ!』


『おーーー、そうなの!? 

 よしっ! 

 へへへ、やっぱり僕は特別っ!!』


『切り替え早すぎだろターシュ………

 アハハハハッ!』


『ハハハハハハッ!』



 −−−−−−−−


『ダイスっ! しっかりしろっ!酷い傷だ。

 なんてことだ。

 僕が絶対に助けるから頑張れっ! 

 博士っ、神馬博士っ、気を確かに持って。

 急いでラボに戻ろうっ』



 −−−−−−−−


『あぁ……… これが走馬灯ってやつか………

  アーキノイドの僕にも見ることができたんだね。そう、僕は君の世話係………

 生まれた時から君と一緒だった………

 沢山の思い出………

 楽しい時も悲しい時もずっと君を支えてきた… いや、支えられてきた。

 僕の真ん中にはいつもダイスがいた。

 ワタ……シ…丿…ココロ……… ダ、イス……サ…ヨ……ウナラ……可愛い…ボ………ウ……ヤ………』


 四葉のクローバーをあしらった栞が青い空からひらひらと舞いながらそっと地面に落ちた。


 −−−−−−−−


 爆発から三キロ地点。

 人の大きさ程の大きな氷の塊がいくつも散乱し、それがジュワーッと音を立てながら溶けている。


 その中でもひと際大きな塊の中から氷雨(ヒサメ)が這い出してきた。

 青い体は爆発で深い傷を負い、骨が露出している部分もあり、全体的に酷く焼けただれていた。

 自己再生でも即回復は出来ない状態だ。


「ぐおぉ、痛てー。

 自爆しやがった。

 咄嗟に距離を取ってアイスシェルに身を隠さなかったらやばかった」


 そう言いながら氷の円盤を生成した。

 これは驚異的なスピードで地面を滑走できる氷雨専用の乗り物だ。

 これでダイス達を追うつもりだ。


「くそっ、逃げた奴らを………」


 円盤に乗ろうとした時、背後に威圧感のある気配を感じた。


「『グリムリーパー』か………

 珍しいアーキノイドやノーマルズの屍ばかり集める貴様が俺に何の用だ? 

 俺はまだ死んでいないぞ………」


『グリムリーパー』。

 コロニーを支配するオーバーズの一人であり、他のオーバーズを監視する役目をガンマから与えられている。


 オーバーズの中でもガンマへの忠誠心が高く、他のオーバーズと違い、自分の意思で行動することを認められている唯一の者だ。


 氷雨の言う通り、アーキノイドやノーマルズが死ぬと、どこからともなく現れ、その亡骸を回収していく為、人体実験などをしているのではないかと、アーキノイド達の間で噂されている。


「氷雨、ブリザドに戻れ。

 ガンマ様の命令だ。

 自己再生も追い付いていないお前が行っても勝てる保証はない。

 奴らも強改造者だ。

 更にこの騒ぎを察知してか『アームド』もこれまでになく活発に動き出している。

 もし奴らを始末できても弱ったお前をアームドが狙ってくる可能性が高い。

 タウラスを始末しただけで十分だ」


「何っ!? アームドが?

 フッフッフッ、やっと尻尾を出しやがったか。

 丁度いい、俺が正体暴いてまとめて蹴散らしてやるっ。

 止めるなら貴様も凍らせてやるよ」


 アームドとは、ランダムにコロニーに侵入してはアーキノイドを破壊していく者達のこと。

 詳しい情報は把握できていないが、アンチアーキノイドということだけは知られている為、アーキノイド達から恐れられていた。


「お前に話しても聞く耳を持たないだろうから私が来た……… 解除。」


 グリムリーパーはリミッターを解除すると忽然と姿を消した。


 即座に氷雨はアイスヴェールを纏った。


「チッ! 消えやがった………

 そこかっ!」


 氷雨が振り向きざまに瞬時に生成した氷の刃を振り下ろすが何もいない。


「インパクト」


 グリムリーパーの声とともに氷雨の体に衝撃が走って膝から崩れ落ちた。


「私の前でアイスヴェールは無意味だ。

 足にダメージを集中させたから暫くは立ち上がれまい。

 自分のコロニーで回復を図れ。

 連れていけ」


「く、くそっ、全開なら貴様などに………」


 グリムリーパーがサンドラのアーキノイドに指示を出すと、ムーバーと呼ばれる移動運搬タイプのアーキノイドが現れ、倒れている氷雨を収納してブリザドへ走り出した。


 グリムリーパーはリミットすると、ワームホールを出現させてその中へと消えていった。


タウラスの走馬灯、切ないです、、、

レイ達はっ!?

次号お楽しみに!!



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タウラス…タウラス大好きです…悲しい… 人工の体に人の心、愛おしい日々でした 言葉が出ないです…いなくなったなんて信じたくないくらい…( ; ; )
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