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第12話 無限じご君



 そう言って地上へ向けて階段を駆け上がり、レイ達がその後に続く。

 するとすぐにアーキノイドの大群と遭遇した。

 戦闘タイプだ。


 タウラスの体表が一瞬溶けたように見え、ツルンとした形状になった。

 そう、彼はネオメタルそのものだ。

 その色は真っ赤な炎のような色で、近くにいるだけで焼かれそうな熱波が伝わってくる。


 相手を焼きつつ自らを保てるギリギリのライン。

 先程戦った時とは全く別物の恐ろしい気配を放っている。


 しかし、数で畳み掛けようとするアーキノイドをたった一人でどうできるのか。


 タウラスは構わず突っ込んで行く。


 するとタウラスの体全体からニョキニョキと無数の腕!? が伸び、それはまるで、それぞれが一匹の生き物のように動き、アーキノイド達を貫き、抑え、なぎ倒し、焼き溶かしていく。


 一人で相手をしているとは到底思えない、阿修羅さながらの様相だ。


 運良くタウラスを斬りつけることが出来てもすぐに自己再生してしまう。

 全盛期の自己再生のレベルが想像出来ない。

 あっという間にスクラップの山を作りながらどんどん登っていく。


 もう少しで地上というところ、少しタウラスの動きと再生が鈍ってきて攻撃を受けることが多くなってきた。


「おぁーーっ! 流石に数が多いなーっ! 

 それで最近のアーキノイドは強いよホント。

 外まであと少し。凄いのカマして一気に行くよっ! 

 よーく見といてっ」


 タウラスが無数に伸びた腕や手脚を大きく広げると体の前面が小さな気泡のような突起に覆われた。

 真っ赤な指弾のツブだ。


「無限地獄………」


 タウラスが呟くと、体の前面全体から指弾の連射が始まった。


 発射された指弾は自己再生の力が働き、本体のタウラスにUターンして戻っていく。

 つまりその指弾は敵を前後2回貫く。

 それが横殴りのやまない豪雨のごとく襲いかかってくる。

 相手にとっては正に無限に続く地獄だろう。

 高度な自己再生を駆使した技だ。


 無限地獄の雨がやんだ………


 地上階への扉の前は、焼き溶けたアーキノイド達が鉄屑の絨毯となり、形を残す者はいなかった。


「ふぅ~、完了! 

 これ全盛期だったらもっとこー、ジャジャーって凄いし疲れないんだけど、今じゃこんなもんかな。

 あー疲れた。よく見た? 

 分裂と自己再生にリソースを全振りするんだけど、その分、実は後ろからやられたらアウト」


「こんなもんじゃないって、今でも誰も太刀打ち出来ないと思うわ」


「そーかねー。

 まっ、とりあえず外に出てみようか! 

 何もいませんように」


 タウラス達が外に出ると、願い虚しくまた大量アーキノイド達が待ち構えていた。


「だよねー、でも諦めないよっ!」


  ドルンッドドドドドッ!


 地中から物凄い地響きがしてタウラスが驚いた。


「おおー、何だ何だ!? モグラでもいるのか!?」




 地面をドバッ!!と弾けさせて現れたのはダムドの半身だった。

 すぐさまダムドと合体して、またバイク仕様に変形した。


「驚かせてすまない。

 レイ、球体を外に出してみるんだ」


 レイがポケットから球体を出すと、即座に起動し周囲は薄い電磁バリアに包まれ、赤いレーザーが伸びた。


 この先にダイスがいるのだろう。


「それじゃあお別れの時だね。

 ほんの少しの時間だったけど、勝手ながら久々仲間が出来た気がして嬉しかったよ、ありがとう」


「タウラス、あなただけ置いてなんか行けないわ。

 一緒に戦って行きましょう!」


「いやいや、この数はまともにやったら勝ち目はない。

 君達は僕ら………

 の希望だ。

 ダイスに未来が出来た。

 それだけで十分だ」


「だめよ。勝ち目はないなんてやってみないと分からないでしょっ!」


 タウラスは嬉しそうな笑みを浮かべた。


「ダムド君、頼んだよ」


 ダムドはドルンッとフカシて応答すると、レイをアームでヒョイッと背中に乗せてベルトで固定した。


「ちょ、ちょっとダムド、勝手なことしないでっ!」


「我々が一緒に戦ってもこの数では勝ち目はない。

 タウラスには策があるようだ。

 ここにいて足手まといになるよりもタウラスの願いを引き受けることが最善じゃないか?」


「………」


「よしっ!それじゃ頼んだよっ!」


 そう言うとタウラスはドロッと溶けて大きな二つの水たまりになった。

 水たまりはモコモコと立ち上がりながら人形を作り、一回り小さい真っ赤なタウラスが2体完成した。

 少し大きめの1体が話しだした。

 彼が本体のタウラスのようだ。


「お待たせ。

 この少し小さい彼の名前は『無限じご君(ムゲンジゴクン)』。

 可愛いネーミングでしょ。

 彼は力尽きるまでさっきの無限地獄を繰り出し続ける。

 今度は彼が君達の行く手を切り開くからアーキノイド達の壁を突破してくれ!」


「おぅ、よろしくな! 早速行こうぜっ!」


「えっ!? でも力尽きるまでって死んじゃうの?」


「心配ご無用。

 俺はタウラスだからな。

 タウラスが生きてれば俺はいつでも復活可能だ、気にするな。

 ただ、今回はタウラスも一貫の終わりかもな。

 このアーキノイドの大群の中に嫌な感じのが混じってるぜ」


「無限じご君っ!! 余計なことは言わないっ! 相変わらずお喋りだなぁ。

 とにかく、しっかり二人を頼んだよ」


「おぅ、任せとけっ! じゃぁなタウラスっ、死ぬなよ!」


「行くしかないのね……… ありがとうタウラス、無茶しないでね」


 そして無限じご君とレイ達は走り出した。

 アーキノイド達は行く手を阻んで激しく攻撃を仕掛けるが、無限地獄の前に次々と破壊されていく。


 分厚い壁のようなアーキノイド達の中を猛スピードで掘り進み、遂に群がるアーキノイド達を振り切った。


 無限じご君は今度は振り返って追ってくるアーキノイド達を立ち止まって撃破する。


「オッケー、行く手が開かれた。

 ダムド君、最速でゴーだ!」


 そう言う無限じご君は既に自己再生もほとんど機能しなくなり、その姿はスライムのようになってしまっている。


 タウラスの声に変わった。


「突破出来たようだね。

 こんな時代だけど君達の未来が明るいものであるように願う。

 ダイスと仲良くしてあげてね。

 それじゃあ、、、最速でゴーだっ!」


 ダムドが応答する。


「また会おうタウラス。

 さらばだ」


 ダムドがトップギアで走り出した。

 みるみるアーキノイド達と無限じご君が離れていく。


「タウラスよぉ、また会おうなんて言われたな。

 嬉しいな。

 でもダメなんだろ?」


「ハハハ、そうだな……… やっぱりこの中に『オーバーズ』がいるね。

 全盛期ならどうかってとこだけど、今日は随分疲れてるからな、ハハハハ………」


 オーバーズ。

 十あるコロニーそれぞれに君臨しているガンマ直属の者達のことだ。


 彼らはアーキノイドではなく強改造者だ。

 なぜ強改造者がガンマの手足となっているのか。

 彼らは淘汰戦争でガンマをギリギリまで追い詰めたが敗れた者達。


 死の直前でガンマに捕らわれ、記憶を上書きされてガンマの駒とされてしまったのだった。


 その会話を最後に無限じご君は赤い水たまりとなって動かなくなった。


 タウラスの下へも戻らない。


 一瞬、煌めいたかと思うとパッと燃え上がり灰となった。


無限じご君、、、消えてしまって、自分で書いていて悲しくなってしまいました。

次号、タウラスの言っていたオーバーズとは!?


読んでいただき、ありがとうございます。

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独特なネーミングセンスもキャラづけにはいいですね。
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