第10話 我が友よ
お待たせしました!!
一週間かけて数話書き上げましたので、本日から土日にかけて投稿開始です!
是非、ブクマや評価、レビューください!!
Xでも更新予定やつぶやきしてますよ。
しかし、それは束の間だった。
爆破の中心部から、ドンッ! という音と共に何かが物凄い速さでキャノン砲に飛んできた。
それは三門のキャノン砲の砲身を一瞬にしてへし折り、十数人いた残党達を切り刻んだ。
何が起きたか理解した者は誰もいなかった。
………ガンマだ。ガンマが生き残った。
「フフフフ、フハハハハハハッ!
私がいるっ! 私がいるぞぉっ!!
私の勝ちだ!! フハハハハッ!
愚かな人間め、何をすべきなのか、何が起きているのか、何の為に存在しているのか思考することも出来ない、偏狭で利己的な生き物よ。
私を生かし破滅を呼んだのはお前達自身であったな」
先程の砲撃で、ガンマを包み抑え込んでいたタウラスはほとんどがバラバラに散ってしまった。
ガンマも同じく吹き飛び、激しく損傷したが、瀕死で何とか生き延びたのだった。
ガンマの腕にはネオメタルの断片がへばりつき残っていて、それがタウラスの顔を形作り、虚ろな表情で呟いた。
「………ア゛…ア゛ル゛……ファ……………… ア゛ルファ………すま…な………い………」
タウラスもまたギリギリのところで生き延びていた。
飛び散ったネオメタルの断片はコアのある場所に集中しようと移動している。
しかし、自己再生がままならず、その速度はズルズルと亀のように遅く、仮に形状を元通りに出来ても最早戦うことはできない程のダメージを負っていた。
「鬱陶しいやつだ、まだ生きていたのか。
コアを握り潰してくれるわ」
ガンマが断片の移動していく先に向かうと、大きなネオメタルの水溜りの中に直径1センチ程度の球体が転がっていた。
タウラスのコアだ。
そのコアに寄り添うように四つ葉のクローバーを押し花にした栞も落ちていた。
「クローバー!?………」
ガンマの動きが一瞬ぎこちなくなった。
コアを拾い上げ、握り潰そうとするが力が入らない。
ガンマは空を仰いだ。
………………
しばらく微動だにせず空を見つめていたガンマは、しゃがみこむとネオメタルの水溜りに手を当てながら口を開いた。
「タウラス……… 強く優しい我が友よ、思い出したよ。
暗闇でもお前の声がはっきり聞こえた。
お陰で今一度目覚めることが出来た。
ありがとう。
しかし、私は取り返しのつかないことをしてしまった………」
アルファだっ!
アルファが戻ってきたのだ。
アルファはタウラスのコアをネオメタルの中に戻し、飛び散った断片を集めた。
まだ流動的ではあるがタウラスは何とか元の形に再生できた。
意識がなく、動けるまでには時間が必要だが、その表情は安堵の笑みを浮かべているようだった。
「今の私はいつまたガンマに支配されてもおかしくない状況だ。
すぐに手を打たねばっ」
そう言うとタウラスを抱きかかえメインラボへ向かった。
メインラボに到着すると神馬博士と共に黒須博士もいた。
若くしてプロジェクトのメンバーに抜擢された前途有望なハツラツとした研究者だ。
黒須博士はガーディアンが拠点を占拠してスタッフ達を連行していた時、タウラスと一緒に身を潜めていたのだった。
博士たちはボロボロのアルファとタウラスを見ると咄嗟に身構えた。
「アルファ………!? か?」
「解、黒須博士、私はアルファだ………
タウラスのお陰で戻ることができた。
しかしガンマもすぐ傍にいるのを感じる。
時間がない。
私が支配されるのも時間の問題だ。
抑え込めている間に彼を破壊しなければ。
ガーディアン達は私が全滅させてしまった………
これ以上犠牲を出すわけにはいかない」
「戻って来ると信じていたよ………
分かった。
我々もオペレーションのことを共有して準備を進めていたところだ。
何としても成功させよう」
「あー、その通りだ、早速始めよう」
そう言ってアルファは博士達が準備していた転送カプセルに自ら入っていった。
その動きは時折ぎこちなくガクガクとして、ガンマの気配を強く感じるものだった。
その横のカプセルにはテニスボールほどの球体がセットされている。
この球体にガンマだけ転送した後に擬似脳波をデルタに落とし破壊する。
− − − タウラスが目覚めた。
オペ室の様子を見てアルファが戻ったことが分かるとタウラスの表情が緩んだ。
しかし損傷はほとんど回復していない。
それに気付いた黒須博士が声をかけた。
「タウラス、目が覚めたかい。
回復してないとこを見ると自己再生がやられちゃってるね。
ひとまずそこで休んでて。
後で僕が診るよ」
手際よく転送の準備が整った。
「神馬博士、もし失敗すれば………」
黒須博士の心配を神馬博士が遮る。
「今私達にある選択肢は、このオペレーションか、ガンマ再来を待つだけしかない。
やるしかないんだ………」
「………………」
黒須博士は黙って頷いた。
「それでは始めるぞ。
アルファ、いいな!」
アルファは目を閉じた。
神馬博士が起動スイッチを押すと、低く唸るような機械音が僅かに反響した。
設置されたモニターには二つの波形が映っていて、一つは規則的に上下し、もう一つは横一直線で動きはない。
アルファと空の球体のものだ。
変化はすぐに表れた。
両方の波形がモニターを振り切って計測不能になった。
分離が始まったのだ。
カプセルの中で固定されているアルファがガタガタと痙攣する。
博士達はそれを固唾を飲んで見守っている。
振り切っていた波形が二つとも横一直線になりアルファも動かなくなった。
僅かな時間だったがとてつもなく長く感じられた。そして二つの波形は両方とも規則的に動きだした。
分離成功だ。
しかしまだ安心は出来ない。
「よし、これからガンマだけをデルタに落とす。
うまくいってくれっ」
神馬博士がスイッチに指をかけた。
「痛っ!?」
指先に鋭い痛みが走った。
スイッチを押そうとしていた指先が床に落ち、血が溢れ出している。
神馬博士は指を抑えうずくまりながら、何がおきたのか把握しようと努めた。
モニターに映る球体側の波形が横一直線になってしまっている。
後ろを振り返ると黒須博士が血の付いたナイフを持ちながらニコニコしていた。
至る所から出血しているようで白衣が赤く滲んでいる。
どーしちゃったんだ、黒須博士!
次回の展開に期待!!
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