第8話・イタ飯(後編)
ナレーション「中央レジスタンス連合のメンバー『モモ』に会うネクラとメガネ。敵兵の1人を取り逃したことに狼狽するネクラであったが、ミハラから連合軍のルールを諭され、落ち着きを取り戻す。そして話題は捕えたもう1人の敵兵にシフトする」
ネクラ「ミハラさん」
ミハラ「なぁに?」
ネクラ「……先に謝ります。今から私怨で勝手な行動をさせてください」
ミハラ「私怨
ネクラ「ガッ!」
正規軍兵士1「グエッ」
ナレーション「ミハラが聞き返す間もなく、縛られた敵兵を蹴りつけるネクラ」
メガネ・ミハラ・モモ「!」
ネクラ「ガッ!【バキッ】」
ナレーション「そして、敵兵のクロスレンチをへし折るネクラ」
モモ「ス
メガネ「アホ!何しとんねん!」
ナレーション「何か言いかけるモモと、飛び出してネクラを静止するメガネ」
メガネ「いくら敵でも縛られとる人蹴ったらアカンやろ!負傷者やで!?」
ネクラ「……負傷者なら許していいんですか?」
メガネ「え?」
ネクラ「私の銃はさっきこの人に壊されました。ボロい銃ですが、私にとっては2年近く使い続けた大切な銃でした。だから、その銃を壊された分のカタをつけたまでです。負傷してるかどうかと許すかどうかは別問題でしょう?」
メガネ「いや、制裁するにしたって、怪我が治ってからでええやん?いくら戦場でも、反撃できない人間をなぶるのは人の道に反するやろ!」
ネクラ「どうせコウノトリが全部治すし問題ないでしょう?最悪死んでも生き返る安い命なんですから」
メガネ「!」
ネクラ「そもそも先に喧嘩を売ってきたのはコウノトリ側です。理不尽に人の日常を奪ってきたくせに、自分たちは何も失わない……。さっきだって、私の銃を奪って、復讐の機会も奪おうとして……。そんな連中相手に人の道を通す必要がありますか?」
メガネ「……」
ミハラ・モモ「……」
ナレーション「誰も何も言わなかった。ひとしきりの沈黙が続いた後、最初に口を開いたのはモモだった」
モモ「お気持ちは察しますが、今後、敵兵への過剰な武力行使は控えてください。生体管理の加護が出す非常信号で他の敵兵を呼ばれて、無駄な戦闘に繋がる恐れがあります」
ネクラ「……すみません」
一同「……」
メガネ「……あ、あの、『生体管理の加護』ってなんですか?」
モモ「簡単に言えば、人間の健康状態を自動で管理する技術です。主に持病の抑制や負傷時の応急処置で使われるものですが、対象が生命の危機に陥ったり、睡眠以外で意識を失ったりした際には非常信号が発信されます」
メガネ「えっと、で、その非常信号が発信されるとヤバいことになる……んですよね?」
モモ「以前、連合軍で捕らえた敵兵を拷問にかけた際、信号の発信が原因で基地の場所を特定されて、敵の襲撃を受けたというインシデントがありました。故に、現在の連合軍では、身柄を拘束しておくための専門部隊を除いて、捕らえた敵兵とは原則接触しないことがルールとなっています」
メガネ「あ、そ、そうなんですか。じゃ、危ないから離れような」
ナレーション「ネクラを引っ張り、敵兵と距離を取らせるメガネ」
ミハラ「……うん、まあ、そーゆーわけで、あんまり感情的に動くのはやめてほしいかな~」
ネクラ「……気をつけます。本当にすみませんでした」
ミハラ「……敵兵の装備を確認したいって件ももういいかな?」
ネクラ「……あ、じゃあ、せっかくですから
メガネ「【パシッ!】すんません、危なっかしくて見てられんし、ウチからよく言い聞かせてやめさせますわ」
ナレーション「ネクラの頭をひっぱたくメガネ」
ミハラ「……そう」
メガネ(こんな凶暴な子やないはずなのに……。精神的に追い詰められて不安定なんやろか……?この子はウチが守らないと……!)
ミハラ(よっぽどコウノトリを嫌ってそうだな……)
モモ(感情的な言動もさることながら、金属製のクロスレンチを素手で破壊する馬鹿力……。この三つ編み、要注意人物かもしれない……)
ナレーション「ネクラの暴挙で空気が冷え切る中、少し遠くの方で山の消火活動が始まっていた。次回、『コウノトリの野望』第9話に続く!」
***
ショウ「妹」
ハン「ZZZ」
ショウ「妹ッ!【パシッ!】」
ハン「んあッ!?」
ショウ「イタ飯の『イタ』!発表します!」
ハン「えーもういいスよ。どうせ適当なんでしょ?」
ショウ「今度はまともだから!聞いてよ!【パシッパシッ】」
ハン「聞きます!聞きますから叩かないで!」
ショウ「あー、ゴホン。『イタ飯』の正体……それは、中華料理です!『炒めた飯』を略して『イタ飯』……つまり『炒飯』のことです!」
ハン「ほーん……普通に『炒飯』って呼べば良くないスか?」
ショウ「業界用語です。寿司を『シースー』って呼ぶみたいな感じ」
ハン「ほーん【ホジホジ】……割とまともっスね。今までの中じゃ1番それっぽい説じゃないスか?」
ショウ「あり?」
ハン「あり」
ショウ「我が家の『イタ飯』は『炒飯』ということで、異論ないでしょうか?」
ハン「いいんじゃないでしょうか」
ショウ「では、炒飯を正式にイタ飯として認定します!【パチパチパチパチ】」
ハン「わー【パチパチ】」
ショウ「メシの話してたら腹減ってきたね。外食でもどう?」
ハン「今から『イタ飯』こと『炒飯』食べに行きます?」
ショウ「中華って気分じゃないなー」
ハン「じゃ、どこ行きたいとかあります?」
ショウ「サ○ゼリヤ」