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第5話・階層〜故郷のリンゴ〜

ナレーション「山火事から逃れたネクラとメガネ。新たな隠れ場所を探して歩きつつ、反政府勢力の仲間を募る作戦を語り合っていたが、彼女達の前にクロスレンチが飛来した」


メガネ「クロスレンチ……!」


ネクラ「しまった……仕留め損なってたんだ……!」


正規軍兵士1《そちらの行動はクロスレンチのセンサーを通じて全て把握しているッ!こちらの指示に従って行動せよッ!もし不審な動きを見せた場合、直ちに撃つッ!まずは両手を挙げろッ!》


メガネ「ヒエッ」


ナレーション「クロスレンチに取り付けられたスピーカーから警告が伝えられる。メガネが素直に手を挙げる一方、ネクラはクロスレンチを見つめたまま動かない」


メガネ(何ボンヤリしとんねん、撃たれるで!)


ネクラ「……」


ナレーション「目配せを送るメガネ。それでもネクラは反応しない」


メガネ(不服なのはわかるが、せめて従うフリだけでもしてくれ!頼むから!)


ナレーション「メガネの必死さが伝わったのか、ようやくネクラが手を挙げた」


メガネ(せや、それでええ。ここは大人しくしておくのが得策や)


ナレーション「と、メガネが安堵した瞬間、ネクラはアサルトライフルを構え、クロスレンチに向けて発砲した!」


メガネ(あっ)


ナレーション「山麓の林に金属の衝突音が響く。そして、次の瞬間、ネクラのアサルトライフルは銃身がひしゃげていた」


ネクラ「!?」


正規軍兵士1《もう一度だけ警告するッ!不審な動きを見せた場合は直ちに撃つッ!武器の性能差を示すために、今はあえて銃を撃ったが、次は脚を撃つッ!》


ナレーション「先程ネクラが発砲した瞬間、実はクロスレンチも発砲していた。そして、ネクラの弾丸ではクロスレンチを撃墜するに至らず、逆にクロスレンチの弾丸はネクラのアサルトライフルを破壊したのであった!」


メガネ(アカンって!敵を刺激するな!)


ネクラ「……」


正規軍兵士1《お前たちが抵抗する意味はないッ!3つ数える間に手を挙げろ!……3、2、1」


ネクラ「……フフッ」


メガネ「!」


ナレーション「微笑むネクラ。刹那、メガネの脳裏で過去の記憶が再生される」


メガネ(わ……笑った!ヤバい、あの顔……あの時と一緒や!ウチらが高校生の頃……テニスの県大会の予選でダブルス組んどった時や!)


ナレーション「以下、()()である」


***


ショウ「ショートコント」


ハン「『階層』」


ハン「【ピンポーン】……【ピンポーン】……うーん、不在かな?」


ショウ「【ピッ】フハハハハ!待っていたぞ!」


ハン「うわっ!?」


ショウ「久しく挑戦者が現れなかったので退屈していたところだ!」


ハン「えっ!?」


ショウ「知っていると思うが、改めて説明しておこう。当アパート『メゾン宮内』は上のフロアに行くほど住人ヒエラルキーが高くなる。そして、このアパートに入居するためには、住みたい部屋の下のフロアの全住人と決闘して勝つという裏ルールをクリアしなければならない!」


ハン「いや


ショウ「私のもとへ来たと言うことは、3階の居住権を得るべく勝負を挑みにきたのであろう?言っておくが、私は甘くはないぞ!何故なら私は2階の住人でありながら、事実上、最上階の住人でもあるからだ!」


ハン「あの


ショウ「本来、私は5階レベルの実力を自負しているが、あえて2階にいるのはザコを上のフロアに入居させないためだ!有象無象は下の階で蟻とでも戯れているのがお似合いだからなッ!」


ハン「……」


ショウ「おっと前置きが長くなってしまったな。そろそろ決闘を始めようか……」


ハン「……あ


ショウ「我がコードネームは『階層の番人スコーピオン』!電光石火の暗殺拳の使い手だッ!さあ、君のことも教えてくれ!」


ハン「……えっと、すいません。『ヤマモト運輸』です。お荷物をお届けに伺いました」


ショウ「えっ……ああああッ」


ハン「オートロック開錠していただけますでしょうかー?」


ショウ「あッあッはい!【ピッ】い、今そっちに行きます【ガチャッ】」


ハン「あ、上の階までお届けしますのでお部屋でお待ちいただいて結構ですよー。……えーっと、『鈴木ジュンイチ』様でお間違いないでしょうか?」


ショウ「はッはい」


ハン「『鈴木ヨシコ』様からのお荷物です。こちらの伝票にサインをお願いします」


ショウ「はッはい【カキカキ】」


ハン「ども、あざしたー」


ショウ「あ、あざしたー。【ガチャ】」


ショウ「……」


ショウ「ああああああああああああああああああああああああああああああああ」


ショウ「……」


ショウ(……母さんから荷物って……なんだろ?【ビーッ】……リンゴと……手紙?)


ショウ「何々?……『ジュンイチ君、お元気ですか?電話もメールも出ないので、勝手ながら荷物を送りつけちゃいました。ヤスヒコおじさんからリンゴを沢山もらったので、お裾分けします。大学生活は大変かと思いますが、無理に頑張らなくても大丈夫ですよ。留年したのは残念ですが、それで何もかもが終わったわけじゃないですからね。案外、人生ってなんとかなるものです。お父さんも心配しているので、落ち着いたら連絡よこして、そのうち実家にも顔出してください。いつでも待ってます。母より』……【グスッ】……ああ、何やってんだろうな、俺……」


***


ナレーション「以上、()()であった」


メガネ(そう……あの試合の時もネクラがミスを連発して……急に笑ったと思ったら、ネット際ギリギリでボールに食らいつく滅茶苦茶なプレースタイルを始めおった)


ナレーション「クロスレンチに向かってネクラが走り出す」


メガネ(つまり、あの笑いは『ヤケになった証』なんや!自分のミスに責任を感じて、ヤケになって、笑って自分を鼓舞して、突拍子もない行動に走る……!さっきクロスレンチを撃ち落とせなかったから、尻拭いしようとして捨て鉢になってもーてるんや!)


ナレーション「咄嗟にネクラを引き止めようとするメガネ。だが、伸ばした手は空を掴み、ネクラには届かない!」


メガネ(アカン、止まってくれ……!壊れてまう……!あの試合の後、アンタ、半月板の故障で県大会出場を諦めることになったけど、次はもっと酷く身体を壊して、もっと取り返しのつかないことになってまうような気がする……!)


ナレーション「メガネが必死に思索を巡らせるも、その思いとは裏腹に、ネクラはクロスレンチに飛びかかり……」


メガネ(ネクラッ!)


ナレーション「そして、銃声とともに地に落ちた……。次回、『コウノトリの野望』第6話に続く……」

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