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第3話・焼き芋

ナレーション「レジスタンス組織の敗残兵『ネクラ』と『メガネ』。山林の拠点に身を潜める彼女たちに正規軍の追手が迫っていた」


正規軍兵士1《反乱軍に告ぐー!反乱軍に告ぐー!命の保証はするー!命の保証はするー!降伏せよー!降伏せよー!》


正規軍兵士2《2回言う必要あります?》


正規軍兵士1《あっバカ!余計なこと言うなって!声拾っちゃってるから!》


ナレーション「拡声器の音声が山中に鳴り響く中、音の出処を探り、ネクラが逃走の機会を窺う」


ネクラ「……敵は結構下まで行ったみたいですね」


メガネ「……みたいやな」


ネクラ「動きますか?」


メガネ「せやな。でも、念には念を入れて、一旦ウチが拠点の周りを目で直接確認してくるわ。アンタはスタンバっといて」


ネクラ「わかりました。気をつけてくださいね」


ナレーション「アサルトライフルを構え、忍び足でゆっくりと拠点から出るメガネ。銃口と視線の向きを揃えたまま上下、左右、前後とくまなく警戒する」


ネクラ(こういう時に先陣切ってくれるのって、本当に頼りになるな……)


ナレーション「率先して危険な役を担う先輩の姿に尊敬の念を抱くネクラであった。……だが、当の先輩メガネが気概を見せたのも束の間、彼女は何かに仰天し、飛び跳ね、脱兎の如く拠点へと逃げ帰ってきた」


メガネ「アカンアカンアカン」


ネクラ「うわっ」


ナレーション「狼狽するメガネ。その様子を見て逆に冷静になるネクラ」


ネクラ(この人が私の分まで慌ててくれるから、割と平常心いられる……のかな?)


ネクラ「……で、何があったんですか?」


メガネ「アカンアカン」


ネクラ「落ち着いてください」


メガネ「……いや、ゴメン。……えーっとな、さっき、上見たら、クロスレンチがおったんや」


ネクラ「クロスレンチ?敵がいたってことですか?」


メガネ「ちゃう。クロスレンチ自体がおったんや」


ネクラ「?」


ナレーション「補足。『クロスレンチ』こと『01式十字歩兵銃』は正規軍で使用されている小銃である。4つの砲身を持つ特異な見た目から工具になぞらえて『クロスレンチ』という俗称がついた。また、この武器の呼び名から派生して正規軍を『クロスレンチ軍』、その兵士を『クロスレンチ兵』と呼ぶこともある」


メガネ「えーっとな、だから、クロスレンチが、こう、上の方でグルグル回っとったんや」


ネクラ「……」


ナレーション「メガネの話があまりにも要領を得ないので、拠点の入り口から顔を出し、事態の把握を試みるネクラ。山の上の方に目を向けると、回転するクロスレンチが水平を保ちながら浮遊しているのが見えた」


ネクラ「……なるほど、わかりました。要するに、敵がクロスレンチを飛ばしてこちらの位置を探っているってことですね」


メガネ「せや!クロスレンチが飛んどるんや!ウチが言いたかったのはまさにそれやねん」


ネクラ「遠隔で操作してるんですかね?ドローンみたいに」


メガネ「その辺りはわからんな。自走式かもしれへんし。ただ、ウチらを探してるのは間違いないやろし、アレが飛んどる以上は迂闊に動けへんわ」


ネクラ「……撃ち落としますか?」


メガネ「いや待て。敵がその辺におんねん。銃声でこっちの位置がバレてまう」


ネクラ・メガネ「……」


ネクラ「……じゃ、どうします?アレ……」


メガネ「……どーしたもんか……。アレを放っとけば動けんし、かといって撃てば音でバレるし……」


***


ショウ「草と枝と葉っぱ集めたよ」


ハン「お。じゃ、焼きますか、芋」


ショウ「【ゾリゾリゾリゾリ】」


ハン「何してんスか」


ショウ「火おこし。こーやって木の棒と板を擦り合わせて、摩擦で火がつけられるんだよ。知らないの?」


ハン「いやいや、わざわざそんなことしなくても、普通にライター使えばいいじゃないスか」


ショウ「山、来てるんだよ?『スローライフ』、楽しまなきゃ勿体ないよ?」


ハン「スローライフ?まあ姉上の好きなよーにやってください」


ショウ「【ゾリゾリゾリゾリ】……疲れた。やっぱライター貸して」


ハン「え?諦めるの早いっスねー」


ショウ「ライター!」


ハン「まーまー。せっかくのスローライフなんスから。これ使いましょうよ」


ショウ「何それ?」


ハン「『ファイヤースターター』っス。【シュッシュッボワッ】……とまあ、こんな風に金属を擦って火ぃつけるんス」


ショウ「貸して!【シュッシュッ】」


ハン「……」


ショウ「【シュッシュッ】」


ハン「……」


ショウ「……」


ハン「……やっぱりオイラが火、つけましょーか?」


ショウ「いい!ライター貸して!【ザリッ】あっ……指痛い……」


ハン「……マッチにしときます?」


ショウ「する!【ポキッ】」


ショウ・ハン「……」


ショウ「……次は?」


ハン「え?」


ショウ「次はッ!?」


ハン「あ、えーっと、あとは火炎放射器くらいしかないっス」


ショウ「貸してッ!【ゴォーッ!】」


***


メガネ「……うーん。撃つか、撃たないか……」


ネクラ「【クンクン】……なんか焦げ臭くないですか?」


メガネ「どっちが正解なんや……?」


ネクラ「メガネさん?」


メガネ「クソッ!早よ決めんとアカンのに!」


ネクラ「メガネさん!」


メガネ「うわっ!驚かさんといてや!」


ネクラ「さっきから焦げ臭い匂いしません?」


メガネ「え?【クンクン】……せやな、なんやろ?敵が狼煙でもあげとるんやろか?」


ネクラ「ちょっと外見てきます」


ナレーション「用心しつつネクラが拠点から這い出て山の下の方を見下ろすと、赤く燃え上がる木々が見えた」


ネクラ「メガネさん、山火事ですよ!」


メガネ「山火事!?」


ネクラ「早く逃げましょう!」


メガネ「え、でもクロスレンチが


ネクラ「【パァン!】撃ち落としました!もう覚悟決めて逃げるしかないですよ!」


メガネ「えーッ!?」


ナレーション「敵の追跡の中、突如発生した山火事。不測の混乱によってメガネとネクラは強制的に突き動かされることになる。逃げた先で彼女たちを待ち受ける運命やいかに?次回『コウノトリの野望』第4話に続く!」


***


ハン「……いや~、やっぱり兵器は料理に使うもんじゃないっスね~。芋全部丸焦げっスよ」


ショウ「……」

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