第28話・前菜
ハン(『ベジファースト』なる健康法があるらしい。様々な食べ物の中から野菜を優先することで、血糖値の急上昇を抑えるとかなんとか。一方、『ファースト』といえば伝統的な礼儀作法に『レディーファースト』というのがあるっス。女性をエスコートする時にドアを抑えて『お先にどうぞ』なんて気取って、女性を優先的に先に行かせるヤツね。そこでオイラはふと思ったっス。これからの時代、野菜と女、どちらを優先すべきか?……というわけで、ちょっとした検証をしてみたいと思います)
ハン「姉上。オイラって立派なレディーっスかね?」
ショウ「あ?レディーじゃないの?成人済みだし」
ハン(よしよし。姉上はオイラをレディーと認めているっス。前提条件はクリア。後はこのキャベツをさりげなくドアの横に配置して、と。……さて、野菜とレディーがひとつの部屋の中に同時に存在している状況はできた。いざ検証開始。部屋から出る時、姉上はどちらを先に通すか?キャベツならベジファースト、オイラならレディーファーストっス!)
ショウ「さてと、そろそろ出かけようか」
ハン(きた!姉上はどっちを優先する!?)
ショウ「【ガチャッ】うわっ、外は結構冷えるな」
ハン(キャベツか!?)
ショウ「頭がスースーする」
ハン(オイラか!?)
ショウ「あーあ、丸坊主にしたのは失敗だったなー【バタン】」
ハン「……」
ショウ「あれ、妹?何やってんの?早く出て来いよー」
***
ナレーション4「前回のあらすじ。メガネは眼前の尻を揉んで『スケベ』と罵られてしまった」
プリケツの主「こっち来て見てみろよ。ほら、綺麗だろ?朝焼け」
メガネ「はあ」
プリケツの主「この辺の標高は大体3500メートル。民間人はおろか政府や軍の人間すら立ち入らねぇ。まさに俺たちだけのための秘境さ。……けどよ、日々俺たちだけでこの日の出を拝んでると、こんなにも神々しい絶景を独占してる罪でバチが当たるんじゃないかって心配にもなってくる」
メガネ「はあ」
プリケツの主「まあ、つまりだ。罪深い性分なのはお互い様ってことよ。お天道様を独り占めしてきた俺と、欲に抗えず俺のケツをお触りしちまったハレンチなお前……バチ当たり同士、これから仲良くしようぜ!」
メガネ「他人の顔の上に尻乗っけて寝てる人が一番バチ当たりやと思います。危うく酸欠で死ぬとこでしたし」
プリケツの主「……」
メガネ「……」
プリケツの主「……お前、『ハダカデブネズミ』って知ってるか?」
メガネ「……はい?」
プリケツの主「アフリカに生息するげっ歯類の一種さ。『ハダカ』の名が表す通り、体毛がほとんどないネズミだよ」
メガネ「???」
プリケツの主「このハダカデブネズミ、とにかく生命力が強くて、ガンやら老化やら低酸素状態に耐性があるらしい。おまけにげっ歯類の中では破格の長寿で、30年も生きるそうだ」
メガネ「さっきからなんの話しとるんですか?」
プリケツの主「ちょっとアイツらを見てみろ」
メガネ「アイツら?」
ナレーション4「プリケツ女が指さす先。メガネが先程まで寝床として使っていたダンボールがある。そのダンボールの上にハツ、ブレン、そしてメガネと面識のないバニーガールもう1人が重なり合って眠っている」
メガネ(あ、いつの間にか知らん顔が1人増えとる)
プリケツの主「ハダカデブネズミは地下に巣穴を掘って群れで暮らしているんだが、寝る時はあんな風に積み重なる習性があるんだ。冷たい地中でも暖を取れるように身を寄せ合っているんだと」
メガネ「……はあ」
プリケツの主「あの積み重なった女ども、何かに似てると思わねぇか?」
メガネ「何かとは?」
プリケツの主「重量感のある物体が積み上がってる様子……まるで土嚢みてぇだろ?」
メガネ「土嚢……うーん、どうやろ?」
プリケツの主「土嚢、すなわち袋のように積み重なって眠るネズミ……そんなネズミから着想を得た先人が編み出した格言、それこそが『袋のネズミ』よ!」
メガネ「ん?」
プリケツの主「言ってることは至ってシンプルだが、寒冷地じゃこれがなかなか侮れねぇ。そう、寒くて眠れない時にはネズミのようにみんなで積み重なって暖を取ればいい!」
メガネ「んん?」
プリケツの主「動物の生存戦略は偉大な模範だ!そして先人の言葉は優れた教訓だ!!俺たち雪ウサギ隊は険しい環境でも強く逞しく生きられるよう、動物や先人に倣って生きてるのさ!!!」
メガネ「『袋のネズミ』ってのはそういう意味とちゃうのでは?」
プリケツの主「ま、つまりはそういうことだ」
メガネ「はい?」
プリケツの主「ハダカデブネズミに倣えってこと。積み重なって寝る以上、顔の上にケツが乗ることもある。今後、就寝中にうっかり俺のケツがお前の鼻や口を塞いでも大丈夫なように、お前もハダカデブネズミのように酸欠への耐性を付けろ!」
メガネ「無理!」
ナレーション4「『ハダカデブネズミ』ではない。正しくは『ハダカデバネズミ』である。そのことには誰も気が付かないのであった。続く」




