第27話・ビワ
ハン「Q.パンはパンでも食べられないパンってなーんだ?A.腹パン。何故なら!『食べる』ものではなく『喰らう』ものだからだッ!!【ブォン!】」
ショウ「【サッ】……」
ハン「避けんなよ!」
ショウ「おや妹。戻っていたのですね」
ハン「白々しい!なんのつもりっスか?なんで丸坊主でマッパになってるんスか?しかも身体中に落書きなんかして。てゆーか身体どころかそこら中落書きだらけだし。服にカバンに……歯ブラシに電話に化粧品も」
ショウ「落書きではありませんよ。わかりませんか?聡いあなたならば心当たりがあるでしょう?」
ハン「あーもう食料品までこんなにしちゃって」
ショウ「不動産屋、行ってきたのでしょう?今なら私がやっていることの意味が理解できるはずですよ?」
ハン「あ、そうだった!さっきはよくも騙してくれたっスね!しかも2度も!!よくよく聞けば『シンリテキカシ』って事故物件のことらしいじゃないっスか!?不動産屋が教えてくれたっス!『貸し』だの『菓子』だの適当なホラ吹きやがって……今日という今日は許さんっス!!1発殴らせろ!!!【ブォン!】」
ショウ「【サッ】拳を収めなさい」
ハン「避けんなってば!」
ショウ「そう話を急ぐものではありませんよ。勘違いとはいえ、誤った情報を喋ってしまったことは紛れもなく私の非。だからこうやって心から反省し、悔い改めようとしているのですよ」
ハン「なんスか?頭丸めて出家でもしたつもりっスか?姉上が何をしようが勝手っスが、こちとら1発殴らにゃ気が済まんスよ!?縁を切るのはそれからだ!」
ショウ「話を急ぐなと言っているでしょう。別に私は出家などするつもりはありません。ただ、我々の身を守るための準備をしていたのです」
ハン「身を守る?」
ショウ「左様。お前は先程『事故物件』と言いましたね。過去にその部屋で何があったのか、事の詳細は聞きましたか?」
ハン「不動産屋の話じゃ、アパートを改築する時に業者が重機の操作を間違えて部屋に突っ込んだらしいっス。その時に巻き込まれた部屋の住人が亡くなったとかなんとか」
ショウ「なるほど……死亡事故があった、と。住人の方もさぞ無念だったでしょうに」
ハン「何が言いたいんスか」
ショウ「私が心配なのは、お前があの世に連れていかれるのではないかということです。うらめしさのあまり亡くなった住人の怨念がお前に取り憑いて、悪さをしようと企んでいるに違いない」
ハン「んなオカルトな」
ショウ「お前、部屋の内見に行ったのでしょう?ひょっとしたら既に憑かれているかもしれません」
ハン「……」
ショウ「しかし安心なさい。こちらも『シンリテキカシ』で対抗するのです」
ハン「……どゆこと?事故物件バトルっスか?」
ショウ「私が言っているのは『神』の『理』に『歌』の『詞』と書いて『神理的歌詞』。人智を超えた力を持つ歌詞が私とお前を守るのですよ」
ハン「はあ?」
ショウ「小泉八雲の『耳なし芳一』は知っていますか?盲目の若者である芳一が身体中に平家物語の歌詞を書くことで平家の亡霊から身を隠そうとするも、耳にだけはうっかり歌詞を書き忘れてしまい、耳を持ち去られてしまった……という怪談です。そう、昨今の現代日本におけるサンドイッチがいかにして耳なしになったかの起源をユニークに語った逸話ですね」
ハン「はあ」
ショウ「芳一の話からもわかるように、歌詞には悪しき存在を退ける力があるのです。私と同じように、お前も全身にくまなく歌詞を書いて、亡霊から身を守りなさい」
ハン「……なるほど。話はわかったっス」
ショウ「どれ、私が書いてあげましょう。服を脱ぎなさい」
ハン「……ところで姉上。サンドイッチにはハムサンドとか、たまごサンドとか、いろんな種類があるっスよね?ここで問題っス。『キレてる』サンドイッチってなーんだ?」
ショウ「え?」
ハン「答え。『仏の顔もサンド』っス!【ブォン!】」
ショウ「【ボゴッ】ウッ!何しやがる!!」
ハン「『2度あることはサンドある』って言いますからね。おおかたそんなことだろうと思ってたっスよ。姉上なら間違いなく嘘をごまかすために嘘で上塗りする。そんなんでオイラを懐柔できると思ったら大間違いっスよ!【ブォン!】」
ショウ「【サッ】ま、待てよ!今の話のどこが嘘だって言うんだよ!?それに、殴るのは1発じゃなかったのか!?」
ハン「『耳なし芳一』が身体に描いたのは平家物語の歌詞じゃなくて般若心経っスよ」
ショウ「あ、そっか」
ハン「ほらボロが出た。やっぱその場しのぎの嘘だったじゃないっスか!」
ショウ「しまった!」
ハン「嘘1回につきゲンコツ1発。これで手を打つっス。だからあと2発!さっさとおとなしく殴られんかい!!【ブオンッ!】」
ショウ「ヒェッ!【サッ】堪忍!堪忍して!!暴力反対!!!」
ハン「問答無用!!【ブォンッ!ブオンッ!】」
ショウ「【サッ】だ、だってさ、よく考えてみなよ!?今、深夜0時だぞ!?こんな夜中に営業してて内見までさせる不動産屋なんて絶対怪しいじゃん!?」
ハン「【ピタッ】……確かに」
ショウ「な?な?そうだろ?その不動産屋、多分モノノケかなんかだよ!」
ハン「……そんな気がしてきた」
ショウ「だろ?お前、絶対にヤバいもんに関わっちまってるって!ほらほら、そうとわかれば身を隠さなきゃ。急がないとあの世に連れてかれちゃうよ?歌詞書いてやるから服脱ぎな」
ハン「だから歌詞じゃなくて般若心経だってば」
***
ショウ「……」
ハン「……」
不動産屋の悪霊「【ギギッ】……あとひと押しで生贄が手に入りそうだと思って娘を追いかけて来てみれば……誰もおらぬ。見失ってしまったか?……まいったなぁ。主様は久々の新鮮な人魂を楽しみになさっているというのに。手ぶらで帰った日にはさぞがっかりされるだろう。いや、下手すれば機嫌を損ねて私に罰をお与えになるかもしれん。……いかんいかん、それだけは避けねば!……こうなれば仕方ない。先程の娘は諦めよう。代わりにその辺の適当な人間を新たな生贄に仕立て上げ、力ずくでも連れ帰る他なかろう【ギギッ】」
ハン「……行ったっスかね?」
ショウ「……多分ね。でも、一応朝まではじっとしてよう」
***
メガネ「ZZZ」
ハツ「ZZZ」
ブレン「ZZZ」
不動産屋の悪霊「むぅ……火を焚いた跡はあれど人の姿は見えぬ。このような人形の燃えカスを持ち帰ったところで主様は納得せんだろう……」
ナレーション3「うー寒い寒い。こんな山の中だとおしっこ行って戻ってくるのもひと苦労だわ」
不動産屋の悪霊「ぬ?」
ナレーション3「さてと、次のシーンに備えて原稿のチェックしておくかな。……えーっと?次は午前3時にメガネが起床するところから、ね」
不動産屋の悪霊「おお!人がおった!!渡りに船よ!!!」
ナレーション3「ん?」
不動産屋の悪霊「ふむ。先程の娘と比べると肉付きは劣るが、背に腹は代えられぬ。この者を主様に捧げてどうにか機嫌を取るとしよう」
ナレーション3「え?え?どちら様?」
不動産屋の悪霊「悪く思わんでくれ。お前を連れて行くのは本意ではないが、私とて主様に叱られたくはないのだ」
ナレーション3「ちょ、ちょっと!」
不動産屋の悪霊「念のため、人形の燃えカスも拾っておくか。私が懸命に人探しに努めた証拠品として認めてもらえるやもしれん。……さて、日が昇るまでに戻らねば」
ナレーション3「あ~れ~!」
***
メガネ「……うーん」
メガネ(……全身がポカポカしとる。……ウチ、死んだんやろか?……雪山におったはずやのに、ちっとも寒くあらへん……)
メガネ「……んぐぐ」
メガネ(……寒くはあらへんけど、なんだか息苦しいような……いや、ほんまに息苦しいわ!顔の上に何か乗っとる!!)
メガネ「んぐっ!んぐぐっ!!ブハッ!!!……なんやコレ!?【サワサワ】」
メガネ(デカくて弾力があって……部分的にスベスベしてて……フワフワした毛玉のようなものが付いとる……ま、まさかこれは!?)
メガネ「これは……バニーガールの尻!?【サワサワ】」
プリケツの主「……」
メガネ「……はっ!?」
プリケツの主「【ニヤリ】……スケベ」
メガネ「!?」




