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第24話・ノンアルコール(後編)

ショウ「私の名前はショウ=ライス。キャバレークラブ『キャバクラ幕府』のオーナー兼店長。そして、源氏ネーム『ヨリトモ』で売り出し中のキャバ嬢でもある。ある日、お客さんの指名により、妹と私の立場が逆転。妹がキャバ嬢、私がウェイターに。まさかまさか、この私が指名ナンバーワンの座から陥落!?……と、一時は冷や汗をかいたものの、所詮、妹の拙い接客など姉の足元にも及ばない。案の定ボロを出し、退場処分に。そんなこんなで、未熟者の妹を教育すべく、私はもう一度華やかなドレスを身に纏い、キャバ嬢の立ち振る舞いを披露するのであった!!」


***


ショウ「ご指名ありがとうございます~!『ヨリトモ』です~!今宵は目一杯サービスさせていただきますね~!うっふ~ん」


ハン「……」


ショウ「何お飲みになります?」


ハン「ブランデーください。ハイボールで」


ショウ「はい【スッ】」


ハン「……?これは?」


ショウ「何って、ボールですよ~。はい【スッ】」


ハン「……『はい、ボール』じゃないんスよ!『ハイボール』!!」


ショウ「でもこれ、今世紀最大級の掘り出し物ですよ?ほら、ブランデーのサイン入り!」


ハン「ブランデーの……サイン?」


ショウ「え?ご存知ない!?助っ人外国人『マイケル=ブランデーJr.』」


ハン「知らねーよ!」


ショウ「伝説の4割打者ですよ!?」


ハン「いや、なんで野球選手の話になってるんスか!酒のブランデーを炭酸で割ったのをくれと言ってるんス!!」


ショウ「ああ、そっちか。じゃ、はいコレ【トクトク】」


ハン「そうそう。酒をグラスに注いで……って何故そこで電池を入れる!?」


ショウ「え?()()()()がいいんでしょ?」


ハン「バカ!『単三電池』じゃねーよ!!『炭酸水』!!!」


ショウ「さっきから紛らわしいんだよ!」


ショウ・ハン「ギャーギャー」


スズネ(……はあ。私、こんなところで何やってるんだ?こんな寂れたキャバクラのウェイターになりたかったのか?違うよな?……そもそも私、何がしたかったんだっけ?……軍人になって出世?お国のために戦う?それとも、コウノトリに気に入られる?……違うだろ!)


***


スズネ(……ああ、そうだ。きっかけは小4の晩春。【ギャーギャー】の葬式の都合で学校を忌引き欠席して、家族一同【ギャーギャー】に帰省してた日の昼時だった。親戚の大人たちがバタバタ慌ただしく駆け回ってる横で、邪魔にならないように、私はボンヤリとテレビのニュースを眺めていた)


アナウンサー「速報です。今日午前11時頃【ギャーギャー】市の小学校で大規模な自爆テロと見られる事件が発生しました」


小学生のスズネ「!?」


スズネ(テレビの中継映像には、私が通っていた【ギャーギャー】小学校と思しき場所が映し出されていた。すぐに確証が持てなかったのは、アナウンサーが読み上げた小学校の名前を私が聞き逃していたこと、つい昨日まではなかった立ち入り禁止のテープが物々しく敷地に張り巡らされていたこと、そして昨日まではあったはずの校舎が見る影もなく全壊していたことが原因だった)


アナウンサー「この事件には国際シンジケート『太平洋【ギャーギャー】が関与している可能性が高いとして、現在、警察による捜査が進められています」


小学生のスズネ「……」


***


スズネ(葬式を終えて【ギャーギャー】市に帰ってみると、自爆テロが起きていたのはやはり【ギャーギャー】小学校だった。犯人はシンジケートの幹部1名と構成員3名。内部抗争で組織を追われた幹部たちが小学校の校舎に逃げ込み、数時間に及ぶ立て籠りを実行。最後は無関係な児童、教員、関係者や近隣住民含む約600名を巻き込んでの自爆。校内にいた人間は全員即死。近隣住民からも30名を超える死傷者が出た。助かったのは、当日学校にいなかった児童と教員の数名のみ。私が学校の様子を見に行ったのは事件から数日後のことだったが、今でも鮮明に思い出せる程にその光景は強烈だった。剥き出しの鉄骨と瓦礫の山、真っ黒な焦げつき、校舎の残骸の中で死体を探す警察と消防、【ギャーギャー】……。惨状を目の前にして、心からこう思った。『ああ、巻き込まれたのが自分じゃなくて良かった』と。……あの日から、私は軍人を志すようになった。何が起こっても自分の命だけは守れる術と武器を得るため。そして、軍でしか知り得ない脅威の情報を手に入れて、有事の際に戦うか逃げるかをいち早く判断するため。……そう、私は立派な信念があって軍人をやってるわけじゃない。自分が生き残りたいだけなんだ!)


ショウ「ハァ、ハァ……クソッ、怒鳴り合っても埒が開かない。ここは一時休戦といかないか?」


ハン「ゼェ、ゼェ……いいでしょう。仕切り直しといこうじゃないっスか」


ショウ「……じゃ、もっかい酒を注文するとこからね。……うっふ~ん、何お飲みになります?」


ハン「焼酎のロッ……」


ショウ「……」


ハン「ロックシンガーは求めてないっスからね?」


ショウ「……チッ」


ハン「ロックはやめて水割りにしとくっス」


ショウ「み、水……?」


ハン「水割り」


ショウ「【ピチャチャチャチャチャ】」


ハン「それは『水切り』。川でやる遊びっス」


ショウ「【ネッチョリ】」


ハン「『水飴』。デンプンの加工品」


ショウ「【ゴトン】」


ハン「『水差し』。いわゆるピッチャー」


ショウ「ピッチャー、第1球投げました!【シュッ】」


ハン「うわっ、危ねっ!【サッ】何しやがるっスか!」


ショウ「だってピッチャーって言ったから」


ハン「だから野球の話じゃないんスよ!もういいっスよ、こっちで勝手に酒注ぐんで。【トクトク】……この際ストレートでいいか」


ショウ「喰らえ剛速球!【シュッ】」


ハン「うおっ!【サッ】だからさぁ!!」


ショウ「だってストレートって言ったから」


ハン「野球から離れろ!まったく……ポンポンと球、投げてこないでくださいよ。バッティングセンターじゃないんスから」


ショウ「バッティングセンター?やだなぁ、バッセンなんかと一緒にしてもらっちゃ。なんてったってここはキャバクラ……打撃練習じゃなくて投球練習をする場ですよ」


ハン「は?」


ショウ「だって、キャバクラってキャッチボールを楽しむ場所じゃないですか……会話という名のキャッチボールを、ね!


ハン「【シュッ】」


ショウ「【ボゴォッ!】ブベェーッ!何しやがる!!」


ハン「今のは『ストレート』。正拳突きっス!」


ショウ「クッソー!こっちは頑張って場を盛り上げようとしてるってのに!!たかが冗談にキレて手ェ出すなよ!!!」


ハン「うるさい!大人しく聞いてりゃ調子に乗りやがって!!そんなにジョーダンが好きなら上段突きくれてやんよ!!!」


ショウ・ハン「ギャーギャー」


スズネ(……これまではそれなりにうまくやれてきた。兵士としてどんな戦地に送られても【ギャーギャー】を徹底して、必ず五体満足で帰還してみせた。人間関係にしても、つかず離れずの味方を数人だけ作って、孤立も派閥争いも躱してきた。階級だって、捨て駒にされず、軍の重要な情報が耳に入って、それでいて【ギャーギャー】に巻き込まれない程度のポジションに昇進してきた。我ながら、上出来な世渡りができていたと思う。……しかし、今後はそうもいかない。長年従ってきた上官がいなくなって、その跡を継ぐことを求められている。しかも組織のトップ……中央地区の最高司令官だ。そんな不相応な肩書きと責任は【ギャーギャー】。……でも、それは大した問題じゃない。最大の懸念事項は現政権のコアメンバーがアンチY染色体協会の古株で固められていることだ。所詮、私は元幕府側の人間。すなわち外様。いつ切り捨てられてもおかしくない。それがわかっていながら、【ギャーギャー】する程馬鹿じゃない。仮初めの頂点の座につかされる前に、力ある強者の下につくことが必要だ。私がコネを持っている強者と言えば……シャーリー?……いや、あり得ない。あれはヤバすぎる。どんなに力があろうと理性を失った『怪人』に【ギャーギャー】ない。あんなのに関わって廃人になるのは御免だ。……いっそ退役して一般人として生きていこうか?……いや、これもダメだ。まだまだ不安定な情勢下で軍の情報網を手放すわけにはいかない。元幕府側という立場上、退役したとて目はつけられるだろうし、武器を返納していざという時に丸腰なのもキツい。軍に残って協力的なふりを続けてる方がマシだ。……待てよ?思い切って反乱兵に寝返るか?……無理だな。【ギャーギャー】を手土産に仲間にしてくれと頼んだところで、ハチの巣にされるだけだろう。第一、元々劣勢だった上に反乱軍制圧作戦でさらに弱体化した反乱兵側につくこと自体、メリットがない。うっかり元幕府の連中に出くわして、素性がバレて【ギャーギャー】される可能性だってある。……ああ、どうしたもんか)


ショウ「ハァ、ハァ……おい待て。私たちは殴り合いの喧嘩をしたかったわけじゃないだろ?」


ハン「ゼェ、ゼェ……こんなことになったのも姉上のせいじゃないスか」


ショウ「ハァ……確かに接客態度に問題があったことは認める。だが、本来の目的を思い出せ。私たちはキャバ嬢の高みを目指していたはずだ。こんなやり方じゃ高みには到達できない。違うか?」


ハン「……そっスね。頭を冷やしましょう」


ショウ「というわけで、もっかい酒の注文から


ハン「いや、酒はやめときましょう。絶対また揉めるし」


ショウ「キャバクラで酒出さなきゃ本末転倒じゃない?」


ハン「フードメニューがあるでしょ。ほら、うちの店、他店との差別化のために本格的な料理を出してるじゃないスか。リピーター獲得を狙って、今後はそういう強みもアピールすべきだと思うんスよね」


ショウ「うん、なるほど」


ハン「じゃ、オイラが初見の客になりきるんで、フードメニューを勧めてみてください」


ショウ「わかった」


ハン「……えーっとォ、ヨリトモさんのォ、オススメってェ、なんですかァ~?」


ショウ「そうですね~。フードメニューなんていかがでしょう?」


ハン「フードメニュゥ~?それってェ~、どんなのがあるんですかァ~?」


ショウ「いろいろ取り揃えてますよ。今月は海鮮系の揚げ物フェア開催中でして、イチオシはカニクリームコロッケですね」


ハン「へェ~、おいしそォ~」


ショウ「他にはアジフライ、エビフライ、カキフライなんかもオススメですね」


ハン「あァ~、いいですねェ~」


ショウ「あとは犠牲フライなんてのも……」


ハン「ん?」


ショウ「犠牲になるのはお前じゃ!もも肉をよこせ!!ケーッ!!!」


ハン「何故こうなる!?」


ショウ・ハン「ギャーギャー」


スズネ(……こんな時、オサガリ兵長ならどうするだろうか?自分以外誰一人として信用できる者がいない、敵ばかりの【ギャーギャー】、どう生きる?……いや、あの人は生き残れなかったじゃないか。考えるだけ無駄だ。幕府じゃ辣腕兵長なんて呼ばれてたけど、最後は不器用に散っていった……)


***


スズネ(……あれは4年前、大宮戦争の真っ只中のこと。確か、暗黒作戦の開始から4ヶ月目あたりだったかな。あの日は兵長と2人でドームの境界の見回りをしていた)


オサガリ「……なあ、スズネ。この埼玉……いや、人類に未来はあると思うか?」


在りし日のスズネ「はい?」


オサガリ「シャーリーが張った暗黒のドームの中の人口が約100万人。一方、コウノトリに連れ去られた人間の数が推定【ギャーギャー】。……何十億という数の人間がこの地球上からいなくなったんだよな」


在りし日のスズネ「……何が言いたいんですか?」


オサガリ「コウノトリに勝ったところで、残された100万ぽっちの人間が文明を再生できるだろうか……ってことさ」


在りし日のスズネ「……」


オサガリ「今、ドームの中じゃ食料やらエネルギーやらをギリギリまで切り詰めて人々の生活を維持しつつ、コウノトリの侵攻を食い止めている。……が、防戦ばかりではいずれ物資が尽きて餓死者が出るだろう。それは紛れもなく人類の敗北だし、人々を守る軍人としては回避しなければならない未来だ。……ただ、なんらかの方法で【ギャーギャー】……つまり、コウノトリに勝利したと仮定して、ごく僅かに残った人類が高度に発展した社会を取り戻せるとは思えない。これだけの混乱の後では食糧難を解決するのも時間がかかるだろうし、インフラの整備にも人手は必要だ。そもそも十分に技術を使える人間がいなければ【ギャーギャー】ままならない」


在りし日のスズネ「……」


オサガリ「埼玉以外の地域も放置するわけにはいかない。人の手が加えられなくなった農地、山林、河川は荒れるだろうし、道路や建造物の老朽化も進む。【ギャーギャー】や工場や発電所なんかは大事故の危険を孕んでいる。なんなら、既に事故ってるかもしれない。しかも、そういう施設がジパングのみならず世界各地にあるわけだ。とても100万人でどうにかできるもんじゃないだろう?」


在りし日のスズネ「……なら、いっそのこと、人類の居住区をこの暗黒のドームの中に限定してしまうのもひとつの手じゃないでしょうか?戦争さえ終われば軍事関係に割いていたリソースを別のことに回せますし、絶対安全なドーム内で暮らす限りは外部も気にする必要がありません。生活の水準は大きく下がるでしょうが、ギリギリ生きていけなくもない気がします。……まあ、そういうことを決めるのは政治屋の仕事なんでしょうけど」


オサガリ「……そうだな。確かにギリギリ生きられるかもしれない。でもな、スズネ。私はそんな世界で【ギャーギャー】とは思えない。見なよ。空は昼も夜も真っ黒。居住スペースはものすごく狭苦しい。少ない食料を分け合って、明日の生活を憂いながら毎日を過ごす……。君は、そういう日々に幸福を見出せるか?」


在りし日のスズネ「……」


オサガリ「……それから……シャーリーの心配もある。……ドームはシャーリーの力で展開されているわけだが……アイツも人間だ。……体調を崩す事だってあるだろうし……いつか寿命も来る。……そうなれば、ドームを前提とした絶対安全な生活が成り立たなくなる」


在りし日のスズネ「……確かにそうですが……でも、それって【ギャーギャー】?」


オサガリ「……」


在りし日のスズネ「それより、早く見回り済ませて帰りましょうよ。明日は非番ですし、ゆっくりと


オサガリ「なあ、スズネ。私と一緒にコウノトリ側につかないか?」


在りし日のスズネ「……!?」


オサガリ「ドームの中で窮屈に生きるくらいなら、いっそコウノトリに人類の未来を託してみるのがいいんじゃないだろうか!?」


在りし日のスズネ「兵長


オサガリ「コウノトリから幕府に届いた通達によると、ヤツらの目的は男と女が別々に暮らす世界に人間を連れていくことらしい。こちらの人命と人権を保証するとの記述もある。悪いようにはならないんじゃないか……というか、むしろ今までよりずっとまともな暮らしができるんじゃないか……そんな気がするんだ。私は積極的に信じてみたい」


在りし日のスズネ「兵長


オサガリ「とは言え、コウノトリに協力するってことは、人類を裏切るということでもあるし、不信感だとか良心の呵責だとか、いろいろ思い悩むことはあるだろう。【ギャーギャー】もな。でも、【ギャーギャー】。行動の責任は全て私が負うし、裏切りの汚名も全部私がおっ被る。君に迷惑はかけない。だから


在りし日のスズネ「兵長!!……さっきから何を言ってるんですか?」


オサガリ「……私は、人類を裏切る。……そして、コウノトリに協力する。……君にもついてきてほしい。……そう言ってるんだ」


在りし日のスズネ「……」


オサガリ「……」


在りし日のスズネ「……さっきの話、理解はしました。今の世界には明るい未来がないからコウノトリに賭けてみたいという考え、納得できます。兵長についていくのも、私は構いません」


オサガリ「じゃあ


在りし日のスズネ「あくまでも!……あくまでも、理屈はわかったって話です。……実際問題、協力すると言っても、その提案をどうやってコウノトリに持ちかけるんですか?こちらからコンタクトを取る手段はないでしょう?机上論じゃ意味がないんですよ?」


オサガリ「いや、あるんだ!有力なアテがひとつ……!」


***


スズネ(……その後、兵長はコウノトリと内通していたアンチY染色体協会と接触し、人類をコウノトリに引き渡すための工作を行った。結果、戦争は見事【ギャーギャー】。兵長はコウノトリに感謝され、新しい世界で幸せに暮らしました。めでたしめでたし……とはならなかったんだよな。……結局、兵長は最後まで苦しむことになった。敵に寝返った罪悪感と売国奴の汚名に。何よりも、裏切りが人類を救うという大義のためではなく、惚れた女と結ばれたいという私欲によるものだったという嘘……そう、自分についた嘘に。……あの人は自分に厳しすぎたんだ。国のために青春を捨てて戦って戦って、戦い疲れた時にほんの少しだけ自分の幸せを願っただけなのに、そのことにすら負い目を感じてしまっていた。……私は違う。自分に激甘だ。自分の身が1番可愛い。生きるためなら、平然と汚い手段を取る。……だから、厳しい兵長がどう生きるかを考えても、甘い私にとっては行動の模範になり得ない。本当に、考えるだけ無駄だ。自分の身の振り方は自分で決めなきゃならない)


ショウ「ケェッ!ケェーッ!!」


ハン「イ゛テ゛テ゛テ゛テ゛テ゛」


スズネ(私には兵長のような人望はない。サイコパワーも使えない。非力だ。……でも、嘘に関しては兵長に勝る才能があると自負している。事実、中央レジスタンス連合は3年もの間、反乱兵を欺いた。あの組織が正規軍の罠だとバレなかったのは、私の手回しによる功績が大きかったはずだ。傷口から血の代わりに【ギャーギャー】なんて思う程に誠実だったあの兵長だけでは、間違いなく計画が破綻していた。……あの兵長だけでは……兵長……。……兵長は墓場まで心に秘めた嘘を持っていけなかった。……むしろ、墓場まで持っていくべき嘘を口に出してしまった時点で、死に場所が決まったのかもしれない)


ショウ「トドメだッ!奥義『必殺ピッチャーフライ』!!重さ3キロのチタン製ピッチャーが貴様の脳天をカチ割ってくれるわ!!!【ブォン!】」


ハン「フッ」


ショウ「!?」


スズネ(……兵長、私は墓場まで持っていきますよ、嘘。生き汚さを隠して、これからも任務に忠実な軍人を演じます。人を騙し通して、生きられるところまで生きてみせます)


ハン「ぬかったな姉上!こっちにゃ『フライ返し』があるんスよ!!【カキーン】」


ショウ「ヒェッ!【サッ】危うく当たるところだっ


スズネ「【ボゴッ】ウッ」


ショウ・ハン「あ」


スズネ「うーん……【バタン】」


ショウ「ど、どどどどーしよ!?」


ハン「と、ととととりあえず119!」


***


ナレーション3「目を覚ますと、そこは救急車の中であった」


スズネ「……ん」


救急隊員1「あ、意識が戻りました!」


救急隊員2「ほーい」


スズネ「……えっと


救急隊員1「ああ、待って待って。頭部を強く打ちつけた形跡があるので、動かないでください。病院で精密検査を受けるまで、絶対安静です」


スズネ「……はあ。……あの、すいません。お店の人たちは何か言ってました?」


救急隊員1「お店?」


スズネ「キャバクラです。私がさっきまでいたキャバクラ。お店の人たちには急に倒れたせいでご迷惑をおかけしましたから」


救急隊員1「……キャバクラ?」


スズネ「?」


救急隊員1「……お姉さん、廃墟で倒れてたんですよ?」


スズネ「??」


救急隊員1「取り壊し予定のビルの中で人が倒れてるって匿名の通報があって、現場に行ったらお姉さんがうつ伏せで倒れてたんです。……ですよね?」


救急隊員2「そうそう。で、事件の可能性があるってことで、今、警察が捜査中。ま、その辺の飲み屋で酔っ払って、ふらふら歩いてたらビルに入り込んでコケた、とかじゃないですかね?」


救急隊員1「いやいや、んなことはないでしょ。ほら、呼気中アルコール濃度だってほぼゼロですし」


スズネ「……」


スズネ(そんなはずは……だって確かにキャバクラに入って……あれ?どんなキャバクラだったっけ?……誰かと話してたような気がするけど、全然思い出せない)


ナレーション3「スズネを乗せ、街道を走る救急車。サイレンを鳴らし、飲み屋街を抜け、病院へと向かう。道中、目の端に映った共同墓地に何か引っかかるものを感じたスズネであったが、強い疲労感に襲われ、眠りに入った……。ってなところで、今回の『コウノトリの野望』はここまで!次回もお楽しみに!」

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