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第22話・ノンアルコール(前編)

オサガリ《……本当は……国を裏切ってでも欲しい女がいたんだよ》


???「……」


ナレーション3「時は少し遡り、オサガリがメガネに本音を吐露していた頃。マンション・レジデンス反吐川サイドから南西に約4キロ離れた河川敷で、クロスレンチの通話機能を使って2人の会話を聞いていた女がいた」


オサガリ《……アンチY染色体協会の勧誘を受けた時、夢を見たよ……。……軍人をやめて……新しい世界で惚れた女とささやかな2人暮らしをするって夢さ。……でも結局、私は最後まで惚れた女に支えてもらうことが叶わなかったし……惚れた女の支えにもなれなかった……!》


???「……」


ナレーション3「半ば盗聴するように会話を聞いていた女の名は『スズネ』。大宮戦争の戦前からオサガリに付き従っていた腹心である。中央レジスタンス連合においては『モモ』の偽名を名乗っていた」


オサガリ《いいか!?人生を賭けて、惚れた女の拠り所になれ!それから、惚れた女に拠り所になってもらうんだ!私が犯した失敗を繰り返すんじゃない!》


スズネ「……」


ナレーション3「表向きには連合軍のナンバー2、裏では鸛下正規軍の上級司令官として活動していたスズネだが、シャーリーの出現時には一目散に逃亡を図り、正規軍の部下、反乱兵、果てはオサガリまで置き去りにした。迅速な判断と逃げ足により、正規軍のメンバーの中では唯一の生存者となったのであった」


***


ナレーション3「所変わって中央地区・首相官邸。反乱軍制圧作戦から3日後。召集されたステキファイブの面々の前でスズネが戦果の報告をしていた。中央地区最高司令官・オサガリの代理である」


スズネ「……拘束を抜け出した反乱兵を再度拘束すべく交戦していましたが、午前6時10分頃、与野本町の怪人がマンションの北東に出現。最高司令官命令により作戦は一時中断とし、敵味方問わず避難を優先する体制を取りましたが、私以外、現場にいた者のほとんどは逃げ遅れ、怪人の攻撃を受けたものと思われます。暗黒のドームが消えた後に現場を調べたところ、反乱兵は205名中204名の死亡が確認されました。正規軍は一般兵396名、下級司令官31名、上級司令官5名、最高司令官1名が再生不可の心神喪失、つまり廃人化しています。その他、身元不明の死傷者が1名発見されています」


サローイン「ん、身元不明?まさか、民間人の犠牲者が出たのか!?」


スズネ「戸籍のデータベースを検索した限りでは民間人の中に該当者はいませんでした。他の地区から紛れ込んだ反乱兵の線もありますが、いかんせん身分や所属の手がかりがなく、依然身元の特定には至っていません。明らかになっているのは死因がワサビの誤嚥による窒息ということと、遺体の近くに『次の語り部に幸あれ』とのメモ書きが残されていたことだけです。戸籍未登録の浮浪者が偶然マンションの付近にいた可能性が高いと見て、引き続き調査中です」


サローイン「そうか。話を遮ってすまなかった。何かわかり次第情報の共有を頼む」


スズネ「はい。現在、生死不明の反乱兵1名の捜索と、先述の通り、身元不明の死傷者の身辺調査を続けています。……中央地区の報告は以上です」


サローイン「みんな、質問や指摘はあるか?」


一同「……」


サローイン「……ないな。スズネ、もう下がってもらって構わない。現場で任務に当たって大層疲れているところ、報告の為に呼び付けてすまなかった。しばらくはゆっくりと休んでくれ」


スズネ「いえ。では、私はこれで失礼


サローイン「ああ、下がる前にひとつだけ。これから大規模な組織の再編が行われる予定だが、次の中央の最高司令官はスズネ、お前に任せたい。オサガリの後継者となると、やはりお前しかいないと思うんだが、どうだ?」


スズネ「『どうだ』と言われましても、簡単には……」


サローイン「すぐに返事をくれとは言わない。じっくりと考えて、休暇明けに意思を聞かせてくれたらいい」


スズネ「……はい。では、今度こそ失礼します」


ナレーション3「会議室を後にするスズネ。報告を終えて肩の荷が下りた安心感からか、ドアの前で『ふぅ』と一息つく。いざ帰らんと歩み出した時、ふとドア越しに、自分の名前が発せられるのが聞こえた」


アバラ「いいんですか、スズネなんかを最高司令官にして?」


サローイン「他に適任がいないだろう?」


アバラ「作戦中、怪人が現れた瞬間真っ先に逃走した疑惑があるらしいじゃないですか。有事の際に逃げる奴にトップを任せたら駄目でしょ」


ランブ「まあまあ。逃げたお陰で生き延びて、今日だって報告に来てくれたわけだし、ね?」


サローイン「ああ。それに、避難命令を出したのはオサガリだ。上官の命令に従って行動したのであれば、問題はない」


アバラ「そもそも、オサガリもスズネも元は幕府側の人間で、裏切って協会側に来たわけでしょ?経験上、1度でも裏切りを働いた人間は何度だって平然と裏切るわけで


チャック「おいアバラ、いつまで喋ってんだ!報告会が全然進まねーだろーが!」


サローイン「ちょっと待て、会議の発言順を


アバラ「いや!今言わせてもらいますが、反乱兵を1人逃したのだってわざとなんじゃないかと睨んでて


ナレーション3「会議室の外にまで響き渡る激しい口論。退室後も廊下から室内の様子を伺っていたスズネであったが、ドアの横でバツの悪そうな顔をしている警備員と目が合う。明らかに室内の会話が聞こえているであろう警備員から向けられる憐憫の視線に気まずさを覚え、敬礼をしつつ、そそくさと退散した」


***


ナレーション3「数日後。軍から1ヶ月の特別休暇を与えられたスズネは夜の街中をフラフラと彷徨っていた」


スズネ(……)


ナレーション3「彷徨いながら、苛立っていた。惨憺たる戦果、上官の事実上の死、軍での肩身の狭さ……重々しい現実が脳内に浮かんでは、精神の余裕を圧迫してゆく」


スズネ(クソッ……最悪な気分だ……!何か……何か強い刺激が欲しい……とにかく今はどうにかして、この気分を晴らしたい……!)


ナレーション3「気付けば、ネオン輝く飲み屋街に引き寄せられていたスズネ。彼女のこれまでの人生において、打算的な人付き合いで飲酒する機会こそあれど、バーやスナックなどは自発的に行くような場所ではなかった。今宵、頭を空っぽにすべく、適当な店で飲み明かそうと決意するも、理性のブレーキは予想以上に強硬で、なかなか入店に至らない。そんな中、ふと、とある店の看板が目に留まる」


スズネ「『キャバクラ幕府』……?『幕府』か……」


ナレーション3「かつて、軍人としてのキャリアの始まりとなった『幕府』。もしかしたら、また『幕府』に関わることで新たなキャリアが拓けるかもしれない……無意識のうちに希望を求めたのか、吸い寄せられるようにスズネは寂れたビルの一角へと赴いた。果たして、店の入口の向こう側、彼女を待ち受ける未来や如何に……?さて、今回の『コウノトリの野望』はここまで!次回もお楽しみに!」


***


ハン「【チリンチリン】いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」


スズネ「……1名です」


ハン「お客様、大変恐れ入りますが、現在、当店では在籍中のキャストが1名のみとなっておりまして、必然的にこちらの『ヨリトモ』がお相手させていただくことになります。よろしいでしょうか?」


ショウ「こんばんは~!初めまして~!将軍の『ヨリトモ』で~す!」


スズネ「……」


ショウ「うっふ~ん」


スズネ「あの、お姉さんにチェンジってできますか?」


ハン「え、オイラでございますか?もちろん可能でございますよ」


スズネ「じゃあ、チェンジで」


ショウ「!?」

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