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第19話・寿司(中編)

ナレーション2「正規軍による制圧作戦と反乱兵の抵抗。その応酬の最中、突然空が暗闇に覆われる。敵の捕縛にあたっていたミハラは一転、反乱兵たちに逃げるように指示を出し、グランドクロスに乗って仲間のもとへ赴かんとするのであった」


ミハラ「この場にいる全員に告ぐ!先程、『与野本町の怪人』が出現し、我々に脅威が迫っている!正規軍、反乱軍問わず全ての者は直ちに交戦をやめて、光の射す場所まで移動しろ!護送車の近くにいる者はコンテナに乗れ!人が集まったら許可を待たずに発車して構わない!護送車から遠い者はとにかく暗闇の外側まで走れ!」


ナレーション2「マンションの周辺を飛び回りつつ、クロスレンチの拡声機能でアナウンスをするミハラ。敵も味方も逃がそうと声を張るが、火炎瓶によるダメージのためにグランドクロスが飛行困難に陥り、墜落してしまった」


ミハラ「クソッ!こんな時に限って!」


ナレーション2「マンション横の街路樹に引っかかるグランドクロス。砲身から投げ出され、木の枝に宙吊りになるミハラ。偶然近くにいた部下の兵士によって救出される」


正規軍兵士33「み、ミハラさん!大丈夫ですか!?」


ミハラ「た、助かったよ、ありがとう。だが、私のことはいい。早く避難しろ」


正規軍兵士33「あの、『与野本町の怪人』ってなんなんですか!?何が起こっているんですか!?」


ミハラ「説明している時間はないんだが……そうだな……簡単に言えば、あまりにもヤバい『通り魔』さ」


正規軍兵士33「と、通り魔!?それって


ナレーション2「【ドゴォン!】ミハラと兵士の会話を邪魔するかのように、遠方で鈍い音が鳴り響く。見ると、護送車とコンテナが横転していた」


ミハラ「クソッ、あっちはもう手遅れかもしれない……君は護送車と反対の方向に行け!」


正規軍兵士33「ミハラさんはどうするんです!?」


ミハラ「マンションの中にいる人間を逃す!」


ナレーション2「マンションの玄関へと走るミハラ。操作盤に番号を入力するが、()()()()ックの設定が変更されており、扉が開かない」


ショウ「大トロ一丁!」


ハン「へい!」


ナレーション2「パクッ……はふほへふははふほほははひひへほふふーふふほ、ほほほほほひひふへははんはんへーははふはっへっひは……ゴクン。銃口を向けられながらも、ミハラが説得を試みる」


ミハラ「……非常事態につき、急戦を申し入れる!どうかこの場から逃げてほしい!」


反乱兵一同「……」


ミハラ「て、敵が迫っているんだ!私の責任で、君らを捕まえることはしないと約束する!だから一刻も早く逃げてくれ!」


ナレーション2「必死に訴えるミハラであったが、反乱兵たちは動かない」


ミハラ(だ、ダメだ……!全然信用してもらえない!この状況も正規軍が打った芝居じゃないかと警戒されてるんだ!一度裏切った私にはこいつらを動かす力がない……!)


ナレーション2「無力感を噛み締めるミハラ。睨みを利かせる反乱兵たち。物々しい静寂の中、場の空気を裂くようにミハラの背後で銃声が響いた」


ミハラ「なっ!?」


反乱兵一同「!」


ナレーション2「振り返ると、宙吊りのミハラを助けた兵士が巨大な女に肩を掴まれている。クロスレンチからの発砲で抵抗を試みる兵士であったが、銃弾は女をすり抜けるように飛んでゆき、命中することはなかった。そして女は困惑する兵士の頭と肩を無理矢理抱き寄せ、口づけをした」


正規軍兵士33「ま、待って……やだっ!」


巨大な女「」


ナレーション2「数秒の間、兵士はもがいていたが、力を失い、やがて絶命した」


ミハラ「くっ……あれが『与野本町の怪人』だ!捕まったが最後、ああやって口から命を吸い取られる。()()()れでもしたら、まず逃げられない」


ショウ「サワラ一丁!」


ハン「へい!」


ミハラ「ンマッ……ははひはへひふはへはひほへほふふははほほはひはひひへほ!ひーは!?……ゴクン」


ナレーション2「捲し立てるように言葉を残し、マンションの玄関から飛び出すミハラ。女の前に立ちはだかり、グランドクロスを水平に構え、砲口を直接女に向ける」


ミハラ「……シャーリー、久しぶりだな」


巨大な女「」


ナレーション2「ミハラが対峙しているこの巨大な女こそ『与野本町の怪人』である。本名は『バク=シャーリー』。大宮戦争の折、暗黒のドームを展開し、埼玉県一帯を守った人物である。強力無比なサイコパワーで敵の侵攻を防ぐ守護神のような存在であった一方、淡々とコウノトリを惨殺する姿は敵だけでなく味方からも恐れられ、『怪人』と称されたのであった」


ミハラ「私がわかるか?もし君が正気で私の言葉が伝わっているなら、話し合いに応じてくれないだろうか?」


シャーリー「」


ナレーション2「かつて、上等兵の階級ながらも幕府陸軍の最高戦力と称されたシャーリーであったが、戦後に行方をくらます。その後いつからか新ジパング各地で暗黒とともに出没するようになり、接吻で人々のサイコパワーを奪い取って死に至らしめる通り魔に成り果てていたのである」


ミハラ「……正気じゃない、か」


ナレーション2「新ジパングにおいてコウノトリの管理下にある人々は、寿命以外で亡くなった場合に、加護によって蘇生される。ただ、この蘇生の処置は肉体を再生することはできても、精神の再生までは不可能であった。シャーリーの接吻を受けた人々は、口からサイコパワーを吸い出される過程で精神を破壊されながら死亡する。そして後に、精神が再生されないままに肉体のみが再生され、廃人として生き長らえることになるのである。現在、全国に治療不可の廃人が数万人いると見込まれており、重大な社会問題として政府を悩ませているのであった」


ミハラ「戦うしかないか……許せよ、シャーリー!」


ナレーション2「歩み寄ってくるシャーリーに照準を合わせ、至近距離で砲弾を発射するミハラ。反動で3メートル近くも後方に転げる。圧倒的な威力の砲撃であるが、どういうわけか、弾はまたしてもシャーリーの身体をすり抜け、当たらない。何事もなかったかのように距離を詰めてくるシャーリーに対し、ミハラは起き上がって次の一手を繰り出す」


ミハラ「ほ、砲弾じゃダメか……なら……行け、グランドクロス!」


ナレーション2「腕力に任せてグランドクロスをぶん投げた。ミハラの手を離れた瞬間、迅速に自動操縦に切り替わり、破竹の勢いで飛ぶグランドクロス。プロペラのように回る砲身がシャーリーの頭部を跳ね飛ばす……ということはなく、先程と同様に、攻撃は虚しく空を切るばかりであった。だが、グランドクロスが視界を遮った一瞬を狙い、ミハラが鋭い足払いを仕掛ける。この足技はシャーリーを捉え、彼女の体勢を崩すに至った」


ミハラ「た、戦える……!サイコパワーに対抗するにはサイコパワーしかない!」


ナレーション2「サイコパワーを纏い、徒手空拳で攻めるミハラ。打撃で牽制しつつ、締め技による拘束を試みる。しかし、掴みかかるまでは良いものの、巨大な体躯を押さえ込むことができず、さらに隙あらば()()を狙ってくることもあり、シャーリーの攻略は困難を極めた」


ショウ「キス一丁!」


ハン「へい!」


ナレーション2「モギャヌ……ひふほはほほっふひはひほへへへっはふはふはふ、ほへへほはほふはひはふふはひ……ゴクン。息が上がっているミハラに、汗の一滴すらもかいていないシャーリーが近寄る」


シャーリー「」


ミハラ「ハァ、ハァ……本当にお前は凄いな……強さも美しさも、あの頃から全く()()ついていない」


ショウ「サビ一丁!」


ハン「へい!」


ミハラ「モグモグ……ゲホッ!ゲホッ!ゲェッホ!」


ナレーション2「突如むせるミハラ。膝をつき、四つん這いになって、大きく咳き込んだ」


ミハラ(な、なんだ!?鼻の奥が痛い!喉が痺れて、胸が苦しくて、目から涙が止まらない……!)


ナレーション2「ミハラを抱き起こすシャーリー。腕の中で仰向けに直し、頭に手を添え、ゆっくりと唇に唇を押し当てる」


ミハラ(あ……)


ナレーション2「ミハラに抗う力はなかった。朦朧とする意識の中、全身をシャーリーの腕に預け、目を閉じる。遠くで誰かの声が聞こえた気がしたが、為されるがままであった」


ミハラ(ああ、ここまでか。……長い戦いだったが、ようやく終わる……)


ナレーション2「為されるがまま、成り行きに任せた結果……ミハラの唇は、シャーリーの唇から引き剥がされたのであった」


???「……さん!」


ミハラ「……?」


???「ミハラさん!」


ミハラ「……えっ!?き、君ら、なんでここにいるんだ!?」


ナレーション2「目を開けると、そこにいたのは、マンションの屋上でミハラが交戦した反乱兵の2人であった。彼女たちがシャーリーの接吻を妨害し、間一髪でミハラを救い出したのであった」


ミハラ「ゲホッ!に、逃げろと言ったじゃないか!どうして私を助けた!?死にたいのか!?」


連合軍兵士103「ミハラさん……正規軍のスパイだとわかった時点で、あなたは我々の上司じゃなくなったんです。逃げろと言われても、命令に従う道理はないでしょう?」


ミハラ「……」


連合軍兵士103「我々と一緒に来てもらいます。軍の機密を喋ってもらわなきゃならないですからね」


連合軍兵士56「……ウグッ!」


ミハラ・連合軍兵士103「!」


ナレーション2「兵士の1人がシャーリーに唇を奪われた。もう1人がミハラの肩に手を回して支え、立ち上がらせる」


連合軍兵士103「……とは言ったものの、どうも、一緒に逃げるのは難しそうですね」


ミハラ「わ、私に構うな。2人で犠牲になることはない。ここに私を残して、君が去れ」


連合軍兵士103「そうですね。2人で犠牲になることはない……セミちゃん!」


メガネ「はい!」


ミハラ「なっ!?」


ナレーション2「反乱兵の合図により現れたメガネ。猫車を押しながら駆け寄り、荷台にミハラを乗せ、再び駆け出す」


ミハラ「ま、待て!」


連合軍兵士103「犠牲になるのは私1人で十分です!頼んだよ、セミちゃん!」


メガネ「ええ、そっちも頼みますわ!」


連合軍兵士103「ふー。……来いっ!」


シャーリー「」


ナレーション2「シャーリーと相対する反乱兵、猫車とともに疾走するメガネ、運ばれるミハラ。各々が全力で何かを為そうと行動し、状況が目まぐるしく変わってゆく。次回『コウノトリの野望』第20話、乞うご期待!」

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