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第1話・ハンバーガー

ショウ「何買ってきたの?」


ハン「ハンバーガーっス」


***


ナレーション「西暦××99年、人類は鳥類に敗北した。男のいない世界に連れてこられた女たちは、その大半がコウノトリの管理下でコミュニティを形成し、新たな秩序の中で生活を送っている。だが、コウノトリ体制に反発し、身を隠しながら生き延びている者もいる。2人の少女『ネクラ』と『メガネ』もそうであった。彼女たちはコウノトリと戦うべく東部地区のレジスタンスに加入していたが、組織が正規軍に壊滅させられ、敗残兵として中央地区の山間部に潜伏していたのであった。そんな2人に軍の追手が迫る」


正規軍兵士1・正規軍兵士2「【ザッザッ】」


ネクラ・メガネ「……」


ショウ・ハン「【ガサガサ】」


正規軍兵士1「この辺は木と笹が密集していて隠れ場所が多いし、日当たりも悪いから、特に念入りに探すよ」


正規軍兵士2「了解」


正規軍兵士1・正規軍兵士2「【ザッザッ】」


ネクラ・メガネ「……」


ショウ・ハン「【モグモグ】」


メガネ「……向こうに行ったみたいやな」


ネクラ「ええ。でも、もうこの拠点にいるのも危ないかもしれませんね……」


メガネ「せやな……下手したらすぐにでも見つかってまうやろな……」


ネクラ「今のうちに移動しますか?」


メガネ「……いや、今はまだアカン。さっきの連中は斜面を登ってったやろ?多分、高いところから低いところを見渡して、捜索範囲の当たりを付けてるはずや。そんな時に動けば当然バレてまう。せやから、今は我慢して、敵が下の方に降りるのを待つんや」


ネクラ「……降りる途中で敵がここに気付いたらどうします?」


メガネ「仮にバレても敵が有視界範囲内まで来てればウチらが有利や。この辺は傾斜がキツめやし、足場が安定しとるのは拠点の周りだけやからな。敵2人くらいなら十分返り討ちに出来るはずやで」


ネクラ「なるほど……流石メガネさん。頼りになります」


メガネ「【ドキッ】」


ネクラ・メガネ「……」


ナレーション「拠点内に緊張した空気が張り詰める。ネクラの顔は青ざめ、メガネの顔は心なしか赤みががっていた」


ハン「【ガサガサ】」


ショウ「それ何?」


ハン「期間限定の……なんか……激辛……ターキー?バーガーっス」


ショウ「一口ちょーだい」


ネクラ・メガネ「……」


メガネ「……なあ、CMに出てくるハンバーガーってなんで包装紙剥いてあるんやろな?」


ネクラ「……はい?」


メガネ「普通、ハンバーガー食べる時って包装紙全部は剥かんやろ?なのにCMだと、わざわざ包装紙全部剥いて、両手でバーガー持って、正面からかぶりついて、満面の笑みで『うまい!』みたいな顔すんねん。そんな食べ方しとる奴現実で見たことないやろ?ハンバーガー屋はもうちょっとリアリティ出す努力した方がええと思うんや。……アンタはどう思う?」


ネクラ「……まあ、宣伝ですし、商品の全体像をお客さんにアピールするという意味で包装紙は剥いてある方がいいんじゃないでしょうか?……と言うか、今そんな話振らないでくださいよ。非常事態なんですから……」


メガネ「……せやな。ゴメン。静かにしとくわ……」


ネクラ・メガネ「……」


ショウ「【モグモグ】」


ハン「あ、姉上。そっちの袋にコーラ入ってるんで取ってもらえます?」


ショウ「【ガサガサ】はい」


ハン「あざス」


ネクラ・メガネ「……」


メガネ「……なあ、紙ストローって時代に逆行してると思わへん?」


ネクラ「……かみすとろー?……あ、『紙ストロー』ですか。……確かに評判は悪いですよね。私もあの口当たりは好きじゃないですけど……」


メガネ「いや、口当たりの話とちゃうねん。ウチが言いたいのは、なんでペーパーレスの時代にわざわざ紙でストロー作るのかってことなんや。オフィスで紙の使用量減らしても、飲食店でバンバン紙使ったら、結局のところ資源の節約にはならないんとちゃうか?」


ネクラ「……ペーパーレスってそういう意味じゃないんじゃないでしょうか?私も詳しくはないですけど……。いや、だから今そういう雑談はやめてくださいよ。敵が近くにいるんですから」


メガネ「ああ、ゴメンゴメン。……なんやろ、ウチ、疲れとるんやろか……。ほんとゴメンな」


ネクラ・メガネ「……」


ハン「【チュー】」


ショウ「【ガサガサ】……あれ?妹、そっちの袋にマスタード入ってる?」


ハン「【ズココココー】ん。【ガサガサ】ほい」


ネクラ・メガネ「……」


メガネ「……なあ、『マスタード』って『カスタード』に


ネクラ「ちょっとなんなんですか!さっきから!」


ナレーション「ついにネクラがキレた。メガネは『しまった』という表情をしている」


メガネ「……あ、ゴメン」


ネクラ「敵が近くにいるんですよ?くだらない話してる場合じゃないですよね?」


メガネ「ほんとゴメン」


ネクラ「絶対わざとやってますよね?こんな状況でふざけるようなら、ここで縁切って、別行動させてもらいますよ!?」


メガネ「……!…………ん……」


ネクラ「ほんといい加減に


メガネ「【グスッ】ふざけてないもん……」


ネクラ「!?」


ナレーション「見ると、メガネが顔を真っ赤にしながら泣いている。突然の涙にネクラも面食らった」


ネクラ「あの


メガネ「【グスッ】ウチは、【ズビッ】ウチは言いたいこと全部言って生きたいねん……。【グズグズ】今大変なのはわかるけど、けど、【エグッ】……明日アンタに会えなくなるかもしれないって思ったから、本音全部吐き出して、後悔したくないねん……」


ネクラ「わかりました、わかりましたから、ちょっと落ち着いてください。敵にバレちゃいますから、ね?落ち着きましょう?」


ナレーション「子供のように泣きじゃくるメガネと、困惑しながらなだめるネクラ……。果たして彼女たちは軍の追手から逃げ切れるのであろうか?次回、『コウノトリの野望』第2話に続く!」


***


ショウ・ハン「ZZZ」

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