第17話・断食
ナレーション2「新ジパング国最大の反乱軍・中央レジスタンス連合。その実態はなんと、正規軍が仕掛けた壮大な罠であった。奇襲と内部からの裏切りにより、マンションで暮らしていた反乱兵は拘束され、コンテナに詰め込まれる。なす術なく施設送りになるかと思われたが、運命のイタズラか否か、拘束を解いて暴れ出す者が現れた。中央地区、雨天の下、反乱兵たちの最後の抵抗が始まる」
モモ「マンション内部の制圧に兵士を回せ!屋外が多少手薄になっても構わない。徹底的に出入り口を抑えて反乱兵の逃亡を防ぎつつ、拘束が解かれた原因と武器の出どころを突き止めろ」
正規軍下級司令官15「はっ!」
ナレーション2「マンションの周囲を取り囲む兵士の隊列。玄関と裏口で反乱兵との応酬がなされる傍ら、後方の部隊から数十本のクロスレンチが自動操縦で飛ばされる。手動と自動で放たれるクロスレンチの二重の弾幕によって、屋外に出ようとする反乱兵は押し込まれたかに見えた。だがその時、上空からの落下物により状況は一変する」
正規軍兵士一同「うわーっ!」
ナレーション2「落下してきたのはマンションに置いてある日用品であった。電子レンジ、椅子、デッキブラシ、エトセトラ……。武器と呼べるものではない、なんの変哲もないただの日用品ではあったが、それらは10階建てのマンションの屋上からバラ撒かれ、十分な勢いで地上に激突し、付近にいる兵士を大いに威嚇してみせた」
正規軍下級司令官15「くっ!総員、一旦退け!マンションから離れろ!距離を置いたところからクロスレンチを飛ばして屋上の反乱兵を撃て!」
ナレーション2「隊列を解体して走り去り、バリケードの後方まで下がる兵士たち。各々の手からクロスレンチが投げられ、マンションの屋上目掛けて飛んでゆく。いくつもの個体がぶつかることなく鮮やかな軌道を描いて敵に向かう様子は圧巻で、皆に反乱兵の制圧を確信させた。しかしその確信に浸る間もなく、認識はすぐに改められることになる」
正規軍兵士一同「!?」
ナレーション2「【スドン!ズドン!】と、飛行していたクロスレンチが次々と撃ち落とされてゆくのである。この時、マンションでは随所で狙撃銃を持った反乱兵が待ち構えていた。屋上を始め、廊下、非常階段、ベランダなどに長距離射撃に長けたメンバーが配置され、クロスレンチを迎撃していたのであった」
正規軍下級司令官15「な、何が起きてるんだ……!?まるでこちらが手玉に取られているようだ……!」
モモ(まずいな、クロスレンチの痛いところを突かれている……)
ナレーション2「偽装工作により反乱兵の信頼を得ていた中央レジスタンス連合であったが、実は、敵の疑念の払拭に徹するあまり過剰に手の内を明かしてしまうという問題を抱えていた。その代表例が、裏ルートからのクロスレンチの入手である。『武器研究』の方便のもと、正規軍側が潜入中の工作員に武器を支給するための措置だったのだが、多くの本数を組織の隅々まで行き渡らせるようとすると、危険を冒してまで何本もクロスレンチを仕入れることへの不信感を敵に与えかねない。そこで『実践投入』の大義名分を掲げることにより、積極的にクロスレンチを仕入れる理由づけはできたのだが、その一方、反乱兵の間で武器研究が活発化し、対処法を確立させる要因にもなってしまっていた。そして今、まさに『武器検知機能の範囲外からの狙撃に弱い』という弱点を突かれる格好となったのであった」
正規軍下級司令官15「どうしましょう、モモさん?大半のクロスレンチが屋上に到達する前に狙撃されて、運良く屋上付近まで近づけたものも小銃の弾幕で撃墜させられたそうです」
モモ「ああ、かなり悪い状況だな……今、他の武器はないんだよな?」
正規軍下級司令官15「ええ。そもそも、敵を拘束して反撃の余地を与えないのが前提の作戦ですし、事前の想定では標準装備で十分と考えられていましたから、今はクロスレンチしか……」
モモ「うーん……」
正規軍下級司令官15「……あ、そういえば『グランドクロス』なら
モモ「『グランドクロス』はダメだ!あれは殺傷力が強すぎる。敵の生け捕りには向かない。……それよりも可能な限りのクロスレンチを追加で寄越してもらうよう、本部に連絡しろ。物量で攻めて、敵の弾切れを狙う方がいい」
ミハラ「……いや、ここは『グランドクロス』を使おう」
モモ「えっ……死人が出ますよ!?」
ミハラ「弾は撃たない。私が直接マンションに乗り込んで制圧する」
モモ「無茶ですよ!」
ミハラ「じゃ、お前が代わりに乗り込むか?私が行った方が生存率は高いと思うが」
モモ「……いえ、私には無理です……」
ミハラ「持久戦が不利なことは反乱兵らだって重々承知してるはずだ。早い段階で何か仕掛けてくる可能性は高い。こちらも増援を待ってる暇はない。先手を打たないと」
モモ「……わかりました」
ナレーション2「『グランドクロス』こと『01式十字迫撃砲』。クロスレンチを大きくしたような、4つの砲身を有する迫撃砲であるが、実際に迫撃砲として使用されるケースは少ない。破壊力と殺傷力が高すぎて、敵の生け捕りを重視する正規軍の方針とは合わないためである。代わりに、砲身に人を入れた状態で飛行するという乗り物としての運用がしばしばなされるのであるが、搭乗者を激しく酔わせる挙動から、まともな移動手段にすらならない代物というのが専らの評判であった。適応し、積極的に有効活用しているのはミハラただ1人であった」
ミハラ「モモ、屋外はお前に任せる。逃亡した反乱兵の捕縛と護送の準備を進めておけ。……頼んだぞ」
モモ「……はい」
ナレーション2「ミハラを乗せ、空高く急上昇するグランドクロス。全てを薙ぎ払う勢いで回転しながらマンションの屋上へと飛んでゆくそれは、果たして反乱兵たちとどのような戦いを繰り広げるのだろうか?次回『コウノトリの野望』第18話に続く!」




