第16話・カニカマ
ハン「コピー食品の魅力に迫る『パチモンのすゝめ』。ゲストはスプリッティング小野さんです」
ショウ「よろしくお願いします」
ハン「第1回のテーマはカニカマ。カニカマは本物のカニよりも手頃な価格で買えるだけでなく、原材料の関係からカニアレルギーの方でも問題なく食べられるという長所もあるんです。今、スタジオでは小野さんがカニカマ入り炒飯を実食してらっしゃいますが、いかがでしょうか、小野さん?」
ショウ「いや~、シンプルにうまいです。炒飯の具材って何入れるか結構迷いますけど、カニカマは手軽に魚介系の風味を加えられて便利ですよね。かなりおすすめです」
ハン「なるほど。小野さんのお墨付きをいただいたカニカマ入り炒飯、是非皆さんもお試しください。ではまた来週~」
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ナレーション2「西暦XX04年6月8日。中央レジスタンス連合が武装蜂起を翌々日に控えていた朝のことである」
連合軍兵士202「なんでこんなことに……」
ナレーション2「午前5時。雨天の中、マンション・レジデンス反吐川サイドは正規軍の奇襲を受け、連合軍のメンバーたちが拘束されていた」
連合軍兵士202「なんで……なんでですか!」
ミハラ「……」
連合軍兵士202「なんで裏切ったんですか!ミハラさん!」
ミハラ「……」
連合軍兵士202「なんとか言ってくださいよ!!」
ミハラ「……薬で眠らせろ」
正規軍兵士493「はっ」
連合軍兵士202「ミハ……んぐっ……」
ナレーション2「なんと、連合軍のリーダー・ミハラは正規軍の工作員だったのである!3年前、反政府勢力を一掃する目的でフェイクの反乱軍を立ち上げ、規模を拡大しつつ各地区の有力な組織を懐柔し、ついに今日、それらの全てを一網打尽にしたのであった」
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ハン「コピー食品の魅力に迫る『パチモンのすゝめ』。ゲストはスプリッティング小野さんです」
ショウ「どうも、小野です」
ハン「第2回のテーマは大豆ミート。SDGsや菜食主義の観点から食肉の代替品として注目を浴びている、大豆を原料とした加工食品です。今回は豚肉の代わりに大豆ミートを使用した肉野菜炒めを用意しました。お味のほど、いかがでしょうか、小野さん?」
ショウ「想像していた以上に肉っぽくてうまいですね!ちゃんと歯応えもありますし。若干ジューシーさに欠けるかな?って印象はありますが、ごはんのおかずとして十分アリだと思います」
ハン「なるほど。多少の改善の余地はあれど、しっかりとおいしさを感じられたというわけですね。今後の進化に期待です。ではまた来週~」
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連合軍兵士177「嘘だったのか!?なあ!?『政府に一矢報いたい』って言ってたじゃないか!?」
正規軍兵士33「……」
連合軍兵士177「お前はどうなんだ!?北部で一緒に命張ったのも、一緒に逃げたのも、全部が全部芝居だったのか!?」
正規軍兵士240「……」
ナレーション2「各地区に散らばる連合軍のメンバー総勢約9000名のうち、4割弱は正規軍が時間をかけて紛れ込ませた回し者である。本物の反乱兵と寝食を共にし、時には正体を隠して正規軍の他の兵士と交戦すらしてみせた。徹底的な芝居によって、長らく反乱兵たちを欺いてきたのであった」
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ハン「コピー食品の魅力に迫る『パチモンのすゝめ』。ゲストはスプリッティング小野さんです」
ショウ「わたくし、小野でございます」
ハン「第3回のテーマはたい焼き。あんこを生地で包んでタイの形に焼き上げた、言わずと知れた国民的スイーツです。早速小野さんに実食していただきましょう」
ショウ「では、しっぽの方から。モグモグ……うん、生地は香ばしくて、あんこは上品な甘さですね。……ところでこれ、コピー食品なんですか?ジャンル的に」
ハン「もちろんです。コピー食品として、たい焼きにはどんな長所があるでしょうか?」
ショウ「え?それ僕が説明するんですか?……えーっと、最近、日本人の魚離れが進んでいると聞きますが、こういう魚を模したお菓子をきっかけに子供が魚介類に興味を持つことで、将来的に消費量の回復に繋がるんじゃないでしょうか?」
ハン「なるほど。日本の食育と漁業を支えるたい焼き、奥が深いですね。ではまた来週~」
ショウ「……」
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モモ「よし、拘束が終わったら1階の者から順にコンテナに入れろ」
正規軍兵士33「はい」
ナレーション2「ミハラの腹心・モモも正規軍の上級司令官であった。彼女の一声で護送用のコンテナに次々と詰め込まれる反乱兵たち。かつての仲間を罵る者、何かの間違いではないかと繰り返し訊き続けるもの、状況が飲み込めず独り言を呟く者……様々な言葉が飛び交うも、正規軍の兵士たちは顔を向けることすらせず、粛々と行動するばかりであった。……ただ1人を除いて」
モモ「ミハラさん、護送ルートで相談があるんですが」
ミハラ「……」
モモ「……ミハラさん?」
ミハラ「……え?ああ、何?」
モモ「ボンヤリ眺めてないでください。作戦実行中なんですから」
ミハラ「あ、ああ、そうだな。で、用件は?」
モモ「護送ルートの件です。先程『中央第5ベビーベッド』の付近で土砂崩れが発生して幹線道路が通行止めになっているそうなので、迂回のためにルート変更の承認をお願いします」
ミハラ「わかった。承認する」
モモ「……」
ミハラ「……」
モモ「……あの、護送ルート変更なので口頭の承認だとダメなんですが」
ミハラ「……え?」
モモ「ですから、口頭の承認ではなくて、ベビーベッドに提出する書類に署名捺印して承認してくださいと言ってるんです」
ミハラ「あ、ああ、悪い。書類が必要なんだったな。今、書くからちょっと待ってろ」
モモ「……」
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ハン「コピー食品の魅力に迫る『パチモンのすゝめ』。ゲストはスプリッティング小野さんです」
ショウ「こんばんは」
ハン「第4回のテーマはサンマーメン。近年、不漁が続いているサンマの代わりにサンマーメンを食べる人が続出しています。今回も小野さんに食レポをしていただきましょう。どうぞ!」
ショウ「……あの、サンマーメンってコピー食品じゃないですよね?」
ハン「はい?」
ショウ「いや、サンマーメンってサンマを真似して作った食品じゃないでしょ?コピー食品の紹介じゃなくて、もはやただのダジャレ大会じゃないですか!?前回から薄々怪しい気がしてましたけど、この番組、ネタ切
ハン「どうぞー!」
ショウ「アチーッ!わかりました!食レポしますから、無理矢理食べさせないでください!……ズルズル……うん、タレと麺がよく絡んでうまいです。モヤシのシャキシャキ感がいいアクセントですね」
ハン「そうですか。では続けて、サンマーメンがコピー食品としてなぜ優れているのか、解説をお願いします!どうぞ!」
ショウ「ムガッ!?またですか!?……えーっと、最近、日本人の魚離れが進んでいると聞きますが
ハン「それは先週聞きました。同じ話ばかりじゃ視聴者の皆さんが飽きちゃいますよ?もっと面白いのをお願いします」
ショウ「えーっ!?じゃ、じゃあ……野菜たっぷりで栄養バッチリ!サンマがないならサンマーメンを食べればいいじゃない!」
ハン「……」
ショウ「……」
ハン「なるほど。食事の栄養バランスには気を配りたいものですね。ではまた来週~」
ショウ「チクショウ!無茶振りされた挙句ギャグも滑ったよ!こんな番組降板してやる!」
***
ナレーション2「【ダァン!】と突然響く銃声。正規軍の兵士たちを押しのけ、マンションの一角から反乱兵たちが飛び出す。2人組がミハラとモモの前に立ちはだかり、銃を構えた」
連合軍兵士14・連合軍兵士49「お覚悟!」
モモ「危ない!」
ミハラ「!」
ナレーション2「ミハラを引っ張り、バリケードの陰に隠れるモモ。背中と足の先を銃弾が掠める」
モモ「チッ!」
ナレーション2「モモがクロスレンチを投擲する。クロスレンチは回転しながら銃弾を発砲し、反乱兵たちの腕と脚を正確に撃ち抜いた」
連合軍兵士14「ギャッ」
連合軍兵士49「グエッ」
ナレーション2「隙をついてモモが反乱兵の2人組を取り押さえる」
正規軍兵士33「モモさーん!大丈夫ですかー!?」
モモ「なんで反乱兵が武器を持ってる!?拘束はどうした!?」
正規軍兵士33「わかりません!全部屋の反乱兵を確実に拘束し、所持していた武器は没収したはずです!」
モモ「中の状況は!?」
正規軍兵士33「屋内の状況は掴めていません!ですが、少なくとも10人以上の反乱兵がマンションから脱走して、屋外で待機していた仲間と交戦している模様です!」
モモ「クソッ、どうなってるんだ……!?」
ナレーション2「政府と軍による大掛かりな罠だったことが判明した中央レジスタンス連合。兵力にものを言わせた急襲と内部からの裏切りにより窮地に立たされる反乱兵たちであったが、混乱に乗じて最後の抵抗を始める。次回『コウノトリの野望』第17話、乞うご期待!」
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ハン「コピー食品の魅力に迫る『パチモンのすゝめ』。ゲストはスプリッティング小野さんです」
ショウ「……えー、はい」
ハン「諸事情により、急遽最終回となってしまいましたが、元気良く参りましょう。最後のテーマはウインナーコーヒー。ウインナーソーセージの代わりとして用いられるコーヒーです。今回は朝食の定番、ソーセージエッグのソーセージをコーヒーで代用してみました。では小野さん、実食しちゃってください!」
ショウ「ソーセージをコーヒーで代用って……もう意味不明すぎますよ。……うわっ、なんじゃこりゃ?ブラックコーヒーに目玉焼きが浸してある。……モグモグ……うん、滅茶苦茶まずいです。コーヒーは苦いし、目玉焼きは黄身も白身もグズグズだし、こんなものを朝食に食べたら一日中気分最悪になること間違いなしです」
ハン「見事な食レポ、ありがとうございました。最後に、小野さんから番組を振り返って総括をお願いします」
ショウ「出演のオファーをいただいた時、コピー食品を通じて食文化に触れる素晴らしい番組になると期待していましたが、どうやら僕が触れたのは人間の恐ろしさだったようです。ある意味では貴重な体験をさせていただきました。早く帰りたいです」
ハン「なるほど。名残惜しいですが、『パチモンのすゝめ』、これにて終幕です!またいつかお会いしましょう。さようなら~!」




