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第14話・ドーナツ(前編)

ナレーション「中央レジスタンス連合が武装蜂起を決行する少し前のこと。中央地区・首相官邸。合議室の椅子にかけ、同じ体勢のまま数時間も険しい顔を続けている女がいた」


サローイン「はあ……」


ナレーション「女の名は『サローイン』。鸛下共生党書記長。旧アンチY染色体協会の筆頭にして、コウノトリと結託して大宮戦争を終戦に導いた張本人である。行動力、カリスマ性、政治の手腕において右に出る者はいない」


ショウ「【コンコン!ガチャガチャ!バァン!】同志!最高司令官ご一行が到着されました!」


サローイン「……ああ、そう。控え室に通して。会議は18時から始めるから、それまでにここに来るように伝えておいて」


ショウ「おや、だいぶお疲れのご様子ですね。やはりサミットともなれば扱う議題もそれ相応の規模かと存じます。気苦労もさぞ多いことでしょう」


サローイン「うん」


ナレーション「今宵、鸛下共生党党首1名と鸛下正規軍の各地区の最高司令官4名によるサミットが開催される。その出席者5名は美貌と実力から『ステキファイブ』と称され、民衆からもてはやされていた」


サローイン「……実は議題以前の問題があってね」


ショウ「なんでしょう?」


サローイン「軍の連中はかなり我が強くてな。サミットのたびに好き勝手発言するから、毎回会議の進行に支障が出て困ってるんだよ。前回も私の進行を無視して討論始めやがったし……」


ショウ「ああ、確かに皆さん妙なこだわりがありますよね」


サローイン「なまじ筋が通った意見ばかりだから扱いが難しいんだ。何かこう、うまいこと進行のイニシアチブを握る方法はないものかね?」


ショウ「でしたら、試しにこの『ドーナツ盛り合わせ24個』を使って会議の音頭を取ってみてはいかがでしょうか?」


サローイン「何このドーナツ?」


ショウ「差し入れです。駅前にオープンしたドーナツ屋で買ってきました。ドーナツを1個ずつ取りながらみんなでこの箱を回していって、『箱を持っている人だけが発言可能とする』というのはどうでしょう?そしてドーナツ1個食べ終わるまでを発言の制限時間とするんです」


サローイン「ドーナツ食べながら発言するのか?行儀が悪いし、そもそも喋りにくいだろ」


ショウ「そうではなくて、ある1人がドーナツを食べている間の時間を、次の1人の発言時間とするんです。つまり、ある人は箱からドーナツを1個取り、次の人に箱を渡してドーナツを食べ始める。箱を受け取った人は発言者となり、前の人がドーナツを食べている間だけ発言ができる。ただし前の人がドーナツを食べ終えたら問答無用で発言終了。で、発言終了となった発言者はドーナツを1個取り、また次の人に箱を渡して、ドーナツを食べ始める……。これを順番に繰り返していくんです」


サローイン「ほう」


ショウ「それから、発言権がない時に発言したらペナルティで次の番はドーナツ没収となります。女の子はみんなドーナツが好きですし、没収は相当悔しいでしょうから、無闇な発言もなくなるでしょう」


サローイン「なるほど。ちなみにペナルティでドーナツ没収になった人の次の発言者の制限時間はどうするんだ?」


ショウ「没収されたドーナツは私が食べますので、私が食べ終わるまでを制限時間とするのが良いかと」


サローイン「よし、では今回はそのルールでやってみよう」


***


ナレーション「18時。ステキファイブの面々が一堂に会する」


サローイン「これよりサミットを開催する。が、会議を始める前に参加メンバーついてお伝えしたい。まず、中央地区最高司令官の『オサガリ』は反乱軍制圧作戦の任務にあたるため欠席となる。それから、『ヒレイ』の除名処分に伴い、北部地区最高司令官として『アバラ』がサミットに参加する。従って、今回の参加メンバーは私、『ランブ』、『アバラ』、『チャック』の4人となる。よろしく」


ランブ「よろしく」


ショウ「有意義な会議にしましょう!」


アバラ「よろしくお願いします」


チャック「挨拶はいいから早く始めてくれよ」


サローイン「まあ待て。もう1点。前回のサミットがあまりにも荒れまくって進行に支障が出たので、今回はドーナツを用いて進行する」


チャック「ドーナツ?」


サローイン「かくかくしかじか」


ナレーション「サローインの口からドーナツを用いた会議の進行方法が語られる。参加メンバーからの異論はなく、そのまま会議に突入した」


サローイン「……では、1つ目の議題に入る。ヒレイの件ついて。世間一般には『退役』と公表し、内部的には『除名処分』と処理しているが、実態は置手紙1枚を残して一方的に軍を抜けた『脱走』だ。貸与した装備品の返却はなく、『雪ウサギ隊』も連れ去っている。置手紙には軍の方針に背いて離反する意向が書かれていた。前例のない脱走だが、ヒレイの処遇をどうするべきか、忌憚なき意見を聞かせてほしい」


ナレーション「サローインがドーナツを取り出し、箱をランブに渡す」


ランブ「あたしとしては、まず大規模な捜索を行って所在地を洗い出した上で、あとは最低限の監視をつけるのがいいと思う。軍を抜けたとはいえ、ヒレイちゃんが積極的に敵対するとは思えないし。反政府活動を始めたとか、反乱軍とコンタクトを取ったとかじゃない限りは様子見でいいんじゃないかな」


ショウ「私は説得して軍へ連れ戻すのが良いと考えます。ヒレイ最高司令官殿は自ら前線に立って戦う方でした。司令官としての行動の是非はあれど、末端の兵士や民衆から支持を得る求心力となっていたことは間違いないでしょう。ですから、極力敵対するのは避けて、なんとか再度味方につける方法を模索するべきではないでしょうか?」


アバラ「私からは徹底的な捜索の上、厳罰に処すことを提案します!ヒレイ殿は何を考えているかわからないお人でしたから、思考が読めない以上、最悪のケースを想定し、反乱勢力に情報や装備品が渡る前に拘束しておくのが得策かと!」


チャック「アタイは【ガッガッガキン】。多分アイツは軍には興味がなくて【ブイイイイイイン!】だと思う。【ギュルン!ギュルン!】だし、ヒレイのために人員を割かなくても【ズモモモモッ】


サローイン「そこまで」


チャック「は」


サローイン「箱をもらうぞ。……では私の意見を言わせてもらうが、ヒレイの


チャック「おいちょっと待てよ!」


サローイン「なんだよ?不必要な発言はペナルティだぞ?」


チャック「いや、必要なことだから言わせてもらう!今、コイツから明らかにドーナツ食べてる時の音じゃない音が鳴ってたよな!?明らかな妨害じゃねーのか!?」


アバラ「【チュイン】え、私ですか?」


サローイン「そんなに変な音だったか?」


チャック「あと発言時間も短かすぎる!進行のルールは好きに決めてもらって構わないが、妨害やら発言時間の格差の対策をしてくれよ!」


サローイン「でも、人間なんだから多少の咀嚼音とか食べる時間のブレは許容してもらわないと」


チャック「あれが咀嚼音なわけねーだろ!」


アバラ「【チュイン】ああ、すみません。今、歯の矯正器具をつけていまして。【チュインチュイン】ものを食べるとどうしてもうるさくなってしまうんです。多分その音かと……」


サローイン「だそうだ。歯の健康に関わる問題だし、大目に見てくれ」


チャック「いや、あんな音が鳴る矯正器具、聞いたことねーよ!」


サローイン「まったくワガママだな……。わかった。チャックとアバラの席を交換しよう。それなら文句ないだろ?」


チャック「それだと根本的に


ランブ「まあまあ。議題じゃないところで揉めても無駄に体力を消費するだけだから。冷静に、ね?」


ショウ「ほら、深呼吸してくださいよ」


チャック「……うーん、釈然としないが一旦は呑むとしよう」


ナレーション「ドーナツによる進行を試みるも波乱の様相を見せるサミット。果たして無事に終了までこぎつけることができるのであろうか!?次回、『コウノトリの野望』第15話に続く!」

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