そもそも友達がいないのですが
「ここよく来るんですね。辛いのに凄いね...」
そう言って僕はスプーンに一口分のカレーライスをすくう。
「ん、ふぁい。ひょうなんでふ。よく来ますね。辛いの好きで」
口に辛さレベル5辛のカレーを頬張りながら向かい側に座る高橋花梨は答える。数分前に初めて言葉を交わした人とは思えないほど彼女の適応能力の高さに驚く。
実を言うと僕自身はカレー屋は初めてだ。なので、まずカレー屋のシステムというものを知らなかった。色んな種類のメニューの中から好きなカレーを選んで終わりだと思っていたのだ。
なので、ベースのカレーライスから選ぶとは知らなかった。辛さも最大20辛まである。なんだこれ、唐辛子のイラストがこんなに並んでいる所をまず見た事がない。
しばらく、沈黙が続いた。
その間いつも意識して聞かないカチャカチャとスプーンの音、店内に客が出入りする際のチャイム音、水が喉を通る音それら全てが鼓膜をゆっくりと通過する。
食べ終わる頃には体温の上昇を感じていた。5辛を完食した高橋さんこと後輩さんの前髪はすっかり生気を失っていた。汗で前髪を維持することを諦めたのだろう。七三分けにしていた。
お水をゴクゴク1杯、2杯と飲み終えて高橋さんは口を開いた。
「さて、本題に移りましょうか。まず、封筒が投函された際に何か一緒に投函されていましたか?」
僕は口をおしぼりで拭きながら考えた。あ、黄色い。
「そういえば、特に何もなかったですね。元々チラシとか新聞とか取ってませんし。たまに、勧誘まがいの紙が入ってるくらいで」
「ですよね。私もなんです。だから、イタズラという考えが強くなった訳なんですが…」
んー。2人揃って思わず首をかしげる。
「あとは、共通の知人がいるかどうかですね。そもそも大学も学科も違うのに共通の知人なんているのか疑問ですが、とりあえず私の知人を書き出してみますのでお知り合いの方がいらっしゃればマルを付けて下さい」
そう言うと高橋さんはバッグから紙とペンを取り出し、携帯とにらめっこしながら名前を書き出していく。
高橋さんがスラスラと書き出している頃には既に【知人が片手で収まるくらいにしかいません】と言うのには遅いのだと気づいてしまった。




