どこからツッコめば良いですか?
アルバイトをしないか、だって?しかも、コミュニケーションを必要とするファミレスでかつ何故に僕?!友達なんて沢山いるだろうに。1番の謎だ。
「申し訳ないけど、既にアルバイト他にやってるんだ。だから、ごめん」
こういう時の対処法は心得ている。堂々と嘘をつく。アルバイトなんて生まれてこの方やったことなんてないし、今も変わらず親のスネをかじっている僕だけどこの断り方であれば波風立てずに話は終わるだろうと思った。
「そっか、そうだよな。さすがに大学3年ともなればアルバイトしてるよなぁ…」
ヴッ!思わず胸を抑えてしまう。嘘をついたことよりも、【大学3年ともなればアルバイトしている】の純粋なひと言にダメージを受けている。ええ、そうですよ大学3年にもなって絶賛まだ親のスネをかじっていますよ!心の中で反抗しながら自分自身が何だか社会不適合者への一歩を既に踏み出しているかのように感じて落ち込む。
「え、あ、そう!してるしてる。バリバリしてる」
先程の言葉に動揺してしまった僕は、バリバリしてるという要らない説明まで加えてしまった。これが良くなかった。
「へぇ、どんな仕事?ちなみに、どこでアルバイトしてる?給料はいくら?ちなみに、俺のところは1000円で、休日になると休日料金になるから1200円になる。もちろん、交通費支給な。店長とか他の皆も優しいから分からないことは聞きやすい。あ、俺に直接聞いてくれてもいいから。そんで!賄いも美味しい。俺らはスタッフだからスタッフ特権で300円で何でも食べれる」
バリバリ仕事しているに彼は興味を持ったように見えた。彼は質問に加え、聞いてもいない説明をだらだらと続けた。えぇ…困る。あと、少しイラッとしたのは既に僕がアルバイトする底で話を進めている上に、俺らはスタッフだからと僕を【俺ら】の中に入れている事だ。
「実は、最近入ったからさ、あんまりよく仕事内容とか分かってないんだよね、方向音痴なものでバイト先もよく迷ってて正確な場所分かんないんだよね。給料は1000円だったかな?ハハ」
「ぇえ?仕事内容も分かんなくて、方向音痴で場所もわかんなくてなんでそのバイト先にした?」
いや、それな。
我ながら嘘下手過ぎやしないか?彼は少し引いているように見えた。自分から聞いてきたくせに。
久しぶりに家族や幼なじみ以外の誰かと喋って自分自身の外での声を知る。こんな声だったんだっけ。
「いやあ、何でだろうな。たまたま入ったお店がアルバイト募集していたものだからそのまま面接お願いしたからさ」
まずいまずい!このままだと今にも嘘だとバレそうだ。
そんな時だった。渡りに船のように彼に声が掛かったのだ。
「慶太〜。遅い!!次の講義まであと少しだって言ったじゃんっ!」
少し距離を置いたところでグループの一員である女子が彼…けいた?を呼んでいた。状況から察するに彼けいたは、僕の本を届けるために彼らを待たせていたようだった。
「まじか、うわ、え、どうしよう。〜ッ!とりあえず!今日のところはここまでにするわ!また明日!」
え?またあした?また、、、明日?明日も来んの?
彼は困った顔をした後に、自分の髪をクシャクシャするとそう言い放ち去っていった。
僕はというと、去り際にグループの一員である女子3人の目線を感じて痛かった。
きっと、どこの馬の骨かも知らない男に本を渡すだけでどうしてそんなに時間がかかるのだろうかと怪しんでいるに違いない。
「はぁ、そもそも本さえ忘れなければこんな事には…」
情報量が多くて処理し切れない。間違いなく今日の講義で得た情報より多い。
涙目な上に久しぶりに使った表情筋がヒクヒク痙攣している顔のまま僕も次の講義場所に向かう。
明日休もうかな




