第8話 魔法の授業
エルロック達は魔法の授業の為、準備をすれば訓練所まで赴く。
キャサリン
「…」
背後に視線を感じればキャサリンがエルロックの事をじっと見据えている。
エルロック
「なんだよ」
キャサリン
「ふん。あんたのせいで恥かいちゃったわ。外面だけでもいいから仲良しを装うわよ」
エルロック
「賛成だ。君とずっとバディを組まされるなんてごめんだからな」
キャサリン
「く、それはこっちのセリフよ。カモメをなんの躊躇もなくつまみ上げる人なんて初めて見たわ」
エルロック
「僕はカモメを産まれて初めて見たんだ。物珍しさにつまみ上げただけだ」
キャサリン
「信じられないわ…。どんなに貧乏でも少しくらい一般常識ってのを親から学ぶもんでしょ?」
エルロック
「一般常識? 難しい言葉を使わないでくれるかな。僕はまだ6歳なんだ、世の中知らない事の方が多いのは当たり前だろ」
キャサリンはむすっとして黙ってしまった。下手に突っかかって転生者だとバレてしまうと不味い。如何にこの小娘を黙らせるかが当面の課題になりそうだ。
プリニアン
「はぁい。皆さん集まったわねぇ! じゃあ魔法の説明をしていくわよ〜」
屋外に黒板がある。コロコロで引いてきたのだろう。プリニアンがカツカツとチョークで書いていく。久しぶりのチョークの音。現実に戻ったようで心地よい。
プリニアン
「私たちは魔法を使う際、心臓に付いている炉心魔臓器の中からマナを消費して打ち出す事が出来るのよぉ。じゃあ、マナについて知ってる人ぉ〜」
プリニアンが手を上げる。するとキャサリンがシュバッと手を挙げた。
プリニアン
「はぁい! キャサリンちゃんどうぞぉ」
キャサリン
「はい! マナは全ての生物の意思に宿る【時の概念が凝縮された液体です】」
プリニアン
「きゃ! 正解よぉ〜。花丸ねぇ♪」
エルロック
「…時の概念?」
プリニアン
「そう、時の概念が凝縮された液体物質よぉ。難しい言葉が続くと思うけど我慢して聞いてねぇ? 例えば火をつける時、摩擦で頑張って熱をあげるじゃなぁい? でもマナを用いることでその工程を省いているのよぉ。すごいでしょ?」
プリニアンは黒板に文字を書いていく。
プリニアン
「魔法には6つ属性がありまぁす。光、水、風。そして闇、火、地。上3つと下3つの違いが分かる人ぉ〜」
誰かが手を挙げる。
プリニアン
「はぁい! アリスちゃんどうぞぉ」
アリス
「はい。光と水と風はマナを、闇と火と地はマジックを消費します」
プリニアン
「すごぉい! 予習バッチリねぇ。そうよぉ。光、水、風はマナを、闇、火、地はマジックを消費するのぉ。マナは意思に宿る時の概念が凝縮された液体物質、マジックは人の意思により変形させられた呪の概念が凝縮された液体物質よぉ」
なんとマジックは呪と来た。ノートに書き込みたかったが今すぐ出すことは出来ない。
プリニアン
「マナは混じりっけなしで魔法を放てるから勢いと力強さがあるわよぉ。マジックに変換する必要が無いから、夜真っ暗でも昼間みたいに明るくできたり、水を大量に動かせたり強い風を巻き起こす事が出来るのぉ。マジックは固まりやすく燃えやすいのぉ。闇属性は人の意思に干渉する技が多いわねぇ。火属性はシンプルで強力、そして便利ねぇ。地属性は使いこなせばとても役に立つわよぉ」
エルロック
「なるほど…。マナは自然の物質をそのまま動かしているからパワーがあり、マジックは人の意思を介入して打ち出す必要があるから威力は劣ると…」
プリニアン
「そそ! エルロックくんすごいわぁ。普段自然にあるものと無いもの。その着眼点は素晴らしいわねぇ♪」
この先生、何やらやたら褒めてくれる。エルロックは小気味良さそうにする。
プリニアン
「それじゃあそれぞれの属性の性質を書いていくわねぇ」
プリニアンが黒板に属性の特徴を書いていく。
魔法の基本属性は6つ。マナの光、水、風。マジックの闇、火、地。
マナとマジックの違い。
マナは取り込んだマナをそのまま使用する。自然由来の魔力パワー。故に質量が大きいものをそのまま相手にぶつけることが出来る。
マジックは取り込んだマナをその形になるよう呪いをかけている。闇と火に関しては直接相手に干渉する魔法が充実している。
光属性
主に活力を与えバフをかける。闇属性の魔法や呪術を退けるバリアを張ったり傷を治したり出来る。
初級魔術
・光を放つ。明るく照らす。
・身体能力をあげる。
水属性
液体の流れを変えたり空気中の水分をかき集めて水まで落とし込んだりする。逆に液体から気体に変えることは出来ない。水の流れを強力に回してバリアのように弾くことが可能。水属性自体が質量が多いため単純に強力である。
初級魔術
・空気中の水分をかき集めて水に変える。
・水を操り形を変えたりする。
風属性
空気を操り温度を奪ったりする。火属性と逆の性質。空気の流れを変えたり、酸素濃度を上げたり下げたりも出来る。
初級魔術
・つむじ風を起こす。
・水を気化させる。つまり蒸発させる。
闇属性
精神に介入したり操ったりする。その場合直接相手に触れないといけない。強力な為、跳ね返す技も多い。
初級魔術
・光を吸い取る。熱を吸い取る。手の周りを暗闇にする。
・気絶させることが可能。
火属性
単純に温度を増加させている。熱を上げて着火させたり熱を操る。
初級魔術
・点の温度を上昇させ着火させる。
・手の上の空気を火種にして火球を作り投げる。
地属性
無機物の粒度を変えている。砂のように細かくしたり石のように固めたり。細かくするレベルはその人の練度による。土埃レベルまで細かくした例もある。地属性を扱うものはゴーレムとカッティング魔法を懸命に練り上げればかなり重宝される。
初級魔術
・土の性質を変化させる。例:石を砂に。砂を石に。主に粒度や固形を繋げている。
・土の形状を変えて槍のように突き出したりする。
別の属性
6つの属性を組み合わせることによって別派生の属性を発動させることが可能。一気に発動させるには詠唱が必要だったりするが練度をあげると省くことも可能。その場合は呪文の刻まれたアーティファクトが必須。
雷属性
風の魔法で作り出した静電気を大量に発生させて帯電した状態を火の魔法で放つ。
磁属性
地面に含まれる磁石を地の魔法で意識的にかき集めて雷属性で浮かせる。
樹属性
植物に光の魔法でバフをかけてエレメントを憑依させる。それによって操り攻撃を加えたりできる。
氷属性
風の魔法で水の熱を急速に奪い凍らせる。凍らせた氷を水の魔法で操り攻撃を加えたり形状を変化させたり出来る。
プリニアン
「ざっとこんなもんねぇ」
エルロック
「…ふむふむ。先生、エレメントってなんですか?」
ゴーレムとエレメントという単語が気になった。まずはエレメントから聞いてみる。
プリニアン
「エレメントちゃんはねぇ。所謂マナに宿った霊魂よぉ。エルロックくんが命令意思をエレメントに与えて魔法の属性を付与すればそのエレメントが作られるのぉ。試しにやってみるわねぇ」
プリニアンが近くに落ちていた石を杖で突く。すると砂に変わってしまった。
「おお…」
周囲から感嘆の声が聞こえる。
プリニアン
「驚くのはまだ早いわよぉ。見ててねぇ」
さらに杖で突っつくと丸い人形のような形になった。埴輪に似ている。エルロックに向かって歩いてくる。
エルロック
「…人形?」
プリニアン
「地のエレメントよぉ。可愛いでしょぉ?」
持ち上げて触ってみる。砂だ。エルロックの事をじっとみている。
エルロック
「生きてるみたいだ…」
次の瞬間サァーッと砂に変わってしまった。
プリニアン
「マナが尽きちゃったのねぇ。エレメントを使えるようになったらすごく便利だからちゃぁんと勉強するのよぉ?」
エルロック
「あの、先生。次はゴーレムについて教えて貰えますか…?」
プリニアン
「勉強熱心ねぇ。先生とても嬉しいわぁ。ゴーレムについては後で説明するわねぇ。じゃあ次は炉心魔臓器の覚醒についてよぉ。中には既に覚醒させてる子もいるわよねぇ? その子達はまだ覚醒出来ていない子達のサポートに回って貰うわねぇ」
プリニアンがなにかの道具を配っていく。手袋とゴーグルだ。
キャサリン
「あんた、炉心魔臓器は覚醒させてるの?」
エルロック
「え? してないと思うけど…」
キャサリン
「はぁ、私達バディだから、あんたにやってあげなきゃいけないのね」
エルロック
「そんなに嫌な事なのか?」
キャサリン
「疲れるのよ。さ、背を向けなさい。覚醒させるから」
エルロックは上着を捲られる。
エルロック
「…何をされるっていうんだ…?」




