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第7話 バディ

エルロック

「…ん。ここは…」


エルロックは目を覚ますと図書館に居た。


モルグリット

「おはようございます。児童学院へ入学出来たみたいですね。おめでとうございます」


エルロック

「入学早々面倒な目にあったよ。何故カモメがネズミ扱いなんだ」


モルグリット

「まずはその世界の常識と見識を身に付けることから始めた方が良さそうですね」


エルロック

「ふん。所でモルグリットさん、幾つか聞きたいことがあるんだが良いか?」


モルグリット

「聞きたいことですか? 答えられる範囲でお答えしますよ」


エルロック

「じゃあまずは因果の数が7つ必要な理由を教えて欲しい。漫画じゃあるまいし出来る限り不要な事は省きたい」


モルグリット

「7つ必要な理由ですか。琥珀さん」


エルロック

「…エルロック」


モルグリット

「はい?」


エルロック

「僕のことはエルロックと呼んでくれ。じゃないといざと言う時にポロっと琥珀の名前が出てしまう。この世界からおさらばする時、その名前をまた名乗ることにするよ」


モルグリット

「…分かりました。エルロックさん。人間は7つの要素で構成されています」


エルロック

「7つの要素?」


モルグリット

「頭、胸、お腹、右手、左手、右足、左足」


エルロック

「ふん?」


モルグリット

「そして罪の数は7つ。傲慢、暴食、嫉妬、色欲、強欲、憤怒、そして怠惰。これは人の罪にして必要不可欠な要素です。罪なくして人の生あらず」


エルロック

「罪を犯すべくして産まれてきた、そう言いたげだな」


モルグリット

「罪を犯しそれを清算する為に生きる。それが人間です。最もそれを罪と定めたのは人間なのですけどね。度を越すと他者を傷つける事に繋がるのも事実です」


エルロック

「それで? 7つの罪が因果と関係あるって事?」


モルグリット

「いいえ。【人間は7匹の生命体により構成されているからです】」


エルロック

「…え? 7匹の生命体?」


モルグリット

「ええそうです。それはこの世の真理ですので無理に理解しようとされなくても大丈夫です」


エルロック

「い、いやいや。説明してくれよ」


モルグリット

「先程述べました、頭、胸、お腹、右手、左手、右足、左足。元は独立した生物だったものが長い時間を掛けて組み合わさり、人間という生物として生成されたものなのです。それは」


エルロック

「なな、ちょっと待ってくれ…! この手と足、首からしたの胸と腹はそれぞれ別の生物だったってことか!?」


モルグリット

「ええ。恐らく誰かに言った所で誰も信用する事は無いでしょう。だから聞き流して頂いて結構です」


エルロック

「ふぅ…。別に嘘だとは思ってないが頭が付いていけてないんだよ。それで…? 7つの生物で構成されているから因果が7つ必要なのか?」


モルグリット

「そうですね。人は身体、精神、魂で構成されています。健全なる精神は健全なる身体に宿ると言うでしょう? 肉体も精神も7つの要素で構成されているのです。故に因果も7つ必要なのです。複数の因果を包括する為に現在のエルロックさんの因果が必要です。要するに現在のエルロックさんの因果は7つの要素をくっつける為の接着剤ですね」


エルロック

「7つ以下でも、7つ以上でもダメなのか…?」


モルグリット

「7つ以上集める事は出来ませんね。人間のキャパシティを越えます。正しく繋がることはありません。7つ以下ですと半端なものが出来てしまいます。お勧めしかねます」


エルロック

「…何か色々な真理が見えたような気がするぞ。とりあえず7つ、必ず必要ってことだな」


モルグリット

「ええそうです。もっと詳しく聞きたかったらまた別の機会にでも」


エルロック

「ありがとう…。じゃあ次はプリニアン・ダークエンジェルについて何か知ってるか?」


モルグリットはピクリと反応を示した。


モルグリット

「知りません」


エルロック

「ああ、そうなのか。ダークエンジェルなんて名乗ってるからつい…。あんたも天使なんだろ?」


モルグリット

「ダークエンジェルって堕天使じゃないですか? 私とは関係ありませんね」


エルロック

「はぁ。じゃあ次は…」


そこで徐々に世界が白んできた。少しずつスクリーンへ吸い込まれていく。


モルグリット

「おっと、目覚めの時の様です。1度会うとしばらく会うことが出来ませんのでご注意くださいね」


エルロック

「…ええっ!? それはなんでだー!」


どんどん図書館から引き剥がされていく。


モルグリット

「ここに来るにしても欲望が必要なのです。つまり私に会って話したいという欲望が溜まらないと来れません。次会う時まで質問を用意しててくださいねー」


エルロック

「わかったー!」


エルロックはスクリーンへ完全に吸い込まれてしまった。





エルロック

「…は!」


起き上がれば異世界のベッドの上へ戻されていた。リビングへ行けばクラヴィスが朝食を作っている。


クラヴィス

「おはようエルロック」


エルロック

「…おはよう母さん」


クラヴィス

「どう? 児童学院でやっていけそう?」


エルロック

「そうだね。まずは沢山知る必要があるみたい。昨日教室に出たカモメを摘んで外へ出したら汚い、信じられないって言われちゃった」


クラヴィス

「…あらそう、エルロックはカモメ見たこと無かったのね…」


エルロック

「そうだね。母さんが普段から綺麗に掃除してるからだね」


クラヴィスは顎を摩り考える素振りをする。


クラヴィス

「うーん、まぁそれもあるかもね」





朝ご飯を食べればお弁当を持って学校へ赴く。


プリニアン

「皆さんおはようございまぁす! じゃあ点呼を取るわぁ。お返事お願いねぇ〜」


プリニアンは点呼を取る。


プリニアン

「全員揃ってるわねぇ! 偉ぁい!パチパチパチパチ〜。それじゃあ今日はまず班を決めるわぁ〜。こちらへいらっしゃーい」


教壇の上に飴玉のようなものが入った瓶がある。結構大きくちょうどプリニアンの頭と同じくらいのサイズだ。


プリニアン

「前の人から順番に取っていくのよぉ〜。この玉ちゃんは飴ちゃんが入ってて、7つの色で班を分けるわぁ。つまり7つ班が出来るわねぇ」


42人。このクラスは42人で構成されている。7つ班を作る為に人数を分けたのだろうか。


プリニアン

「出た飴ちゃんは食べていいからねぇ〜。私からのプレゼントよぉ」


エルロックの番が来れば飴玉を取り出す。


エルロック

「赤か…」


プリニアン

「じゃあ皆さん色事に手を挙げてねぇ! 赤の人ぉ〜!」


エルロックは手を上げる。


キャサリン

「…えっ!」


エルロック

「…む」


カモメのやり取りがあったキャサリンと同じ班にされてしまった。先が思いやられそうだ。


プリニアン

「赤の飴玉ちゃんの班は、エルロックくん、キャサリンちゃん、オリヴァルくん、エーリカちゃん、アベルくん、ビスコッティちゃん、ウィルキーちゃんねぇー」


キャサリン

「はぁ、あんたと一緒だなんて…」


エルロック

「…」


溜息をつきたいのはこっちだと内心思うが口に出せば面倒になる為黙っておいた。7班全員の班分けが終了する。


プリニアン

「基本的に2人1組で授業を受けてもらうわぁ。お互いに高め合って教え合えるように頑張るのよぉ」


エルロック

「えっと、先生」


プリニアン

「はぁい? 何かしらぁ?」


エルロック

「7人ですと1人余るのでは?」


プリニアン

「2人1組でも出来ないことがある事が出てくるでしょぉ? 例えば授業の準備だとか、その日誰かが欠席したとか。そうしたら欠員の1人を奇数の人がサポートするのよぉ。7人だけどバディはローテーションするのねぇ」


エルロック

『溢れてもサポートに回るということか。先生は1人。しかし生徒同士で助け合う事になれば1人が手を抜いたりすると班の規律が乱れてしまう。助け合いお互いを伸ばし合うことで協力する事の大切さを学ぶ訳だな』


エルロック

「分かりました。ありがとうございます」


班の中で自己紹介が始まる。


キャサリン

「私はキャサリン・マルミットよ。偉い魔法使いの家の出なんだから」


キャサリンが自慢げにふんと鼻を鳴らす。おおお、と声が上がる。


エルロック

『こいつは転生者じゃないな…。子供っぽ過ぎる』


エーリカ

「私はエーリカ・アントリオン。よろしくね。得意なことはぬいぐるみを作る事だよ」


ビスコッティ

「まぁ、エーリカちゃんにまたぬいぐるみを作って貰おうかな? 私はビスコッティ・サンクラフト。よろしくね♪」


キャサリン

「さ、サンクラフト…。結構有名な所の魔法使いじゃない…」


ビスコッティ

「マルミット家もよく知ってるわ。よろしくねキャサリンちゃん」


エルロック

『相手の気を落とさぬよう慎重に言葉を選んだ、気がしたな。まだ子供なのに。家柄によるものか?』


アベル

「みんなよろしく! アベル・ヴィダアローマだ。得意なことは魚取りと虫釣りだぜ」


エルロック

「虫釣り?」


アベル

「虫、しらねぇのか? 水の中で泳いでんじゃん」


魚と立ち位置が逆になっているのか。つまり魚がそこら辺に飛び回ったりしている事になる。


ウィルキー

「…ウィルキー…・マリンバ」


ビスコッティ

「暗いね…? 体調が良くないの…?」


ウィルキー

「…こういう性格なの。夜になったら元気が出る」


一瞬吸血鬼を想起する。早合点は良くない。それにもし本当に吸血鬼で、それを今口に出したり手を出せば自分が危うい。


オリヴァル

「…」


キャサリン

「何か言いなさいよ…」


オリヴァル

「チッ。オリヴァル・バンキッシュ。昨日自己紹介はしたろ?」


キャサリン

「ウチの班に変なやつが2人も居るなんて。先が思いやられるわ」


エルロック

「おいおい、ウィルキーくんは夜型なだけだ。変人扱いはよせ」


キャサリン

「変なのはあんたの事よ、カモメ男」


カモメ男。エルロックにはいきなりあだ名がついてしまったようだ。


エルロック

「…そんな嫌味な性格じゃ誰かと仲良くなんて出来っこないぞ? それに他人の事を貶すような渾名は良くないんじゃないか?」


キャサリン

「ふん。私がどう思って、誰をどう呼ぼうと勝手じゃない。意見しないでくれる?」


アベル

「カモメ可愛いじゃねぇか。なぁエルロック?」


エルロック

「君の主観的感想は聞いてないんだが…。とにかくカモメ男はやめてくれないか。一々気に障る事を言われ続けると流石の僕も黙っちゃいないぞ」


キャサリン

「なによ? やるっての?」


見かねたプリニアンがこっちにやってきた。


プリニアン

「あらまぁ、早速喧嘩になっちゃいそうねぇ…。決めた! しばらくエルロックくんとキャサリンちゃん、ローテーションから外れて仲良しになるまでバディを組みなさぁい?」


キャサリン

「え、ええ!?」


エルロック

「な、なんだって!?」


プリニアン

「そうじゃないと2人は他のグループメンバーの足を引っ張る事になっちゃうわぁ。お互いをサポートできるようになるまで頑張ってねぇ。じゃあ次は魔法の授業だから、魔法訓練所まで移動することぉ。先生は準備してくるからみんなちゃんと来るのよぉ〜!」


キャサリン

「ちょ、ちょっと! 先生ぇ!」


キャサリンが先生を呼ぶも教室から出ていってしまった。エルロックは飴玉を口にほうばる。プリニアン・ダークエンジェル。見かけによらず意外と厳しい先生かもしれない。

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