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異世界レッドオーシャン  作者: ぐれこりん。
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第10話 血筋

エルロック

「…はっ!」


纏まりのない火球を的に向けて発射する。しかし勢いが足りないため手前で落下すれば燻り消えてしまう。


エルロック

「む…。上手くいかないもんだな」


キャサリン

「家柄によるものもあるし、もっと練習が必要よ」


エルロック

「…家柄か。その家系に脈々と受け継がれるものなんだな」


キャサリン

「そうね。血筋はとても大事よ。エルロック、あなたは見たところ…」


キャサリンが顎に手を当て考える素振りをする。


キャサリン

「そこまででもなさそうね。火の適正は恐らくDくらいだと思う」


エルロック

「見ただけでわかるのか? それと適正ってのは伸ばせるのか?」


キャサリン

「適正は基本伸ばせないと思った方がいいわ。最低がFで、FからEに伸ばそうと思ったら特殊なアーティファクトを用いるか、2年間はその魔法をみっちり使い続けるくらいの努力が必要ね」


エルロック

「へぇ…。CとかBとか、結構いい方なんだな」


キャサリン

「Cクラスは魔法を使って仕事をする人にとって最低限必要だと思ってもらったらいいと思う。Bが1つでもあれば魔道軍隊上位三隊に食い込める才能があるわ」


エルロック

「魔道軍隊なんてあるんだな…。キャサリンはそれを目指してるのか?」


キャサリン

「いいえ? 私は魔化学技術学院を目指してるわ。魔法の先生になるのが夢なの」


ウソかホントか、彼女が転生者であるならば現世へ戻る事も考えている可能性も否定できない。だが現世に愛想を尽かしてしまってこの異世界で生活を続けようと考えているなら、その言葉に偽りはないだろう。しかし…。


エルロック

「そうか。僕は兵法戦術学院を目指している。いずれ道は違えるだろうな。だけど魔法というのはとても面白くて気に入ったよ。適正を上げられるか分からないけど、何とかものにしたいと思う」


そんなことを考えても仕方の無い事だ。相手が転生者であるならば【勿論自分の標的であるのだが、】違うのであれば勝手にすれば良い。それまで上手く利用するだけだ。


プリニアン

「はぁーい! みんなもうクタクタですねぇ〜? 上手く出来ましたかぁ〜?」


火球を撃っていたクラスメイトはへとへとになって息が上がっている。


エルロック

「…ん。やっぱり疲れるんだな…。体が重い」


キャサリン

「そうよ。マナは生きる上で必要不可欠なものなの。マナになる素は食べ物にも水にも含まれている所謂火の燃料なの」


エルロック

「火の燃料…。マナは可燃性物質なのか?」


キャサリン

「どちらかと言うと…可塑性物質かしら。例えば火とか水とか、魔法エネルギーに変換したマナは基本マナには戻らないわ。炉心魔臓器の中でマナとして【鋳造】されるのよ」


なるほど。マナはかなり有用な物体のようだ。未だ可視化は出来ていないが1箇所に集めて使用出来れば大きな力になりそうだ。


エルロック

「…凄い力なんだね。どうりで専門に取り扱う分野の仕事が出来るわけだ」


キャサリン

「歴史も深いわよ。でもまだまだ発展途上の分野なの。あんたも気が向いたら魔道の道へ転向しなさい?」


プリニアン

「それじゃあみんな教室へ戻りましょ〜。 元気の出るおやつを食べるわよぉ〜。先生は職員室で次の授業の準備をしてくるわねぇ〜! それまで大人しく待ってるのよぉ〜」


はぁーい。と皆が一応に返事をすればゾロゾロと校舎へ戻っていく。


エルロック

「…これからこれが毎日あるのか」


少しふらつきながら教室へ歩を進める。


キャサリン

「魔法の授業はあるだろうけど、実践授業は毎日じゃないと思うわよ?」


教室にたどり着くと人集りが出来ている。


エルロック

「うん?」


子供の中に混ざっておやつを配っている人物を確認する。どうやら女性のようだ。


「はーい! みんなにあげるから安心してね♪」


キャサリン

「あれは何かしら」


顔に真っ白なメイクをしておりピエロ帽子を被っている。この世界にも大道芸が流通しているのだろうか。


「あまーい」


「美味しい」


先程プリニアンが言っていたおやつとはこの事だったのだろうか? 遠目でキョトンとしながらその光景を見つめる。


「ボウヤ、おやつだよ」


エルロックにペロペロキャンディを渡される。


エルロック

「ああ、ありがとうございます」


「だいたい配り終えたかなー? まだ貰ってないお友達はいる?」


手を上げるものがいればおやつを配りに行く。エルロックは直ぐには口に入れることはせずピエロをじっと見つめている。


「それじゃあみんな、【夢の国に招待してあげよっか】」


ピエロは指をパチンと弾く。


「うっ…」


「なんだか眠く…」


エルロック

「な、なんだ? みんな眠り始めたぞ…?」


キャサリン

「罠よ!」


「食べてないお友達もいるみたいだね。まぁ別にいっか。初めての魔法の授業の後だろうし? 【大した魔法も使えないガキ共ばかりだろ】」


ピエロは有刺鉄線の巻かれたバットを背中から取り出した。


「私の姿に警戒して食べなかった奴は70%の確率で【転生者】だ」


エルロック

「転生者…!?」


エルロックとキャサリンを含め6名おやつを食べなかったクラスメイトがいる。眠りに落ちずピエロを唖然としながら見つめている。


「悪いけど、この【防御力を無視してダメージを与えられるバット】でぶち殺すね。一方的だけど私に殴られる覚悟を決めて運が悪かったと諦めて?」


ピエロは真っ先にエルロックに向かってくれば大きくバットを振りかぶった。直ぐ様回避すればキャサリンがピエロに向かって火球を放つ。ボンッ! と火球を受け顔を顰めて炎を振り払えば、キャサリンの方を一瞥する。


キャサリン

「みんな逃げるわよ!」


ピエロ、こいつは【転生者】だ。突然の来訪であるが倒せば因果が1つ手に入る。ならば覚悟を決めるしかない。


エルロックの顔がひくひく、とひくつく。

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