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異世界レッドオーシャン  作者: ぐれこりん。
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第9話 炉心魔臓器

キャサリンはエルロックの背中をまじまじと見る。


エルロック

「…」


キャサリン

「…」


エルロック

「どうしたんだ?」


キャサリン

「いえ? なんでもないわ。それじゃあ行くわよ」


背中に手を触れられると徐々に熱くなっていく。その熱は心臓まで達すると炭酸水を心臓に注ぎ込まれたような感覚を覚える。内側から膨張する感覚に破裂するような痛みが伝う。


エルロック

「う、うう…。なんだこれは…!? 心臓が痛いぞ…!」


キャサリン

「今あんたの心臓に付いてる炉心魔臓器の中に直接火のマジックを注ぎ込んでるの。そうすることで内側から押し広げられてマナを溜められるようになるわ」


しかしこれはかなり痛い。今すぐ逃げ出したいくらいだ。


エルロック

「…しかしこれは」


キャサリン

「動かないで。動いたら【燃えるわよ】」


エルロック

「も、燃える…?」


「わあっ!」


ぼわっと燃える子が出始めた。直ぐに鎮火され光の魔法で治療される。


エルロック

「…えっ! 本当に燃えるだなんて…!」


キャサリン

「ああなりたくないでしょ? 大人しくしてなさい」


暫くすると全身に熱が巡っていく。


キャサリン

「エルロック、手を前に出して」


エルロックは言われるがままに手を前に突き出す。キャサリンが背中をぐっと押し込む。すると熱が手まで伝わり掌に火種が現れ、ボワンと燃え上がった。


エルロック

「これは! 火が現れた…!」


キャサリン

「基本中の基本、火の魔法よ。あんたも恙無く覚醒に至ったようね」


エルロック

「話には聞いていたが、本当に魔法が使えるなんて…」


キャサリン

「魔道は奥が深いわよ。魔法にはあらゆる可能性が秘められているんだから。ちゃんと勉強なさいよね」


エルロック

『僕のチンケなチート能力とは打って変わって魔法は強力な力になりうるな…』


今しがた放たれた手の熱を噛み締める。


エルロック

「ああ、勿論だよ。一生懸命勉強する」


キャサリン

「素直ね。好感が持てるわ」


エルロック

「しかし何故燃えてしまったんだ? 背中を触られているだけだろう?」


キャサリン

「単純よ。火の魔法を込めている最中に手の充填場所がズレたら背中に着火しちゃうのよ。炉心覚醒が出来る人は勿論水の魔法も光の魔法も使えるだろうからすぐ処置出来るでしょうけど?」


先程より何故かキャサリンの態度が柔らかくなった気がする。


エルロック

「…キャサリンは魔法が得意なのか?」


キャサリン

「ええ。魔法適正は光C、水B、風C、闇D、火B、地Cよ。有名な魔法使いの家系なだけあって中々のもんでしょ?」


エルロック

「魔法適正…。詳しく教えてくれないか」


キャサリン

「まぁ、後で先生が教えてくれるわよ。個人差があるから悪くても落ち込まないで」


いやに親切だ。先程までエルロックを邪険に扱っていた人間とは思えない。


まさか…。


プリニアン

「はぁい! 皆炉心覚醒出来たかしら〜?」


覚醒が完了したバディは手を挙げる。まだ完了していないバディの所へ行けばプリニアンが覚醒の手解きをする。程なくして全員の覚醒が完了した。


プリニアン

「それじゃあ魔法の基本である火球を打つ練習をしてもらうわよぉ。マジックを練らなくちゃいけないからその要領も掴めるように頑張ってねぇ〜」


キャサリン

「それじゃあ火球を撃つ練習をするわよ。まずは私がやるから見てて」


エルロック

「やけに親切だな。さっきの様子とは打って変わって」


少しカマかけてみる。


キャサリン

「そんなことないわよ。いつまでもギクシャクしてたら授業が進められないじゃない。私だってあんたと仲違いすることで自分の成績が下がるのは本意じゃないのよ」


エルロックは彼女が転生者であるならば、自分の背中を見てその可能性を除外したのではないかと疑いを抱いている。


エルロック

『僕がキャサリンの体を見る機会は皆無に等しい。彼女の曼荼羅が何処にあるのか存じないが、恐らくは背中にある可能性が高い。自分の曼荼羅は左手。天使とやらに説明を受けているはずだから身体のどこかに曼荼羅が出現すると知っている筈…』


生徒達は的のある場所へ移動すると持ち場につく。


キャサリン

「まずは火のマジックを練るの。やり方はシンプルよ。火をイメージして炉心に力を入れるの」


エルロック

「炉心に力を入れる…? そんなことが出来るのか?」


キャサリン

「ええ。最初は難しいと思うわ。耳を動かす感覚に似てるわね。最初は上手く力が入らないと思うけどね」


キャサリンは掌に火を出現させれば球体に変化させる。火を大きくすると目の前にかざして的に向かって発射した。ドッジボールを投げるのとは違い、不思議な力で推進力を帯びて発射されているように見える。


ボウン! 的に見事着弾する。火がつかない素材なのか直ぐに火は鎮火される。


キャサリン

「どう? 次はあんたよ」


エルロック

「…ああ。やってみるよ」


エルロックは火をイメージして心臓の辺りに力を入れるよう力んでみる。


エルロック

「…むむ、ふんぬぅ〜…!」


キャサリンは先程のメガネを付けてエルロックを見る。


キャサリン

「うーん。イマイチね。感覚によるものだから少し手を貸してあげる」


キャサリンがまた背中に手を当てる。心臓がドクリと脈打つ。


キャサリン

「マナを注いだわ。どう?」


エルロック

「…ふぅ、ううんっ!」


心臓の辺りに力を込める。ギューっと力が籠る感覚を覚える。


キャサリン

「マナが溜まっているのが分かるわね? そのまま火をイメージして」


言われるがままに火をイメージする。心臓に熱が滾る。


エルロック

「…熱くなってきた!」


キャサリン

「いいわ、今度は形状を整えるわよ。手を的に向かってかざして、【今度は吹き荒れる風をイメージするの】」


手をかざす。掌に炎が灯れば、次は学生の頃校庭で見た旋風を思う。激しい流動を心臓に感じる。


キャサリン

「うん、風のマナを感じる。炎を風で丸め込むように旋回させるのよ」


掌に風を旋回させるよう想像する。炎は球体へと形状を変える。


キャサリン

「いいわ。そしたら突風に背を押された時のように球体を的に向かって放つの」


そこまで強い風に当たった経験がない。台風の時は傘が飛ばされるような風に当たった事はあるのの、イメージと少し違うのか火球は前へ飛ばない。


エルロック

「えと、うーん…。上手く想像できないな…」


するとキャサリンがエルロックの背中に触れる。


ドンッ! 背に衝撃が走れば、衝撃が腕を伝って掌の火球は的へ向かい飛んでいく。


ボンッ! と火球は的に命中した。


キャサリン

「色々と練習が必要ね」

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