プロローグ
強烈なフラッシュが焚かれシャッターが切られる。有り得ざる展開。有り得ざる為体。これは本当に現実の出来事なのか? クラクラと目眩がすれば魂が口からポッと抜け出る様に常磐琥珀は気絶した。
琥珀
「ーーーーぁぁぁぁああああっ!」
ドンッ!
何処かに落下すれば聞こえればムクリと立ち上がる。
琥珀
「う、くっ…。ここは…?」
辺りを見渡せば無数の書物が棚に収められている。ここは大きな図書館のようだ。自分はパンツ一丁のまま異様な場所に投げ出された。
少し見渡せば誰かが事務作業をしている事に気が付く。
琥珀
「き、君。ここは何処だ…?」
「…」
応えない。琥珀は訝しい表情をしながらその人物に近づく。黒い服に白いエプロンを着た女性。細身であり金髪のショートカット。丸メガネをしており、性格のキツそうな顔である。
琥珀
「聞こえなかったのか…?おい、耳が悪いのか?」
「…聞こえてますよ。常磐琥珀さんですよね。ようこそ【世界図書館へ】」
琥珀
「…は? 世界図書館…? なんだそりゃ」
「世界図書館は世界図書館ですよ。ここに来る連中は大概現実世界で上手く行かずに記憶だけではなく魂ごとぶっ飛ばされた人ばかりです。貴方もその1人でしょう?」
琥珀
「お言葉だが貴女の言ってる事が僕には理解出来ない。魂ってなんだ? …僕は死んだってのか!?」
「多分死んでるんじゃないですか? 知りませんけど」
琥珀
「多分って…。さっきから要領を得ない事ばかり言ってるが、君はここの司書なんだろ? 僕は帰りたいんだ。何処から出たらいい?」
「降ってきた場所から帰ればいいんじゃないですか?」
女性はチラリと上を見る。
琥珀
「ハッ、君は僕に飛べってのか? なら羽でもロケットでも用意してくれないかな。どうやってあそこへ上がれっていうんだよ」
「知りません。御自身で探してみては如何ですか?」
琥珀は女性の胸倉を掴む。
琥珀
「…おい。僕は今気が立ってる。これ以上怒らせたら君を殴らない自信が無い。教えろ。どうやってここから出るんだ? どうしたら元の場所へ戻れるんだよ!!」
女性はキッと琥珀を睨む。
「離せ」
琥珀
「…なに?」
「離せっつってんだよ」
女性の体が【強烈に帯電する。】
琥珀
「…!?」
琥珀の体にポンと触れる。バリバリッ!! と体に電気が走れば吹き飛ばされる。そのまま書物の山に激突する。
琥珀
「ごはぁッ…!!」
体から煙が上がる。
琥珀
「…な、何をしたんだ!?」
「貴方が胸倉を掴むので離してもらいました。失礼な方はクソ嫌いなんです」
琥珀
「…クソ。なんだってんだ…」
「元の世界へ戻りたいんですよね?」
琥珀
「…あ、ああ。元の世界、に戻して欲しい。教えてくれ」
またあれをやられたら堪らない。おかしな事を言う女性。だが一応に相手に合わせないと話が進まない。
「ここから出て元の世界へ戻る方法。その為にはまた新たに貴方の人生の物語を再構築しないといけません」
琥珀
「人生の物語…? 再構築…?」
「そうです。ここには無数の書物が存在します。ですので書物の世界へ行き、人生の物語、【因果】の再構築が必要なのです」
琥珀
「あ〜…。何故再構築する必要がある。僕は自分の世界へ戻りたいだけなんだぞ?」
「貴方は運命の戦いで無様に負け、精神をバラバラに砕かれました。それはもう再構築不可能なレベルまで」
琥珀
「精神をバラバラに…? なら今ここで話してる僕はなんなんだ?」
「貴方は魂です。精神とは違います。肉体の行動や思考を操るのが精神です。その精神を砕かれた貴方は既に廃人同然です。同じ状態で戻ることは出来ません。【魂がそれを拒否しています】」
琥珀
「…な、何? 僕は戻りたいって思ってるんだぞ? なのに拒否ってどういう…」
「天井を見上げてください。見えますか? 【元の世界が】」
琥珀は上を見て見る。しかし真っ暗闇で何も見えない。延々と書物が収められている棚が存在する。
「見えませんよね。元の世界へ戻るのならば、登らねばなりません。そして貴方は集めなければなりません。【貴方と同じ物語達の魂を】」
琥珀
「僕と同じ、物語達の魂…を?」
七面倒臭い事になった。琥珀はそう思いつつ司書の話を聞く。これから待ち受けるであろう、更なる苦難に溢れた試練等知るよしもなく…。