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ケニー 〜自分らしくいること〜  作者: クサモチ モカ
7/15

chapter 7


「勝負するならその色ね!」

 確信を持ってエイミーがそう言い切ったので、数日前に淡いラベンダー色のプリーツワンピースを購入した。それに併せてパールやシルヴァーのアクセサリー、白いポーチ、ワンピースと同色のパンプスもコーディネートとして買った。

 普段身に付けないものばかりで戸惑いもあるが、エイミーに勧められて大人買いをしてしまった。出費はかさんだが、未来への投資だと思って金子は惜しむことなく貯金からお金を出した。

 そして今はヘイリーの自宅にてワンピースに着替えて、鏡の前に座っている。エイミーの自宅が遠いため、金子から事情を聞いたヘイリーが自ら進んでヘアメイクと化粧を手伝う事にしたのだ。


 今日がレストラン、シーズを訪れる日だ。昨日が金曜日だったが、ショーンが多忙にも関わらず14時に来店して、金子の休憩時にわざわざテーブルマナーを教えに来てくれたのだ。メッセージで「どの料理の時にどのカトラリーを使うのか分からない」と送ったら、ショーンが心配してカトラリーの実物を持ってきてレクチャーしてくれたのだ。ナプキンを膝にかける時の向き、グラスの持ち方から、物を落とした時は拾わない等等、ショーンは親切に丁寧に教えてくれた。

「料理を運んでくれる人が料理に応じてどのナイフとフォーク使うのか小声で伝えてくれるように指示しておくから、安心しておいでよ。ケーキ綺麗に食べられるんだから心配するな。」


 彼の言葉を思い出しながら、今夜の料理は何が出るんだろうと想像する。その間ヘイリーが手際よくメイクを進めていった。

「キャネコォは綺麗な顔立ちしてるから、韓国のアイドル風メイクしてみたいなぁって前から思ってたんだよね」

「え?ほ、褒めすぎじゃない?」

「ううん。ホントだよ。色白だし、目も綺麗な黒色で素敵だよ。」

「そうかなぁ…。ありがとう。」

人に外見をそうやって褒められたのは初めてだった。

自分は綺麗な顔立ちなんて言われるような容姿じゃないとずっと思ってきたし、周りにもそう見えている。そういうものだと長年思っていた。


私、ちょっとは変わったのかな?自信、少しは持っても良いのかな?


 ショーンの爽やかな笑顔が浮かんできて、膝の上の手を握る。


彼の目には、私はどのように映っているんだろう?


らしくないな、自分が異性に対してこんな風に考えてしまうなんて。それでも金子は想像するのを止められなかった。


「よし、こんな感じかな?」

ヘイリーが最後の仕上げにメイク崩れ防止ミストを軽く吹きかけてからまつ毛にマスカラを付けた。

鏡に映る自分をまじまじと見つめてしまった。

 ほんのりと頬にローズ系チークが塗られ、アイシャドウもローズ系の色で統一され、真ん中にパールパウダーが乗せられていて上品な輝きを纏っていた。リップも華やかに彩られ、まるで知らない人と対面している気分だった。髪型は後ろの低いところでまとめられているが、アイロンで髪を巻いたり、編み込みで髪にボリュームを持たせている。

「ヘイリー、これすごい。私がじゃないみたい。」

振り返ってヘイリーに言うと、彼女は嬉しそうに親指を上げた。

「メイクが趣味で良かった!思った通りに仕上がったわ。」

最後に白い花の飾りを髪に付け、一連の小粒パールネックレスを首に掛けると、今日の装いが完成した。

「キャネコォ、ホントお姫様みたいよ。憧れちゃう!」

「そう言われるの初めてなの。ありがとう。」


 白いコートを羽織り、白いポーチを携えてヘイリーの自宅を後にした。

「あのセクシーボーイ悩殺してこい!」

なんていう事までヘイリーに言われたが、悩殺ではなく食事が目的なので彼女の過激な発言を忘れることにした。

 タクシーに乗り込み、予約の時間5分前にレストランの前に到着した。店の人がこちらに気づいてドアを開けてくれると、笑顔で出迎えた。

「いらっしゃいませ。ご予約の方ですか?」

「はい、カネコ・ヤスダです。」

何かに気づいたような表情をすると、また笑顔で席へ案内された。席まで歩いている間、他の客の服装や話し方から家柄がなんとなく分かるような気がした。こんな洗練された店に来る人は、裕福で物の価値が良く分かる人が多い。金子はそう思った。

 席に着くと、早速ウェイターより飲み物の説明を受けた。

「スーシェフより、ミス・ヤスダにおすすめのワインがあると伺っておりますが、本日はそちらをお飲みになりますか?」

「はい、お任せします。」

「かしこまりました。少々お待ち下さいませ。」

優雅な足取りでウェイターが一度離れた。


 金子はワインが来るまでの間、内装に心を奪われていた。特に、天井のシャンデリアが照明の光を受けて豪華な輝きを纏っていた。

今日のコースが運ばれるのを待ち切れない思いで、花の形にまとまったナプキンを解いて膝に掛けた。



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