おい
P.S.だ。
文頭から書くものではないのはわかっているが、言わせてくれ。
P.S.
皆口唯は下校時にもウチに寄る。
ということで、本日二度目のたこやきタイムを彼女は堪能している。
朝にも言ったことだが「飽きないのか」と思いつつも、唯の食べっぷりを見飽きない自分もいた。
「毎日そない食べて太らへんの?」
ばあさんが茶化すように言う。
「それがなあ、全然大丈夫なんよ。ここのたこやきには魔法でも込められてるんかな、ってくらい大丈夫。」
片手を頬に当て、片手で腹をぽんぽんとやりながら、唯は返事をする。
彼女の言う通り、唯は太っているどころかむしろ華奢なくらいで、彼女によって食べられた数々のたこやきはどこへ消えたのかと不思議に思うほどだ。
「せやけど、もし太ってもうたりしたら、彼氏に嫌われたりせんか?」
質問を続けるばあさんは、なぜか若々しく見える。こういう話題が好物だ、とでも言わんばかりだ。
あほか、ちょっとぽちゃっとしてるくらいが一番ええんやろが。と言うじいさんの言葉にはだれも耳を貸さず、唯がばあさんの問いに答える。
「あたし彼氏おらんもん。」
その場にいる全員が度肝を抜かされた。馬鹿な。俺は別に唯に好意を抱いているわけではないが、唯が男人気のありそうな女子であることはわかる。伊達に数ヶ月もこの国にいるわけではない。それくらいわかる。
じいさんとばあさんも同様に「なぜ.....」という表情を浮かべている。
しかしその理由はすぐにわかる。ある男の来訪により。
「彼氏おらんとか酷いこと言うなあ。」
オレンジがかった金髪を鶏みたいに逆立たせた男がそう言いながら、店の前に現れた。
「なんで来たん。」
唯がわかりやすく嫌そうな態度で返事をする。
「なんでって唯を迎えにきたんやん。」
ポケットに手を突っ込みながら、不機嫌そうにその男は答える。少し動くだけで装飾品がじゃらじゃら騒がしい。
なるほど。知っているぞ。こういうやつはこの国ではヤンキーと呼ぶんだったな。
それにしてもなぜこんなやつが唯を迎えにきたのだろう。
「迎えに来てなんか頼んでないし。」
唯のこの返事を聞いて、これ以上のやり取りを面倒に思ったのか、そのヤンキーはポケットから手を出し、唯の腕を掴んで言った。
「付き合ってるんやから一緒に下校するんは当然やろおおおおおおお!?」
男の突然の怒声に、さっきまで強気だった唯も思わず面食らった様子だったが、すぐに掴まれた腕を振りほどきこう言い返した。
「あんたがいつも勝手についてきてるだけやろ!付き合ってへんし!」
男はわざとらしく舌打ちをして言った。
「だいたいなんやねんここ。こんなくそしょぼい店におまえも何しにきとんねん。唯。」
その言葉とともに、男は唯の食べかけのたこやきのトレーに唾を吐き捨てた。
その瞬間、俺は口よりも先に体が動いていた。
男の胸ぐらを掴んで顔を近づけたところでようやく言葉が出る。
おいーー。