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ジジイのペース
「おおきに」
老人は快活にそう言った。
俺はその言葉の意味もわからないが、心がほっこりするような感じがした。
しばらくすると空っぽの腹が満たされたことにより、頭は冷静さを取り戻し始めた。
「たこやきを恵んでくれたことには礼を言うが、俺はあんたに返せるものが何もないんだ」
これに対して老人は言う。
「兄ちゃんの様子見たらわかる。そんなみすぼらしい格好して金なんか持ってへんやろ」
聞き捨てならんな。俺の格好がみすぼらしいだと?この戦士然とした姿が?野性味溢れる上裸に、狩りで得た毛皮のパンツを履いたこの俺をみすぼらしいというのかこのジジイは。……しかしよくよく考えてみれば、街行く人々は俺のようなワイルドな服装をしておらず、先程から向けられていた好奇な目はこの見た目のせいなのか?
そんなことを考えていると、続けて老人が言った。
「それにや、なにもタダ飯食わせた覚えはないんやで」
数十分後ーー。
その老人のたこやき屋の前で、往来を行く人々に大声を張り上げる俺の姿があった。
「いらっしゃいませー!!たこやき美味いよー!!寄ってってやー!!」